ほぼ空気
「さてさて。善良な民をありもしない罪で断罪したという悪しき王はこちらかな?」
兵士を貫いている剣を引き抜きながらに現れたのはフェニールである
「貴様…」クラウスさんは今にも殴りそうだけど
「クラウスさん!彼には僕らが認識できてないですからちょっと待ってください」
「あん?どういうことだ」
「彼に見えているのは絞首刑になった7人の遺体ってことですよ。声も届きませんしこちらに気付くことも無いので情報を聞き出してからでも遅くないです」
「んん?つまりどう」
聞き返すクラウスの声は近衛兵の声でかき消される
「王を守れっ!」
元からいた近衛兵達が立ちふさがるもフェニールがサクサクと切り捨てて行く
「さて、メドロムは居ないのか?それは好都合だ」
フェニールは近衛兵をすべて倒し王へと剣を向ける
「あとはあなただけですね?」
ふたりを見向きもせずフェニールは王様と向かい合う
「…だとしたらどうだというのだ」
「民衆の前で断罪する必要がありますからね。おとなしく捕まっていただきましょう」
「今回の一件、これが目的であったか」
「もう少し先にする予定でしたが都合のいい口実ができましてね。彼らには生贄となっていただきました」
ちらりと広場の絞首台を眺める。
ゼクさんらはその横で兵士と雑談してるんだけどね
「私を倒してなんとする?」
険しい顔をしてヒューリー国王がフェニールに問う。演技ってことだよね?この表情
「なに、新たな国王が生まれるだけですよ。少しだけ帝国寄りの、ね?」
「貴様連合はすべて帝国の手先か!」
「人聞きの悪い。よき友人と言ってください。まぁ、賛同されない方は今頃、違う世界に旅立ってますよ。すぐにあなたも追いつけますから御安心を」
バタバタと兵士達がテラスへ入って来ると王を取り囲むように広がる
「ではおとなしく捕まっていただきましょうか?非道の国王様?」
兵士が王様をとらえるよりも先に兵士の輪の中に一人の男が表れる。髪の一部を白く染めた若い男だ。白くてどことなくきらびやかな衣装を纏っている
「ただ今戻りました」
優希のそばにリリーが表れ腕に抱きつく
「なっ!貴様どこからあらわれた!」
突如現れた男に取り囲んでいた兵士達の警戒が強まる
「ねぇリリー。あの人ってどなたかな?」
「メドロムさんです」
「変わりすぎじゃない!?若返りってレベルじゃないよ?!」
「これはまたおかしな事になっておりますな?」
ぐるりと周囲を見渡すとメドロムさんだっらしい人が呟いた
王様も目を見開いてる。そら目の前に人が現れたら驚きますわな
「なにはともあれ、王に刃向かうということはそれなりの覚悟があるという事でよろしいな?」
取り囲む兵士へと睨みをきかせる
「ふむ、引かぬか。では仕方がない」
懐から小型の剣を取り出すとスッと水平にすべらせる
すると周囲の兵士たちが次々に膝から崩れ落ちる
「な!どうしたお前達!」フェニールが倒れた兵士に近寄る
「お前さんが首謀かの?」
「き、貴様何者だ!」
「王よ。捕らえるべきですかな?」
振り返り王様に尋ねる
「承りました。私かね?メドロム老師と呼ぶが良い」
彼が剣を縦に振り下ろすとフェニールはビクッと痙攣した後に崩れ落ちて泡を吹いた
「えっと、こんどこそ一件落着…かな?」
優希が周囲を見渡して何も無いことを確認するとそう呟いた




