クラウスの特訓1
「今日から指南役をすることになったクラウスだ。よろしく頼む」
近衛兵の前で声を張り上げたのは、かつて最前線での戦いを経験した男だ
「とりあえずの目標はフェニールの様な者に勝つことだ。あの時は助けがあったから良かったものの、本来ならば王を打ち取られていてもおかしくなかった」
集められたのは二十人の精鋭。とはいえ組織の中での精鋭も、一人の男に容易くけちらされてしまった、いわば負け犬である
「お前らを育てる間の王の警備は、強いもの達に任せてある。今のお前らには王を守る資格がない!」
クラウスは現実を叩きつけるように言葉を重ねていく
「暴力にさらされた時、王を守ることが出来るのは強き意思と!鍛えられた肉体のみだ!」
大きく息を吸いながら、感情を込めて叫ぶように声を出す
「近衛兵に2度目は無い。1度でも超えられてしまえばその時点で負けなのだ!」
ふーっと息を吐きながら1度全体を見渡す
「敵ある限り死ぬな。人数が減るということはそれすなわち危機が大きくなるということだ!敵に情をかけるな。一瞬のためらいが命取りだと心せよ!そして常に周囲に気を配れ。お前達のなすべきことは王を守ることであり、目の前の敵を倒すことではないのだから!」
演説を終えたクラウスは1人の男を彼らに紹介した
「はじめまして、サンディと申します。以後お見知りおきを」
深いお辞儀をしたのは燕尾服を身にまとった執事だ。
「今は遠出していて居ないんだが彼の主人に場所の提供をしていただいてな。今後の訓練はそこで行おうと考えている」
「その前に、皆様の現在の状況を確認させていただこうと考えております」
「今日はひたすら組手だ」
「私は無手でお相手しますので、お好きな物をお使い下さい」
「人数はどうする?」
「そうですね」
サンディはじろりと全体を見渡す
「全員同時でも大丈夫そうですが、まずは個別にやったほうが良いでしょうね」
こうして組手とは名ばかりの公開処刑が始まったのである
「ま、こんなもんだ」
服の汚れを落とすように手を払ったサンディにクラウスが声をかけた
「これは鍛えがいがありそうですね」
サンディの周りには疲れ果てて寝転がる男達がいる。息は荒く服はぼろぼろだ
「さて、そろそろこいつらの仇討とさせてもらおうかね?成り立てとはいえ指導者だからな」
「ただやりたいだけでしょう?」
「当然さ!」
「獲物は…無い方がよさそうですね。さて皆さん、少しだけ離れて頂けますか?」
体を引きずるようにして離れていくのを確認したサンディはクラウスへと拳を突き出した
「では、よろしくお願いします」
「お手柔らかに、な!」
クラウスが拳を軽くぶつけることにより、2人の戦いの火蓋が切って落とされたのである




