狼の来襲
『様子を見に来てみれば…貴様ら!息子達をどこへやった!』
それは脳へと直接届く声。音として伝わる呻き声に含まれた意思が受けた者に理解出来るようになる能力である
「リッツ!2手で仕掛けるぞ!」
「了解!」
漆黒を纏う隻眼の獣。その毛並みは矢を拒み、人数有利のエルフ達に接近戦を強いらせる
『雑魚どもめ!貴様らでは相手にならぬぞ!』
爪で、尻尾で、牙で、身体で。襲いかかる刃を振り払う
(ここからなら!)
リルドは背後より狼に狙いをつけて矢を射る
まさに脳天に突き刺さるかと思われた瞬間、狼の姿は蜃気楼のように消え去った
「馬鹿な!」
当たると確信していたリルドは驚きのあまり声を上げる
『貴様か?貴様が息子達を狩ったのか?』
それは背後より響いた。スンスンと臭いを嗅ぎながらである
ダークウルフが現れた時リルドもその場にいたのだから、僅かな匂いがあったとしても不思議では無い
『決して楽には殺さぬぞ!』
その爪でリルドを叩き落とした狼は凶暴性を増しながら挑むエルフ達に牙をむく
「ここにあるのが村の備蓄分です。次の収穫もありますし2割程残していただければと」
イケメンエルフ、ウェルドに連れられて訪れた小屋には土嚢五つ分の種があった
「この袋を貰っていきます。それと、若木があれば一本頂きたいのですが?」
「若木、ですか?村の裏手にいくつかありますのでご案内します」
豆をわけてもらい小屋から出ると、慌てた男がやってくる
「隊長!南に隻眼のダークウルフ出現との報告です!警備の者が対応していますが、状況は芳しくないとの事です!」
「なに?失礼、少しお待ち頂くことになりそうです」
「私達も向かいましょう。きっとすぐに解決できますから」
「客人にお手間を取らせるのは心苦しいですが…助かります」
急ぎ足で現場に向かうと現場は悲惨な状態だった
「リルド!」
今まさに噛まれんとしている男の元へウェルドは駆け寄る
「ちょっと間に合いそうに無いかな?」
駆け寄るよりも顎を閉じる方が早い。
「チュリン」
「お任せ下さいっ」
チュリン指を鳴らせばそこにぽちが現れリルドの身体を引き抜いた
『ほう?貴様らか?おん?』
がちりと顎を鳴らした隻眼の魔物はグルルと喉を鳴らす
「ぽち!頑張れ!」
優希は助けることを諦め応援に徹することにした
「みんなぁ!出番だよー!」
チュリンの声に反応して、狼の群れが現れる
『お!お前達!無事で…なぬ?そんな筈は!』
ちなみにこの時のダークウルフの声としては「親父じゃ無理だって」「時間の無駄」「勝てる姿が想像出来ないっすよ」などと説得をする感じだ
ぽちはドヤ顔に見えるがきっと気のせいだろう
『ええい、やって見なければわかるまい!』
いい所を見せようと引くに引けなくなっているようにも見える片目の狼は、ぽちへと飛びかかる
が、ぽちがひと睨みするだけでぶるぶると体を揺らし始め、尻尾を股下に収めながらじりじりと下がり始める
その様子を見た周囲からは
「兄貴スゲー!」「知ってた」「親父…相手が悪かったよ」
などと賞賛や慰めの声がかけられる
『調子に乗ってすみませんでした』
最終的には腹を見せながら謝罪をするというどうしようもない姿を晒したのであった
「さて、怪我人を手当しないとかな?」
その後何事もなかったかのように優希はのんびりとした雰囲気で、木に引っかかっている者や地に横たわる者達に魔法をかけていくのであった
誤字脱字報告は感想より




