第二十三話 鬼神計画、始動
もう何度目になるかは覚えてはいないが、身体が普通の肉体ではないと訴えていることに、レイジはまた敗れたのかと思いながら、周囲に視線を送る。
すると、
「グルッ」
何故か室内に縮こまる様にしている銀狼がいた。
「何してんですか、フェンリルさん」
何でここにいるのかという意味を含めて訊いたつもりだったが、
銀狼はあっちを見ろとばかりに首を振る。
なので、そちらを見ると、
「師匠……。何してんすか……」
何故か、現実の方ではいないはずの、テュールが床の上に、横になっていた。
と声をかけると、彼女は横になりながら、
こちらを向く。
「おぅ、レイジか。久しぃの」
「いや、そりゃ最近顔合わせとかしてませんから」
「あぁ、言われてみればそうかの」
まぁ、なんじゃ、
「おまん、今、困っとるじゃろ?」
「困ってると言うか……。多分倒されて気を失ってるとこだと思います」
顔はそこまで合わせていないし、
現実でも彼女の顔を見た記憶はない。
だが、そこまですぐに当てられるとは、
レイジには予想できなかった。
そんなことを考えているレイジを他所に、
彼女は、
ふむ、と考えるそぶりを見せる。
「フェンリルから……、」
あぁ、
「こやつから聞いたところじゃ。そう構えるな、安心せい」
「いや、そんな身を構えているつもりはないんですけど……」
「そう言うとる時点で構えておる」
なに、
「何事も気楽に取り組めば問題あるまいよ」
そう彼女は口にする。
確かに、起き上がっていたら本当にそうか怪しい所だが、
彼女はずっと横になったままで、こちらに話しかけている。
その態度を見ていると、気楽……、と気楽とはなんなのだろうか、と考えてしまうところだろうが、
こういう感じなのかと、レイジは思うことにした。
しかし、
「そう言えば、師匠」
「おっ? なんじゃ?」
「そう言えば、聞いてなかったと思うんですが……。自分よりもデカい相手を対処する時って、どうするんですか?」
打開策がなければ、気楽にもなれない。
そう思い訊いてみたのだが……、
「そんなもん簡単じゃろうが。
……相手の懐に入って、ぶん殴ればいだけじゃ」
「ぶん殴るって……。そのぶん殴りが出来ないんですよ……」
「じゃったら、何か殴り飛ばせるものか、何か飛ばせるものをじゃな……」
あぁ、
「因みに、ワシはおまんも見とったろうが基本的に、拳に魔力……、じゃったか、それを纏わせて殴っとる。そうせんと上手いこといかんからの」
「殴り飛ばすってそうやってですか……」
あまり参考にはなりそうになかった。
いや、
……殴り飛ばす……、殴り飛ばす……?
最近、誰かと何かを話したような気がする。
話すとしたら、ミハエルだろうか……。
それとも、ティアナか。
あるいは、ゼクスという線も……。
と思ったが、そう言えば、他の誰かと話した気がする。
ミハエルやティアナ、ゼクスとは違う、
それでいて、前からやり取りをして仲良くなった、
いるといないとでは安心感が違うという存在……。
そんな存在だったはずだ。
だったら、『ダガー付き』かと思ったが、
彼女にはまだ会っていない。
いや、
そもそも彼女はいない。
であれば、既にいることが分かっていて、
やり取りをして、
いることが分かった人物……。
エ……。
「エルト……?」
違う、そうではない。
というより、エルトはあちら側の人間で、
こちら側の人間ではない。
いや、あちらもこちらもないのだが……。
だが、惜しい気がする……。
では、誰か、と考えようとしたところで、
ふと、脳裏に音楽が過ぎる。
