金欠の理由
「ひぐっ…うえっ…あぅっ…ひゅっ…えぐっ…」
ふたりが追いついた時に目にしたものは、顔をベタベタにして泣きじゃくる少年と困った顔をしている変身済のポチの姿だった
「ぽち、はなしてあげて」
ぽちが元のサイズに戻って優希の頭に飛び乗ると少年は起き上がり優希へとしがみつく
「ご、ごあごっだぁ!がえずがらゆるじゅでぐだざいぃ」
いっそう強く泣き出した少年が泣き止むまで優希は服を涙と鼻水で濡らし続けた
「うぅ…ぐすっ…」
「落ち着いた?」
「はぃ。ずみませんですた」
「ところでリリー。やけに財布の中身が多かったようだけど?」
「はい、離れる前にすり替えておきました」
リリーは持っている巾着を渡すと足元に散らばるお金を拾って懐にしまい込んだ
「いつのまに…」
「事の大きさを理解させるには最善かと思いまして」
「ふむ…さてこの小さな盗人をどうしてくれようかね」
にっこりと笑ながら優希は少年を見下ろした
「目的地は同じようなので連れていきましょう」
「目的地?もしかして鍛冶屋の…?」
「孤児の世話もしているようであまり余裕がないみたいですね」
「楽をさせるためにお金が必要だったと?」
「今回は相手が悪かったとしか言えませんが、大まかには」
「そう。じゃあ早速縛り上げて…」
見ると既に少年は縛り上げられている。亀の甲羅のようにも見える独特の縛り方で
「仕事が早いのはわかるんですが、もう少しまともな縛り方は無かったんですかね?」
やり遂げた顔で額を拭う少女に目を細めて睨みをきかせる
「ちょうど練習がしたかったんです」
明るい笑顔で語るリリーにそれならばと納得
「しかけたけど!それは人前でさせるものじゃないからね!?」
「でもそういったご趣味をお持ちの方も」
「少数派だからね!?」
「こ、これ、なんだかへんな…」
「それ以上は言わなくていい!!」
もじもじと体を揺らす少年の口を優希は慌てて抑える。
「リリー。言いたいことはわかるね?」
「うまく出来たのですが…残念です」
リリーが指を鳴らすと少年を縛り付けていた縄が解け、今度は手元だけを後ろでまとめて縛り付ける
「あとは…マントも綺麗にしないとか」
パチンと指を鳴らすとマントの汚れが綺麗さっぱりなくなってしまう
「よし、それじゃあ名無しの権兵衛さんに会いに行きますか」
「案内を頼むよ?」
「ほら、きりきり歩きなさい!」
「それはちょっとやりすぎだと思うのだけど…?」
リリーの手元には鞭が握られていて時折地面をぴしりと叩き音を出している
「何事も雰囲気ではないでしょうか?」
「否定はしないけど今はそういう場面じゃないよ?!」
度重なるリリーの悪ふざけも最近は増えてきているきがしていて「なんだか可愛くてとても愛くるしい」
「人の気持ちを捏造するんじゃない」
リリーは優希のそばでふふふとわらう
気分が落ち込みそうな時、そんなリリーのおふざけでずいぶんと助けられているのは紛れもないじじつである。




