駆け抜ける討伐
ギルドを出た優希達はそれぞれの方面へと歩き出した
「得に買うものもないし、まずは出発するのでいいのかな?」
行動の予定を立てているであろうリリーに、優希はこれからの予定を確認した
「配達物も確認できたのですぐに出れます」
まるでリリーが二人いるかのような仕事の速さだ
「それで、討伐依頼ってのは?」
「岩猿という魔物が繁殖期に入ったようでその間引きですね。10体ほど倒せば終わります」
「ぽちに乗って走り回ってダンジョンに飛ばしていくのでいいのかな?それは」
「えぇ。ですがもし打たれ強くなりたいのでしたらご協力いたしますが?」
「どうぞお気になさらずに、サクサクと進みましょう」
「体が鈍らないようにという」
「大丈夫です。おきになされなくても」
リリーの言葉を遮る様に優希はそこで話を打ち切った
詰所をぬけてからのしばらくも2人は雑談しながら進んでいたのだが、どうしても気になっていることが優希にあった
「そろそろ人もいなくなったことだし、教えてくれてもいいんじゃない?」
優希が掲げているのは(魔法で)手作りした水筒だ。中にはリリー特製の飲み物が入っている
「美味しくできたと思ってます」
「感想よりも中身のことについて教えて欲しいな」
「………知りたいんですか?」
「も、もちろんだよ?」
若干の嫌な予感を乗り越えて、優希はお腹に抱きついている少女に続きを促す
「…サクランの実を漬けて熟成させたものです」
「へえ、こんな風味にもなるんだね?」
「はい、組み合わせ次第では」
「で、何にサクランを漬けたのかな?」
リリーの体がぴくりと震える
「そ、それは…」
「言えない物なの?」
「そ、そういうわけでは」
「なら早く教えて?」
「…わかりました。後悔しないでくださいよ?」
観念したようにリリーは深呼吸を1つしてから、まるで炎を閉じ込めたような赤い色をしたさっぱりとしていて飲みやすい特製ジュースの中身を羅列し始めた
「まず、基本となっているのはマイルドボアの血です」
この時点で優希は聞かなければよかったと後悔しているが、既に手遅れだった
「そこに大黒蠍の毒袋と砂亀の涙を加えて混ぜます」
「砂亀の涙?」
「えぇ、砂亀から取れる雫には解毒作用があるんです。そこに川蛇の乾燥粉末を混ぜこみ、土コブラの痺れ毒や丘ウータンの精巣などを加えて一煮立ちさせたものを布で漉して、冷ましたものにサクランの実を入れて一週間寝かせたものがそちらです」
「…とても体に良いものとは思えないんだけど」
「味は良かったですよね?」
「飲みやすくて美味しかったけどでも…これにどんな効果があるの?」
「1週間は元気になれます」にっこりとリリーは微笑む
「冗談だよね?」
彼女はそんな冗談を言うような子ではないことは十分に知っている
「今は魔法で抑えてますが、とけた瞬間から効果がでてきますよ?」
「魔法の効果はいつまでなのかな?」
「今日の日没頃です」
「ぽち!急いで!」
じゃないと宿に入る前に大変なことになってしまうよ!
そんな優希の思いに答えるようにぽちは走る速度を上げたのだが、早く宿を決めて入るというのはリリーのお楽しみの時間を増やすだけだということを、この時の優希は気付いていなかった