鼻歌ということで出力する。
「……、……、……」
ここでは切れない。
ここでは確か、
「……、……、……、……、……」
確かこうだ。
これをもう一度出力して、
出す言葉は、
「神か、悪魔か、鋼鉄のカイザー」
続く音は、
「ズババン、ズババン、稲妻で敵を討て」
更に続くは、
「胸の、ゼットは、俺たちの約束」
終わる音として、
「ズババン、ズババン、立ち上がれ友のため」
そうして、思い出されるはとある男とのやり取りだ。
それは、
「……『ミラー』か……」
『ミラー』とレイジは互いを互いで確認するために、早くに暗号を決めていた。
それが、ロボットアニメを代表する一つなのはどうなのだろうかと思ってしまうが、
レイジはレイジで、その歌に出会ったのは高校時代の今は懐かしき分厚いCDディスクのゲームで、
『ミラー』は『ミラー』で、ロボットアニメを収録したCDアルバムを借りて聴いたという、
そういった接点があったのもあったのかもしれない。
その歌から、思い出されるのは、一体のロボットだ。
確かに、あのロボットは拳を撃ち飛ばしたり、高火力のビーム……、
いや、ビームではないのだが、説明するには行と文字が足りないので、
ビームと書かせていただく、
高火力のビームを使っていた。
「……なにか思い付いたようじゃな」
「まぁ、なんとなく……、ですけど」
「ならば、重畳、重畳。ワシの出る幕はほとんどのぅないわけじゃな」
「いや、そう言うわけじゃないです、師匠」
むしろ、
「師匠がいてくれたからこそ、辿り着けたと言いますか……」
えぇ、
「だからこそ、感謝を。ありがとうございます」
「……」
レイジの反応にテュールはしばし呆然とした様子を見せるが、
我に返ると鼻に手を当て、弾く。
そして、立ち上がり、
「まぁ、おまんが腑抜けとるとフェンリルのヤツに言われ来てみたわけじゃが、
上手くやれるようじゃの」
おぅ、
「気張れよ、レイジ」
と言いながら、レイジの胸にポンと拳を当てる。
それにレイジが返事をするよりも前に、
世界が暗転した。
巨龍が去ってからレイジの身体を回収した『ミラー』とそれに合流したティアナたちであったが、とりあえずということで回収したのはいいもののボロボロの状態でどうするのかが全く分からない以上ミハエルに頼むしかなく、『ミラー』達は、呆然と見ていたのだった。
ミハエル曰くは、
「大丈夫、大丈夫、慣れてるからって言われてもな……」
「大将の場合は、もう何度目かってとこだからな……」
それよりも、
「おい、てめぇ。オレらに下がれって言っておいて、このざまたぁ、舐めてんのか、おい」
ゼクスとか言われていたか、全く覚えていないが、やけに喧嘩口調で突っ掛けてくることにどうしたものかと思いながらも、
「あの時は、お前らがいてもただの邪魔だ。それだったら、いない方がマシってもんだろう?」
「邪魔って……、てめぇ、舐めてんのか!」
舐めちゃいねぇよ、と『ミラー』は言外で応える。
『ダメだよ、君。そんな対応で当たったら、文句言われるのは当然なんだからさ』
『ミラー』の対応にエルトが反応してくる。
その反応に、ため息を吐いてから、
「あのな、エルトちゃん。いくらそうでも邪魔なモノは邪魔なのよ。掩護するのも二人より一人の方がやり易いんだから」
「……てめぇ」
「ゼ、ゼクスさん、落ち着いてっ。義兄さんも今はまだ動けないんだし……」
「お嬢まで……。ハッ、気に食わねぇな!」
だが、
「いつも一人で無茶してる大将が、オレらにさせねぇ援護をてめぇにさせたんだ。大将と長くいるオレらでさえ援護させねぇのに、だ」
分かるか?
