権兵衛
ゴツンと大きな音が響く。手癖の悪い少年は保護者である刀鍛冶の男性にお叱りを受けている
「お前が心配する事じゃねえって何度も言ってるだろうが!」
「いってぇ〜!」
「痛くしてんだから当たり前だろうが!」
歳は三十半ばほど、長い髪を後ろでまとめて肩まで垂らしている醤油顔の男は、逃げられないように縛られた少年をシバキながら説教をする
「すまねぇな。わざわざこいつを届けてくれて」
「いえ、元々ここにはくる予定でしたから」
「あん?俺が何してるか知ってんのか?」
「はい。これにはお世話になってますから」
優希は懐から1本の刀を取り出して見せる
「何か、不都合でもあったか?刃こぼれか?」
「珍しい物ですが僕の故郷にも同じものがありまして。興味があったんですよ」
「ということはお前さんも日本からきた感じか?」
「関東の方に」
「そうか…俺以外にも居たのか」
「こっちへはいつごろ?」
「その前に中入んな。立ち話で済むようなもんでも無いだろ」
「ではお言葉に甘えて」
「お前はほかの奴らんとこ行っとけ。昔話なんて聞いてもつまらんだろうからな」
少年の紐を解くと奥の部屋へと歩き出す
「紅茶と緑茶、どっちがいい?」
「緑茶があるんですか?」
「おう、東の国の南西あたりでな。僅かだが作ってるとこがあんだよ」
「それはいい事を聞きました」
「シューラルの町の村長に俺の名前を出せばきっと同じものを出してくれるはずさ。あまり人気のあるもんでもないらしいからな」
「あっ僕は藤堂優希っていいます。こっちはリリー」
「えらく可愛らしい嬢ちゃんを連れてんな。もしかしてこれか?」
小指を立てながら聞いてくる
「生涯一緒だと思ってます」
「おあついねぇ…俺は倉本権兵衛ってんだ。奈良の方にいた」
「本名でしたか。なーしのごんべって聞いていたのでてっきり偽名かなにかと」
「まぁこっちに来て20年近いがもし名前が同郷の奴に伝わればと思っててな。無理だろうと諦めかけてたんだが」
「だいぶ長いんですね?」
「お前は来たばっかりか?」
「ひと月くらいですかね?」
「そうか…それで生活の基盤は出来そうなのか?」
「ええ。魔法のおかげで王都に家を持てるほどになりました」
「なに!お前さんらは魔法が使えるのか!」
飛びかかる勢いで身を乗り出してくる
「えぇ、一応…」
「ぜひ教えてくれ!鉱石を取りに行くくらいしないとこのままじゃあ店が潰れちまうんだ」
「よくお店を持つことが出来ましたね?」
「戦うのは向いてないとおもって鍛冶屋に弟子入りしたんだが先代がぽっくりいっちまってよ。未熟なままではろくなもんができなくてな?残ってた資源を切り崩しながらやってたんだがだいぶ底が見えて来ててな」
頬をかきながら恥ずかしそうに呟く
どうする?リリー。いい事してみる?
少女はニッコリと微笑みながらしっかりと頷いた




