疾風のジン3
「そぉらっ!」
かれこれ3時間ほど。ジンの繰り出す剣筋は等しく受け流されている
「これでっ!どうだ!!」
半ばやけくそ気味に放った一撃は戦いの終を告げる事となる
試合は終始ジンのペースであった。当初は反撃する暇がないほど受け流す事しかできないかのように見えていたのだが長く攻撃を加えているにも関わらず汗一つかかず呼吸すら乱さないのだから、実力差を嫌というほど痛感させられる。攻守が切り替わればあっさりと倒されることがわかってからも全力で攻めたものの勝てる気配がなく、諦めかけた頃の話になる。
優希の持つ刀の力に耐えきれずジンの持つ剣が半ばで折れ、宙を待ったのである
「あーもう勝てるかこんなん!やめだやめ。焼くなり煮るなり好きにしろーう!」
そう言いジンは大の字となり地面に横たわった
「ふう。僕の勝ち、だね」
優希は刀を鞘に戻しながら話す
「さて?そっちはもう終わっていたか」
「ダンナは負けちあいましたか」
スチュアートが蓋の空いた小箱を持って近付いてくる
「実感したよ。こいつは人間じゃねぇ」
上体を起こしたジンが優希を指さす
「それはひどい。半分ほどは人間だよ」
「半分辞めてんじゃねぇか!出来レースだろこんなん」
「知ってた」
「余計たちが悪ぃよ!」
「まぁ死なないだけ儲けたと思いなよ。さて?質問があれば答えるけど?」
「それなら、この腕輪は?」
スチュアートが箱から取り出して質問する
「それは…そうだな、直感の腕輪と言うことにしよう。今、僕の隣はどう見える?」
優希は左手を広げながら質問で返した
「どうって…何もありやせんぜ?」
「その腕輪をつけてみたらどうだ?」
「どうって…ん?」
腕輪をはめて見るとぼんやりと景色が歪んでいる。さらに凝視するとぼんやりと人の影が現れ、最後には可愛らしい女の子が現れた
「それがあると罠や敵の察知がしやすくなる。使い方は気になる場所を見続けるだけだ。簡単でしょ?」
腕輪を外すとまた少女のが消え何も無い空間となる
「何が見えたんだ?」
理解できていないジンはスチュアートを見る
「その…可愛らしい女の子が…隣に…」
「女の子?」
優希の隣をジンは凝視するも何も見えないままだ
「いいの?そう。じゃあこれはサービスって事で」
横を向いた後、優希は刀を差し出した
「これは?」
「お土産さ。その剣の代わりに持っていくといい」
「いいのか?」
「いいんだよ。そうだ、外で情報を集めている者に伝言を頼めるか?」
そう言って優希はにんまりと笑った
「おう、速かったな。負けちまったか?」
小部屋から出ると出待ちと言っていた男が話しかけてきた
「あぁ。あっさりとな」
「残念だったな!で、どうだった?」
「しばらくは修行だな。こいつの癖も知っておかないといけないし」
「負けたのに武器を手に入れたのか?」
男が驚いた表情をする
「伝言の駄賃だとよ」
「…伝言とは?」
「この迷宮は暇つぶし。より楽しませてくれた者にはより良いものを与える、だとさ」
「暇つぶし?もしやお前さんら、主に会ったのか?!」
「さあね、今日はもう帰るよ」
「お、おい!」
引き止める声を無視して2人は町へと戻る。
その後、ジンとスチュアートはAランク冒険者の仲間入りを果たしたという