「何故かは知らねぇけど、それだけてめぇを信頼してるんだよ、大将は! ……ハッ、気に入らねぇ!」
あぁ、
「気に入らねぇが、今は大将に免じて許してやる! ……てめぇがヘマしてやられたわけじゃねぇ。あのでか物が強かっただけだ……」
何故か納得した様子のゼクスに、
『ミラー』は何も言うことができなかった。
だが、
……こういう時、アイツだったら、なんて言うかねぇ……。
考える。
こういった場合、『ヌル』だったら、
『ありがとう』とか、
『すまない』とか、
『恩に着る』とか、
そういうことを良く言ってくれた気がするが、
……たまに、面倒なのか、『すまない、恩に着る、ありがとう』って纏めるんだよな、『ヌル』ちゃん。
そこがアイツのいい所と言うか、何と言うか。
であれば、
今は、
「すまねぇ……」
と言っておいた方がベストだろう。
『いや、ベストとか、そういうのはどうでもいい気がするけどさ……』
『ミラー』が思ったことにエルトが反応してくる。
が、ここは反応せずに、流しておく。
すると、
「気にすんな。相手が大将より強かっただけだ」
それにな、
「大将だって、言うはずだぜ?」
あぁ、
「……気にするな、ってな!」
「義兄さん、すぐいうよね、気にするなって」
「こっちが気に病んでるとか思ってんのかもしれねぇな」
「おかげさまであんまり重く思わなくなったけどね」
「ちげぇねぇや!」
ハッハッハッ、と笑う二人の言葉に、
『ミラー』は成る程、と思ってしまう。
しかし、それよりも、
……『戦場』語で会話してぇんじゃねぇよ、『ヌル』ちゃん!!!
日常的に使っていたという事実に、『ミラー』は戦慄した。
いや、確かに、『すまない』と『気にするな』、『恩に着る』の三つは、日常でもまぁ使えなくはない言葉でもあるが……、だとしても、
……日常的に使うなんざ、羨ましすぎておいちゃんもやりたくなっちまうじゃねぇか!!
それを日常的に使うというのは、羨ましい。
『戦場』でしか使えない言葉での会話なんというのは、
非常にやりにくいと考えてしまうが、
それでもやろうと思うのは、少しロマンを感じてしまう。
……そこも『ヌル』ちゃんにおいちゃんが惚れたところなんだろうな。
『そうなの、君?』
……おいおい、エルトちゃん。『ヌル』ちゃんは基本的には突っ込んでかく乱するプロだけどな、それでも、アイツだって元は人間だぜ?
その人間が、
……自分が使い込んでた『撃雷』になるとかもうこれはロマンしかねぇだろうさ。
出来れば、自分もそうなりたい。
『撃影』ならば、基本的は射撃戦も出来なくはないが、
基本は狙撃戦だ。
後ろでの陣地戦を戦うのが、『撃影』ではあるが、
しかし、
……まぁ、出来ねぇことには文句はいえねぇわな。
それが出来ない以上は何も言うことはないだろう。
今は、大破した『撃雷』に似た身体ではなく、
『疾風』に似た身体にコアを入れて、レイジを起こす作業を進めている様子だった。
……『撃雷』だけじゃなくて、『疾風』もあるたぁ……。『ヌル』ちゃん、大喜びだろうな……。
『疾風』と言えば、レイジと『ミラー』の二人の使い方が違うことで一度揉めたことがあった。
たしか、あれは……、
……タックルが飛び蹴りなんだよな……。
タックルの動作が今までの機体と違うということで、レイジは基本射撃武器を使いつつ、相手に接近し、近距離戦が可能の距離になったら、近接武器を使わずに蹴り飛ばすという戦い方をしていた。
それに対し、『ミラー』は射撃武器で牽制しながら距離を開け、距離を保ちながらブーストで加速という、距離を開けながら戦うという全く違う戦い方だったのだ。
