壁ドンテイク2
「ようはそれだけ? どいて邪魔よ」
「待てよ」
俺は後ろの壁に片手をつき進路をふさぐ。
――は俺を睨み。
その腕に細い指先を沿わせるように掴む。
彼女の指は肉付きは薄く華奢な指の感触がした。
「何まだ、なにかよう」
不機嫌な彼女は俺を澄んだ瞳で睨みつける。
普段の清楚な印象と違い。
明らかなる怒りを感じる。
「お前状況分かってんか?」
「私の目の前にこれ見よがしに壁ドンした痛い男がいるだけね」
全くこいつは、思わずため息が零れそうになる。
彼女はやれやれと肩をすくめ。
俺の腕を無理やり取り払う。
その力は華奢な腕から想像できないほど強く。
難なく取り払われてしまった。
「いくわね。――君」
「待てよ。――」
「なによ放してよ……」
彼女を掴み見つめる。
さらさらな茶髪は昼の日差しを反射し艶やかな光沢を放ち。
釣り目がちながら整った顔は困惑で僅かに歪むが、その美しさは崩れていない。
華奢な腕は予想以上に柔らかくて、気のせいか脈が速く波打っているきがした。
次に彼女の頬に紅が灯る。
恥ずかしいのだろうか。
何故がそれが可愛らしくて。
色っぽくて。
つられて俺も頬が熱くなる。
もう片方の手は自然と彼女の下あごに動いて。
顔を強引に俺に向かい合わせる。
「俺の事嫌いか?」
そのつい出てしまった言葉に思わず顔を覆いたくなる。
限界まで近づけた彼女の甘い芳香が鼻腔をくすぐる。
ヤバイ……ドキドキしてきた。
唇と唇は少し近づけただけで触れ合ってしまう距離。
彼女は顔を崩さず、真摯な顔で俺を見つめる。
その表情からは好意も敵意も感じることができない無機質な物で。
その神秘的な表情は実に様になっていた。
そして彼女は。
「……卑怯よ。嫌いなんて言えるわけないじゃない……」
「どう感想は?」
「ちょっとドキドキした」
「続いてテイク3ね!」
「まだやるのかよ……」




