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なろ抱き
なろ抱きというのを見かけたので。
「もうほっといて」
やっと縛り出した声は涙でぐじゅぐじゅで。
自分が発した物とは思えない程現実感がくなくて。
私を引き留めようとする――の腕を振り払う。
私は振られてしまった。
大好きなあの人に。
頭の中には大好きな人との思い出が浮んでは消える。
早く消えてほしい。
好きだった気持ちも。
あの優しいげな声も。
私を癒してくれた微笑みも。
記憶も全てぜんぶ全部。
「――実」
――の声がする。
うるさい。
うるさい。
うるさい。
私をこれ以上――。
ギュと首に違和感を感じた。
驚いて首を見た。
困惑して動きが止まる。
首には――の腕があって、後ろから抱きしめられて。
その腕は熱くて。
密着した体からは高鳴る鼓動が聞こえる気がして。
――は耳元で、
「俺じゃダメか?」
その言葉にさらに涙が溢れた。
嬉しくなんてないのに。
幸せな気分でもないのに。
涙はとめどなく溢れる。
私は――の腕をすがるように握り思いっきり泣いた。
いまいちいかせていない感は成長途中の証拠やで。




