実験作。
「ちょっとまてよ」
俺はAの肩を掴み無理やり正面に向かい合わせ。
Aの後ろの校舎裏のコンクリートの壁に片手を手を付ける。
男としては小柄なAを見下ろす形になった俺は、壁についた腕を曲げお互いの鼻がつくぐらいの距離でAを見つめる。
身に着けた眼鏡のレンズを通してみるAの姿。
Aの茶髪の髪は細くてさらさらで近づいた事でそれがはっきりとわかる。
あいらしい童顔に収まるくっりとした黒い眼は、俺を俺だけを映し出す。
肌は高名な画家の使う純白のキャンバスのように色白できめ細かい。
その肌に包まれた、触れれば柔らかさを伝えてきそうなAの唇は、この距離でみると女性の唇様にさえ思えてくる。
Aは困惑しているのか俺をじっと見つめていた。
次に薄く唇が開いた。
俺はAを見つめ言葉を待つ。
Aはためらうかのように薄く空いた唇を一度閉じ、再び開いた。
俺は目が離せなかった。
どんな言葉が飛んでくるか不安じゃなかったわけじゃない。
俺に気がないと言われるかもしれないと不安じゃなかったわけじゃない。
ただ、近づけば近づくほどAは綺麗だった。
薄く柔らかそうな唇。
きめ細やかな肌。
手入れの行き届いたサラサラの髪。
くりっとした大きな瞳。
その全てが合わさって綺麗で、魅力的で、俺を見つめ言葉を放とうとしている。
もしAに断られても『ごめんなさい』と謝れば、嘘だとおどければ、今までの関係を続けることは――考えるのはよそう。
俺はAとの関係を進め深めると決めたのだ。
俺はAをAの事を――
慣れない事はやるのじゃないね。