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乱獲をしよう

「さあ。狩りまくるわよ」


 開幕一番虫取りアミ片手に高らかに言葉を放つ。

 服装はジャージと麦わら帽子。

 ザ虫取りってっ感じだ。

 しかし例外がある――さんだ。

 彼女だけはミニスカート可愛らしいワンピースで黒のスットキングが眩しい。

 まさに眼福ってやつだ。

 俺たちはみんなジャージだからより一層彼女の可愛さが際立っている。

 しかし、両腕とも素肌を晒すのはいかんだろうと。

 声を上げるが、虫よけスプレーを5本を持ってきたと自信満々にいうので、言葉を喉元で飲みこむ。

 

 「じゃーん見なさい皆、これが『昆虫フェロモンEX』よ」


 そう言ってまたあの怪しげなスプレーを得意げ見せびらかす。

 そういえばあの時聞きはぐったが、こんなもん一体どこで手に入れたんだ?


 「あのーすいません――さん。そちらのスプレーはどこで手に入れたのですか?」


 俺の疑問を代弁する言葉に。

 ナイスと視線を飛ばす。


 「これは駅前の露店で手に入れたのよ。すっごい効くんだから」


 その言葉に優男――はなるほどなるほどいうが全然なるほどじゃねーよ。

 恐ろしく怪しいじゃねーか。


 「あーあんた怪しいと思ってるわね! いいわ――ちゃん使ってみて」


 と怪訝な視線を向くる俺に踵を返し後方の――さんにその怪しいスプレーを渡す。

 戸惑う――さんに――子は我が部の象徴の初仕事と頑張んなさいと声をかける。

 初仕事が虫取りとはいかがなものかと思うが、――さんは青い顔で、


 「あのーいまさらですが、私虫苦手なんですけど」


 「大丈夫これがあればいくらでも寄ってるから、きっとはまるわよ」


 「それでも――きゃ!?」


 それは小さなセミだった。

 ちょうど――さんの近くに飛んできたようだった。

 だが、タイミングは最悪。

 虫嫌いがスプレーを手にしていれば、やることは一つ。


 「きゃー!!虫こないで!」


 「ちょ、――さんこいつはばら撒いちゃ……」


 ちょっとヤバい事になってきた。

 半狂乱の――さんはスプレーをあたりそこいらにまき散らしながら俺の方に走り出す。

 平時であればこれほどうれしい事はないが、もれなく虫が寄ってくる特典が付くと考え物だ。

 

 「私に任せて」


 短髪の――が無機質な声を出し、彼女の手にしたスプレーを蹴り上げた。

 ――さんが倒れたどうやら気を失ったようだ。

 だが、落下位置が悪い。

 優男――の足元に落ちてもろにスプレーがかかってしまった。

 しかも困った事に、蹴り上げた衝撃で噴出ボタンがいかれたのかスプレーは常時中身をばら撒く。

 するとずぐに辺り一帯から羽音が、


 「やばいぞ! 逃げるぞ皆!」


 「あの僕はどうしたら」


 能天気なのか冷静なのかわからんが、


 「お前は近くの川にでも飛び込んで、スプレーの薬液洗い流して来い」


 すでに――は複数のセミやカブトムシやらに纏わりつかれている。

 二次被害は勘弁だぞさっさと行ってこい。


 「冷たい態度ですがそれしかないようですね。では後で落ち会いましょう」

 そういうと――は駆け出すが虫たちはそれを追う。

 虫たちは黒雲のように見える程密集し凄い気持ち悪い。

 


 「こっち」


 ――が気を失った――さんをかつぎ。

 俺の袖を振っぱる。

 ついてこいというのか。

 こいつの事だから、地理は把握しているだろうが、これを放置していいのだろうか。


 「これは時間が立てば効果は終わる。場所を変えないと巻き込まれる」


 マジか。

 

 「わかった案内してくれ」


 ◇


 まったくひどい目に合った。

 これだから虫は嫌いなんだ。

 ――の膝枕で寝ている――さんも気絶しているだけで、けがはない様だ。

 俺たちがいるのは、来るときに降りたバス停。

 一日数回しかバスは止まらないため。

 人気なないため俺たち三人では寂しい光景だ

 あのスプレーをもろにかぶった――はともかく。

 ――子までがない。

 どこで何やってんだ全く。

 

 「やれやれやっと取れましたよ」


 がさがさと林をかき分け現れる――。

 その姿はびしょ濡れで服が体に張り付いている。


 「――子さんはどうしたんです?」


 俺は知らんと真実を述べる。


 「それにしても、昆虫を虜にする薬品が強奪されたとは聞いていましたが、ここまでの効果とは」


 「お前、あの怪しいスプレーの事、知っているのか?」


 「噂で少々、初めは軍事利用が検討されていたそうですが、あまりの効果に生態系を破壊する可能性があると厳重に某国で保管されていたそうですが」



 「で、盗まれたと」


 「そうなります」


 「だからってこんな使い方するか」


 「確かにそうですが犯行グループは、我々の考えの及ばない思考回路の持ち主たちですか」


 そういう物なのかと曖昧な返事を返す。

 全く意味が分からない――子にちょっかいを出す理由。

 三勢力が監視する理由。

 まだまだ分からない事だらけだが、そこまで価値が――子にあるのか。

 趣味趣向が変わっているだけで普通の女の子だろうに。

 つーかなんで俺が――子の肩を持ってんだやめやめ。


 「皆、集まってるわね。見なさい今日の成果よ!」


 いつも間にか現れた――子が大きな麻袋を差し出す。

 こいつまさかあの場に残って虫を取ってたのか。

 いやまさかな。


 「いやーいい働きよ。――ちゃんが一か所に集めてくれたから根こそぎよ」


 まさかの前者だった。


 「これでカブトムシとクワガタ合わせて107匹! ノルマ達成よ! アンタらはいくつ取ったの?」


 「おーさずがです。――子さん。僕は溺死したタマムシ5匹です。標本にしよかと思いまして」


 やるじゃないという――子。

 いつの間に気づかなかったが虫籠に緑に光る姿が見える。

 当然俺たちは、


 「なにやってんのよあんたら三人そろってゼロ匹なんて」


 「まぁいいわこれだけいれば軍資金はばっちりでしょう」


 「でも、カブトとクワガタ以外にもこれ効くんだような。どうやってカブトとクワガタだけを取ったんだ」


 「そんなもの、ゴム手袋で解決よ。〇〇ブリの沢山いて気持ち悪かったけど慣れなれば大丈夫よ」


 見るだけならね。

 家に出たら退治するけどと――子。

 てかよく集めたもんだ。

 その胆力少し見直したぜ。


 「流石ですね――子さん。僕なんて触れなくて何度も離れるまで川に飛び込んで溺れそうになりましたよ」


 おいそれて、帰りはこいつの近くいるのはやめようと決心する俺だった。


 「こいつを売り払ったら、本命のUMA(未確認生物)の探索よ気合入れなさい」


 勘弁してくれ。

 この思いはきっと届かない。

 俺たちの苦悩はまだまだ続く。

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