お化け屋敷?
「ここです」
リリーに案内されたのは古びたお屋敷であった。
壁には蔦が這い、窓には割れが目立ちぼんやりと明るく部屋の中が光っているようで、玄関の扉の取っ手は半ば外れかけていて、幽霊がいたとしても何ら違和感が無い
「あの、リリーさん?すごーくおどろおどろしい雰囲気なんですが大丈夫なんですかね?」
震える声で尋ねるとリリーはにっこりと笑いながら
「すぐに綺麗になりますよ」
と優希に言い切った
「どうやって!?ぐっすり寝れる要素ゼロだよ?!」
「ここをダンジョンとします」
「街中ですよ?!」
「入口が一つである必要はないんですよ」
「それは裏道を作るってこと?」
「魔法で空間を繋げれば世界の裏側にだって行けます」
「理屈はわかるんだけどね?」
「まずば中に入りましょう」
押された優希がドアに手をかける瞬間、扉がゆっくりと内側へと開いた
「ひ、ひぇぇ」
逃げ出そうとする優希をリリーは力で抑える
「おかえりなさいませ旦那様方」
「まだ僕らは来たばかりで…ん?」
戸の向こうで執事の老紳士が頭を下げていたのだがその声がどこか聞き覚えのある声だと気づく
「サンディ・グローズ?」
雰囲気は変わっているが声の感じは間違いなく王城で現れたサンタ衣装の男だ
「名前を覚えて頂けるとは…至福の極みでございます」
その動作ひとつひとつが丁寧で洗練されたものだということがよくわかる。衣装が変わるだけで印象はここまで変わるものなのだろうか?
「で、首尾は?」
リリーがサンディに質問をする
「既に確認と掃除を終えております」
「それでは早速屋敷を綺麗にしましょう!」
リリーが片手を上げて指をパチンと鳴らすと玄関ホールにさげられたシャンデリアに灯りが灯る。それと同時にリリーからたくさんの魔力が溢れ出し屋敷を包み込んでいく
剥がれた壁紙は真新しいものへと生まれ変わり、抜けた床は穴が塞がりかつてのしっかりとしたものへと、まるで巻き戻しているかのような動きで綺麗になっていく。絨毯には色が戻り建物の中のあらゆるものがまるで新築のような出で立ちへと変わっていったのである
「えっ!?えっ?!」
取り残されているのは優希1人である
「さあ、どうでしょうか?これで快適なものになりましたよね?」
周囲を見渡した後に振り返ると扉にも真新しさが戻り先ほどの今にも朽ちて壊れそうだった面影は欠片もない
「ま、魔法って便利なんだね」
あまりの出来事に優希はそれだけ言うのが精一杯だった
「それではお嬢様。私は夕食の準備をさせていただきますので、お先に失礼致します」
「えぇ、よろしく」
「それでは」
深くお辞儀をして綺麗な動きで奥の部屋へとサンディが消えていく
「せ、説明が欲しいんですけど?できるだけわかりやすく!」
「屋敷をダンジョンとして組み込むことにより生まれた当初のものへと時間を巻き戻したと考えていただいて構いません」
「あの魔人は?」
「情報を引き出しながらしっかりと教育を施しました。何者かに操られぬ限り裏切られる心配はありません」
「どんな情報があったの?」
「すぐに関わるのは今回の砂亀が意図的に起こされたものだということですね。明日の派兵にてこれを制圧しダンジョン内部に取り込んでしまおうと思います」
リリーの言葉には確固たる意志が滲み出していた