アレは、どちらが先に言ったのであったか……。
ほとんど覚えてはいないが、レイジの言い分としては、
「はぁ!? おい、「ミラー」、てめぇ、蹴り飛ばせるのに一々距離取ってたら「疾風」の強みがなくなっちまうだろうが!!!! 何で蹴り飛ばさねぇんだよ!!!! ……あっ? せっかく長くブースター吹かせるんなら、距離開けた方がよくね? ってか、いちいち近付く「ヌル」ちゃん、その使い方って間違ってね? あぁ!? サブマシンガンでどうやって牽制すんだよ!!!! それだったら、近付いて蹴り飛ばした方がいいだろうが!!!! お前、馬鹿か!!!!」
というモノだった。
しかし、『ミラー』自身としては、
……距離開けて牽制できるんなら、牽制しながら、距離開けた方がいいに決まってるよなぁ……。その方がおいちゃん、安心できるわけだし……。
というモノだった。
それをお互い認めずに口喧嘩になるわけだから、周りとしてはかなりの迷惑だったはずだ。
そんな様子を見ていた、たまたま近くに寄ったからという理由で一緒にプレイしていた『ダガー付き』が言ったのだ。
『でも、色々な使い方があるんだから、それもありか……、って思えばよくない?』
……そりゃな、エルトちゃん。あん時はそれでもいいかってことで終わったのよ。
『なんで、二人もいたのにその発想はなかったの?』
……男が二人とは言ってもな、互いに互いの言い分を曲げねぇもんだから長く続いちまったのよ……。
『……でも、君。お兄さんとは仲が良かったんだよね?』
……仲が良い分、喧嘩もしやすい……って言ってな……。
『ミラー』の言い分に疑問したのか、それまで話しかけていたエルトが黙る。
確かに、色々な戦い方があるわけだから、それも一つの戦法か……、と考えてしまえば、それで事足りるわけだが。
あの時は、お互いにお互いの考えを否定されたもんだと何故か思っていた……部分が強い。
なので、『ダガー付き』の言ったことは二人にとって、斬新だった。
三人寄れば文殊の知恵とはよく言ったモノだと、
あの時はしみじみ感じた物だった……。
そんなことを思っている一方で、
「よしっ……!!! よし……っ!!! 起きろ……っ!!! 起きてくれ、レイジ……っ!!!」
何やら動きがあったようで、そんな声が聞こえ始める。
刹那、
一回、稲光が走ったか、と思った数瞬後、
『……あぁ。……助かったぜ』
「おかえり。おかえり、レイジ……。君はいつも無茶するから、もうダメかと……」
『ハハハハ……。そんな簡単にはくたばらねぇよ……』
ま、
『くたばりもしないがな……』
そんな会話が聞こえ始めたのが耳に届いたのだろう、
ティアナたちがレイジの方に近寄っていく。
彼女たち二人に引かれる様に、『ミラー』も寄って行った。
今回も無事に帰って来れたかと思いながら、ティアナやゼクスの二人が寄ってくるのを確認しながら、レイジは、遠くで見る様にしている『ミラー』に気が付いた。
……『ミラー』か……。
そんなことを軽く思うが、
先程、テュールとした会話を思い出す。
まず先に、ミハエルに言っておいた方がいいだろう。
『親父殿。ちと頼みごとがある』
「頼み事?」
ハハハ、
「君の頼み事なら、いつものことじゃないか、レイジ」
『いや……』
今回のは、
『結構面倒なもんだ……』
「えっ? そうなの?」
レイジの言葉に疑問符を浮かべるミハエルを他所に、
遠くに見える『ミラー』に声をかける。
『おい、「ミラー」』
「あ? どうしたよ、『ヌル』ちゃん」
『お前にも頼みごとがある』
「おいちゃんに、か? ……へへへ、おいちゃんも嬉しいことだ。いつでもどこでも大活躍ってな」
……で?
