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ファーストキス

「ねえ――くん」


 ふいに隣の席からかけられた夏祭にはしゃぐ子供の様にような上付いた声。

 作り笑顔とは明らかに違う花のような笑顔を受けベる彼女に言葉を返す。


 「なんですか――さん」


 「ぶぅ~さんづけなんて他人行儀すぎるぞ。私の彼氏くん」


 「すいません。癖なもんで」


 全くもうと俺の鼻先を指で軽く突く。

 彼女――さんと俺は恋人同士である。

 恋人同士なんと素晴らしい事か。

 その幸せにかまけついじっくりと彼女を見てしまう。

 サラサラの茶髪の短髪。

 スレンダーで小さい体に収まる顔は小動物の様に愛らしい。

 彼女の柔らかさうな薄い唇から漏れ出す声は、小鳥の鳴き声の様に聞き心地がいいのが俺の自慢だ。

 

 「どうしたの――くん。私の唇なんか見つめて」


 ――さんの指摘に思わず顔をそむける。

 自分の意図を感じ取られたようで、少し恥ずかしい。


 「わかった。――くん私とキスしたいんでしょ?」


 「……そういうわけじゃ」


 「――くん。嘘は駄目よ。目が分かりやすく泳いでるし」


 まじか、思わず顔に手をやり、顔に熱が集まる。


 「ふふ、――くんにだったら私のファーストキスあげてもいいわ」


 ファーストキス。

 俺が――さんと。

 心臓の鼓動が早まる。

 念願の彼女とのキス。

 トクントクンと波打ていた脈はドクンドクンと波打つつ音を変える。

 さらに顔が熱くなる。

 

 「あわてないで、私も初めてだけど。唇と唇を重ねるだけだから」


 淡々にいう――さんは目をつぶり俺を見上げる形で唇を尖らせる。

 俺はゆっくりと彼女の肩に手を置いた。

 彼女の肩は肉付きは薄いけど柔らかくて。

 甘い芳香が鼻腔をくすぐる。

 俺の選択肢は二つ。

 一つはこのまま流れに乗るか。

 二つはこの場では断るか。

 なんせお互いに初めてのキスなのだ。

 こんな流れにまかせていのだろうか。

 理想を言えば町の夜景をバックに観覧車という使い古された王道が好ましい。

 でも、彼女の柔らかそうな唇の誘惑に勝てそうにない。

 こんな柔らかそうな唇に自分の唇を重ねたらどんな気持ちのなるだろう。

 女性特有の体の柔らかさは、いつだって男を魅了する。

 それが唇となれば。

 俺は彼女の顔に自分の顔を近づける。

 俺が動きを終える前に。


 「どう不意打ちの私のファーストキスは――」


 「凄い柔らかったです」

  

 


またもやキスネタ。

やっぱり描くべき所が分かりやすいやで。


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