不死族の魔人1
人類の未だ到達していない果てしない荒野。人の手が届かぬそこは植物のはえない不毛の土地だ。
そんな生物が住むことを許さないような静かな場所で、1組の男女がとある男を待っていた
「強い奴ってのはお前らのことか?」
あとに現れたのは肌の黒い男
「この場にいるのは俺達だけだ」
「ならお前らなんだな!」
おもちゃを与えられた子供のように、遅れて現れた男は声を弾ませる
今にも飛びかかりそうな男に少女を下がらせた男が声をかける
「その前に場所替えだ」
少女が指を鳴らすと二人の男の足元に魔法陣が現れ光を放つ。ふたりを光が包み込み、そして弱まり消えていく。最後に残ったうら若き少女は、何をするでもなくただただ帰りを待ちわびる
翌日、光とともにあらわれたのはマントの成年。少女を抱き寄せ恋人をねぎらう
そんな甘い一時は長続きせず、突如少女が胸をおさえて蹲った
「どうした?」
男は体調を案じて抱き寄せる
「あ…だめ…ぅぁ…逃げっ…」
苦しみながらも男を突き飛ばした少女が仰け反ると、胸を突き破り拳が突き出される。
その拳には金色に輝く魔石が握られていて、次の瞬間にはその鮮やかに輝く魔石は砕け散り、色を無くしながらボロボロと落ちていく
「あぁ…あぁぁ!!」
胸から突き出された腕は二本となり少女を二つに裂きながら男が顔を出す
「お?ようやく外か?」
「おっ…お前はっ…」
力なく崩れ落ちる少女を眺めることしかできなかった男は、最愛の者を無くした喪失感に飲み込まれ力なくその場に崩れ落ちる
「お前はもっと遊べるか?」
黒い肌の無邪気な男は少女を踏み越え男に近寄る
「お前だけは、許せない」
「じゃあどうする?殺してくれるか?俺を」
ワクワクと楽しそうな気持ちを隠そうとせず、男は1歩踏み出す
「あぁ、殺してやるよ」
男の目には怒りが燃える
「そうでなければ面白くなない!」
こうして二人は殺し合いを再開したのであった
五日にも及ぶ殴り合いの末、二人の体は限界を迎えていた
「ハァ…ハァ…お前、強いなぁ!」
「ふぅ…ふぅ…そいつはどうも。そろそろ限界でな、ひとつ、かけをしないか?」
「どんなだ?」
「次の一撃に全力を込める。お前はそれを受け止める。簡単だろ?」
「その誘い、のった!」
男が全力を出した一撃は、果ての荒野に巨大な穴を作りあげた
かくして、クレーターの中央に残ったのは三つの遺体
ひとつは胸を貫かれた少女の遺体
ひとつは愛した者のために持てるすべてを吐き出した男の遺体
ひとつは…小細工なしに暴力を振るった男の遺体だ
そのうち最も損傷の大きな遺体の一つから声に近い音がこぼれる
『あーー当分動けねぇかなぁ?これは』
不死族という存在は決して死なない訳では無く、致命の一撃を与えるとその瞬間は確実に死亡する。
ではなぜ不死族と呼ばれるのかは、死してなお肉体と精神が切り離されない為である。精神体が肉体を操りアンデットとして蘇る。その後回復が進み元の肉体へと戻っていくのだ。
今回の場合は肉体が動かせるほどの原型を残していないため、動く度に崩れていってしまうほどだ
『まぁ楽しかったし、しばらくはこのままでも良いかなぁ』
男は余韻を楽しむようで、それでいてどこか寂しそうな声をしていた
次回本編戻ります