「……おいちゃんに何を頼みたいって?」
『……「撃雷」を「鬼神」にしたい。手伝ってくれ』
レイジの言ったことが、一瞬理解できなかった『ミラー』は目を数回瞬かせると、
片耳に手を当ててから、こう言った。
「……パードゥン、ミィ?」
もう一回言えという意味か、すぐに理解したレイジは、
すぐさま言った。
『「撃雷」を「鬼神」にしたい。ってか、すぐ思い付いて出来る形が「鬼神」しかねぇ。手伝ってくれねぇか』
「……おいおい、『ヌル』ちゃん。お前、アレか? 『鬼神』ってのは、もしかしなくても……」
冗談だろ、と思ったのだろう、半笑いで応える『ミラー』に対し、レイジは、
『「キジンガーV」』
即答する。
「……お前、馬鹿か! おまん、それ言ったら、大きさも何もかも足らんやないか! あかん! そんなんでやるっちゅーたら、時間も何も足らんわ! バカか!!」
『だから言ってるだろ? あの龍に勝つためには、「撃雷」の身体を「鬼神」にした方が手っ取り早いんだ。そのための調整を手伝ってくれって言ってんだよ』
「……、……大きくしねぇの?」
『「撃雷」……』
いや、
『「シュバルツ・アイゼン」にゃ、TBSとサブマシンガンくらいで火力って火力が不足してる。その火力を補充するために、大きさはそのままで武装を「キジンガーV」にして、ぶっ倒す。その方が手っ取り早い』
「火力が足りねぇってのは、おいちゃんも納得だが、なんで『鬼神』になるのか。……それが理解できねぇな」
『デカいやつを倒すためには、思い切りぶっ飛ばせるものが必要で、高火力のもんがいる。それに……気付かされてな……』
……まぁ、気付かせてくれたのはお前だがな、『ミラー』。
ほんとは師匠が教えてくれたんだけど、先に教えてくれたのはお前だから、あながち間違ってないよな、とレイジは言外で呟く。
そう言ったレイジの言葉に、一度、『ミラー』は頷いて、
「ぶっ飛ばせるうえに、高火力の武器……って言ったら、確かに『鬼神』か……。『ゲイザー』は三機いるし……。」
あっ、
「電力の外部チャージだったら、……『エルドラン』かっ!!!」
『「エルドランV」はVで、問題ありまくりだし、もともと五体で「ゲイザーロボ」みたいに切り替えてがったなんてのは出来ないからな……。』
でも、
『思いっきりぶっ飛ばせて、高火力……となれば、やっぱり「鬼神」だろ?』
「だけどよ、『ヌル』ちゃん。『撃雷』を『鬼神』にするってのは、一筋縄じゃ……、」
えっ?
「何よ、エルトちゃん? えっ? 一筋縄って何? あぁ~、アレだ、アレ。簡単にゃいかないってことだ、確か。」
まぁ、
「改良するにしても、一筋縄じゃいかんもんを改良するってのはきつくないかい?」
『と言っても、それに近いもん……、』
あぁ、
『それ、じゃなくて、それっぽい近いもんがあれば、ある程度は打算が付くってもんだろ?』
「成る程ねぇ~……。だから、おいちゃんに声をかけるってわけかい」
『そういう事だ。親父殿一人だと苦労を掛けるからな。……出来れば、手伝ってもらえるとありがたい』
「いや、『ヌル』ちゃんの頼みとあっちゃ、おいちゃんとしては断れねぇんだが……、」
何分、
「おいちゃん、一人の身体じゃねぇからな……。」
そこんとこ、
「どうなのよ、エルトちゃん?」
ふむふむ、
「えっ? 確かに、新しい武器が手に入った恩もあるし、君の知り合いが頑張ろうとしてるなら、手伝ってあげてもいいんじゃない? あと行くとしても、帝国くらいだし、あそこはあんま行く気がしないから? 」
へっへっへっ、
「ありがとうな、エルトちゃん」
ま、
「そういうわけで、暫く手伝わせてもらうぜ、『ヌル』ちゃんよ。おいちゃんもあの龍の野郎には一泡吹かせてぇと思ってたとこなんだ」
『よし来た。お前が来るとなれば、千人力だな!』
「やめろい、『ヌル』ちゃんや。……惚れるだろうが」
ま、
「……元から、だけどな!!」
はっはっはっ、と笑う『ミラー』を他所に話についていけなかったティアナとゼクスは、レイジの方に顔を向ける。
その事に、レイジはすぐに察すると、
『頼もしい援軍がおひとり様、加勢ってことだ。……よろしく』
と言っておく。
「義兄さんの知り合いだったら、大丈夫じゃないかな? 私は歓迎するよ?」
「ま、オレも大将の知り合いだったら、別にいいぜ?」
『すまんな』
「気にしないで、義兄さん」
「そうだぜ、大将。そういうときこそ、気にすんなってヤツだぜ!」
幸いと言うか、二人とも大して気にしないようなことを口にしていた。
が、
……まぁ、いきなり来たヤツを信用しろっていうのもどうよって話だよな……。
自分で言っていて、改めて考えるとどうなのだろうか、とレイジは思った。