出発前に
「チュリン。彼らはどう見ます?」
「素質ありますです。鍛えればよくなりますです」
「では、後のことは任せます」
「かしこまりですー!」
チュリンが指を鳴らすとリルドの足元に扉が開く。なんとも間の抜けた表情はすぐに見えなくなり扉が閉まる
「もふもふ確保ー!」
緑の髪を跳ねさせながら、少女は勢い良く震える狼の背に跨ると抵抗をされるよりも早く扉の向こうに消えていった
「さ、村へ戻りましょうか」
怪我人の処置を終えた優希はぽちを頭の上に乗せながら歩き出す
「リルドは…大丈夫なん、ですよね?」
ぎこちない丁寧語になっているウェルドは混乱しながらも聞きたい事を尋ねる
「少し鍛え直すだけです。命に関わるようなことは多分…ない、かな?」
そこは言い切ってもいいんじゃないの?ウェルドさん固まってるし
「死ぬほど辛いかも知れませんが死ぬことはないですよ」
「…できれば、五体満足で帰ってきて欲しいな」
ウェルドさんの呟きはどこか祈りの様にも聞こえる
「後程皆様にも同じく指導をしますのでご安心ください」
リリーの一言は周囲で休んでいるエルフ達を不安にさせるのであった
「これと…これはどうでしょう?」
「十分です。ありがとうございます」
村に戻る頃には元の落ち着いた様子を取り戻したウェルドさんに若木を分けてもらい村へと戻ってきた
「そろそろ出発してもいい頃合かな?」
「そうですね。今出れば夕刻には帝都へ付くかと」
「道中、お気を付けて」
ウェルドさんは何をしても様になるね、ほんとに
「後のことはお任せ下さい」
突如背後に現れたチュリンにウェルドさんは驚いて片膝をつく
「驚かせてしまいましたか?」
白々しくチュリンが手を差し出すと
「本当に、君達は予想の上を超えていきますね」
手を取りながらウェルドさんが答える
「退屈しなくてよいでしょう?」
「ハハッ言えているかもしれないな」
ウェルド殿は随分といい顔をしておられますのう…
「ユーキ様」
手を引いたリリーの顔は優希が一番だと言っているようで、とても優しい笑顔だった
「そうですか…屋敷は人の手に渡っていましたか。引き続き調査を頼みますよ」
とある教会の中で1人の男が暗闇に潜むナニカに向かって話しかけている
「司祭殿」
ノックとともに扉の外より声がかけられる
「…入れ」
男は一呼吸置いてからそれに答える
「失礼します。面会を求める者が聖堂に来ております」
「面会、ですか?」
穏やかな笑顔を貼り付けた男が瞑想を辞め扉へと振り返る
「はい、質の良い服をきた執事のようでしたが、真っ赤な男が帰ってきた、と言っておりました」
「すぐに向うと伝えてください」
「はい。失礼します」
男は早足に来た道を戻っていく
「急に音沙汰がなくなったと思えば…全く、どこで何をしていたのでしょう」
その声には怒りがにじみ出ていたが、すぐに消えさり元の穏やかな雰囲気を創り出した
「まて…服装を変えたのか?何のために?強い意思を消すほどの何かを経験した?頑固であるあの男が?」
ぶつぶつと思考を漏らしながら立ち上がると扉の方へと歩き出す
「聞いてみなければわかりませんか…」
男は2度とこの部屋に戻らぬとは知らずに、普段と何ら変わらない足取りで部屋をあとにしたのであった
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