幼なじみ
「ねぇ。――私好きな人がいるの」
――の鈴虫のような涼やかな声が静寂に包まれた夜の闇のほとりに響き渡る。
季節は多くの動物が消極的になり、虫たちは命を終えて次の世代に命のバトンを果たす冬の季節。
夜の公園外灯に照られた二人の吐く息は白く。
彼女の言葉は冬の白雲に変わり天に昇る。
昇っていた言葉の端を意思の指で掴み。
噛み締める。
この日が来てしまったか。
やっぱり僕たちはただの幼なじみだったのだ。
彼女との幼なじみとして蜜月は今日で終わる。
二人で買い物に行くことも遊園地に行くこともきっともうないだろう。
その思い出は僕にもったいないほどに、幸せな時間で。
僕の胸のアルバムには沢山の思い出が詰まっている。
好きな人か――僕が好きな女の子は――だけだ。
ずっと彼女を想っていた。
初めてあったあの日から。
彼女は男女共に人気があり、僕は人づきあいが苦手。
そんな僕に手を差し伸べてくれたのは――だった。
僕の恩人であり大好きな女性。
そんな彼女が好きな人を見つけたのだ。
だったら僕は応援しなくちゃ。
その決意を口に出した。
「バカ――」
彼女が僕を抱きしめるように腕を回す。
服越しに彼女の腕は柔らかくて暖かくて。
失恋をしたばかりの身では少し心が痛い。
「ずっと一緒にいてね。私の大好きな人」
彼女が何か呟いた。
でも声は、僕の胸に埋めていたせいか聞き取れず。
思わず問い返す。
「バカ、女の子の告白を同じ相手に二回させるき」
それって。
言葉の意味が理解できず。
その言葉を反芻。
「あーすっきりした。帰りましょ。――」
言葉の理解より先に彼女は僕の服の袖を引く。
僕たちの関係はまだ終わらないようだ。
小説の向上は難しいやで。
ただ書くだけならコツを掴めば簡単だけど。
それに質を纏わせるのが・・・・・・・・・




