情報屋の男
「ここはデートに来るような場所じゃないんだけどねぇ」
カンテラが中央にさげられたぼんやりと暗い部屋に一人の男が腰掛けている。服は薄汚れて裾は破けているが、それを着ている男にはどことなく清潔感が漂っている
「砂亀に関わる動向と王都食べ歩きの地図をお願いします」
「大銀1枚。」
男が提示した額をリリーが投げ渡す
「確かに。今あるのは砂亀が出るにはすこし早いんじゃないかって話だね。発見報告が出る少し前に帝国と王都を行き来する人が増えたみたいだよ。ギルドでは確認をするために明日にでも派兵をしようとしてるみたいだ。地図はそこの棚の手前から4番目を見るといい。持っていくなら小銀3枚追加だ」
「ではこれで」
リリーは近くの机に銀貨を3枚置いて棚から巻いた紙を取る
「毎度〜」
男はひらひらと手を振っている
「時間は有限です。早く行きましょう!」
リリーに押されるように部屋から退室し人通りのない裏路地へと出た
「今のが普通なの?値段の割りにそこまで大きな話じゃなかったような気がするんだけど」
「順を追って説明します。まず前提としてあの場には3人いました」
「うん、それで?」特に変なことも無かったよね?
「ひとりは正面にいた男ですが後のふたりは床下です」
「3人って相手がってことなの!?」
「そうです。ひとりは正面の男に話す内容を伝えていたことから彼が本来の情報屋かと」
「正面の男が襲われても逃げられるって事か」
「仮に近付こうものなら足元に張られた紐に足を取られ、痺れ薬の塗られた針山に倒れていた事でしょう」
「足元そんな事になってたの?」
「灯台もと暗しって奴ですね!うまく隠されていていたようですが」
「へぇー全然気付かなかったよ」
「もうひとりの男は扉の開閉です」
「って事は足元にいたの?」
「やや壁よりの、ですが。ちなみに足元は落とし穴で払い渋りや持ち逃げしようものなら自由落下を体験する事になりますね」
「…知ってて黙ってたの?」
「目の前で種明かしをしろと仰るんですか?第一印象って大事なんですよ?」
「いや、そういうわけじゃぁ」
「価格の件はお金で信用を買うと考えてください。偽物を掴まされては困りますから」
「うん…これからも頼りにしてるよ、リリー」
リリーはとても優秀だからね。末永くよろしくね!
「きゅ、急にそんなに…」
俯きながらもじもじと手元の紙を弄るリリーがとても可愛いのは何故でしょうね?
薄暗い部屋に新たな来訪者が現れた
「あんたの言ったとおりだったよ」
「やはり来ましたか。では約束通りお願いしますよ?」
「全く、あんな約束するんじゃなかったぜ」
「半ば賭けでしたが。助かりましたよ」
「そういや商会長になったんだってな?」
「ずいぶんと耳が早いようで。運良く、と言ったところですが」
「どこが運よくだ。わざわざ危険な橋渡っておびき出したんだろ?」
「運、ですよ。戻ってこれるかは神のみぞ知る、って所でしたから」
「神さんに愛されてんのかね?おぉ怖い怖い」
「まぁ賭けは私の勝ちですから、しっかりとお願いしますよ?」
「わかってるよ」
そんな会話をした後の2人は、部屋を出ると別々の方向へと向かったのであった




