帝都の地下
「ここですね」
先を行くリリーが壁に手を触れると人が通れるほどの穴が開く
「仕掛けを解いたりはしないんだ」
本棚の本を押し込んだりピアノをひいたりと隠し扉らしき開け方を期待していた優希にとって、通り抜けふーぷのように壁を抜けることは若干テンションを下げることとなった
「すでに日は沈んでいるのですから、早く終わらせてしまいましょう」
「ソウデスネー」
壁の裏にある螺旋階段を下ると、薄暗くも広いスペースへとたどり着く
「ひどい臭いだね、ここ」
理由はシンプルだ。地下の部屋にはいつかどこかで見たことがあるような拷問器具を始めとするありとあらゆる道具が所々黒ずんでいる状態で所せましと置かれていたのだ
「最短でぬけるために通りましたが、さらに深い所に施設はあるようです」
「しばらく使われてなかった感じだよね?」
「おそらくは1年近くでしょう」
机の塊を指で崩しながらリリーは答える
「まぁ、今後も使われないことを願うよ」
「ここは後ほど封鎖しておきます」
「よろしく頼むよ」
「さて、この裏が通路のようですね」
リリーが立ったのは柱の前だ
「柱?」
「中は空洞なので柱としては機能してないです」
「柱のような隠し通路ですか…」
柱の中にはハシゴが取り付けられていた
「さっさと降りてしまおう」
こんな場所には長居したくないよ
「おそらく、下の方が酷いかと」
「うへぇ…覚悟しとく」
ハシゴを降りた場所にあるのは沢山の扉だ。それぞれに鉄格子がはめられている
「生きているものはいる?」
把握をしているであろうリリーに聴いてみる
「見える範囲には…」
「そう。それもそうか」
上の部屋ですら長く使われていなかったのだからその可能性はあったわけだ
「ここでは何をしてたんだろうね?」
「合成魔術の研究です」
「合成魔術?」
「ひとつ以上の物をひとつにまとめる技術です」
「例えば?」
「人と精霊、魔物と植物、そういった自然には現れない組み合わせの研究ですね。多くの魔力を必要とするために妖精を集めていたようです」
「それで…一番の原因は誰なんだ?」
いくつかの幼い者の骨を拾い上げながら優希は拳を握りしめる
「この男です」
リリーが指さす方向には肉の山がある
「誰かに…やられたのか?」
その体は引き裂かれたようにボロボロで、ねじられたようにおかしな方向を向いている
「死後あまり時間が経っていないようです」
言われて確認すると彼だった物からは血が流れていた
「えっ?」
リリーに引き寄せられた優希はバランスを崩し地面を転がると、先程優希がいた付近の壁が音を立てて崩れ落ちた
「ごぎゃぁぁぁあああ!」
それは歪な形をした、人とは呼べぬ獣であった。
「せめて、楽になりなさい」
人をやめさせられた者に立ち向かうリリーは、まるで天使のように優しさに溢れていた…きがする
構想的には3分の2を進んだあたりかと思われます。




