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彼女と俺

揺れる観覧車のゴンドラの窓は鮮やかな光の灯った町の星を映し出し、俺はゆっくりと噛み締める様に言葉を放った。


 「……変な事いうけど……キスしていいか?」


 何を言っているんだ俺は、思わず口元に手をやろうとしたが、何故か手を動かせなかった。

 動きを止めた手は何故か力がこもり、自分の支配を拒む様に体は強張る。

 俺は困惑しつつも唯一体で自由に動かせる両目で彼女を見た。

 彼女は驚いたような表情を浮かべている。

 次に彼女の頬に薄紅がさした。

 ほんのり頬を染めた彼女は何故か魅力的で、普段のさばさば様子とは明らかに違う。

 見慣れた顔のはずなのに。

 見れた友人の姿はずなのに。

 彼女を女性とみているわけじゃないに。

 俺の困惑をよそにトクントクンと心臓は高鳴りながらリズムを刻む。

 困惑を深めながら先ほどの言葉を打ち消す言葉が出ない。

 それどころか否定の言の葉は喉にすら上がっていない。 

 俺の今の目には彼女しか映らず。

 彼女の一挙手一投足を捕えるかのようだった。

 俺のさきほどの言葉はなぜ出てきたのだろう。

 体の自由がきかないせいか頭が高速で回り出す。

 彼女は性格は男勝りでさばさばしている。

 顔は中性的で美少年にも見えなくはない。

 体は胸の主張が少なく高身長のスレンダーな体型。

 その姿から女子からそれなりの人気があるが性格が災いして男子受けはしていない。

 そんな彼女と遊園地で共に過ごしたことは何回もあるはずなのに。

 町の灯りを眺める彼女を美しく思ってしまった。

 いつもと変わらないはずなのに。

 俺の思考は高速で回りながらも一向に答えを導きだえない。

 自分が言った言葉の意味さえ。

 そんな俺に、頬を紅でそめた彼女が小さく頷いた。

 その瞬間体の拘束が解かれたように俺の体は自然と彼女に近づく。

 彼女の視線は熱波を放つように熱く吐息は甘い芳香を放っているようで。

 俺は彼女の唇にそっと自分の唇を重ねた。


 

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