絡み酒
「しかし驚いたな。彼がまた街に戻って来たことには」
床に倒れて幸せそうに寝ているクラウスさんを見ながらバーテンさんが呟く
「過去になにかあったんです?」
「聞いてないのか?そうか…まあこれは独り言だと思ってくれ。昔、軍に気前の良い優しい男がいたんだ。嫁と娘がいて、幸せそうなソイツは上官の尻拭いで左遷されてな。嫁と娘に金を残して冒険者になったらしいんだが今頃どこでどうなってるかはわからなくてな。あの頃は仲間とここでよく騒いだもんだよ」
「ここって結構長く続いてるんですね」
「それなりにはな」
「あ、おかわりください」
「ハハハ。もしそのサクランが気に入ったなら南部に行くといいさ。あっちの特産だからな」
「覚えておきます」
追加の実を口に入れながらお酒を待つ
「ほれ、これ飲んだらそろそろあっちに行ってやれ」
見るとリリーは十三人抜きを達成したところだ
「それもそうですね」
ひと息にお酒を飲み干すと立ち上がりリリーの元へと向かった
「お父しゃん〜お隣空いてまふひょ〜」
家庭ができてる?!
腕を引かれて腰掛けると腕を腰に回してだきつくようにもたれ掛かってくる
「ゆーきさん。やっときてくらはいまひたね〜」
人とは構造が似ているだけで酔わないはずのリリーはかなりの酔っ払いだった
「だいたぃ〜可愛い子に手を出さないとかぁ、役立たずでふかぁ?竿たたずでふかぁ?もっと迫ってすれてもいいんれふよぉ?」
などと滑舌悪くもよく回る口で長々と、およそ3時間ほどしゃべり倒した後にすうすうと寝息を立て始めたのである
優希の身体を抱きしめたままで。
「どうしましょうね、これ」
片付けをはじめた店長さんを手伝いたいのだが思うように動けないのだ
「あまえさせてやんなよ。あっちの隅っこでさ」
みると酔いつぶれた人たちが壁際に並べられていた
「ならせめてこれくらいは」
体が動かせないとしても魔法は使えるんだよね
散らかった椅子やテーブルを並べ、壊れた物は直していく
「…お前さん一体なにもんだ?」
少し真顔の店長さんが静かな声で聞いてきた
「ただの冒険者ですよ。それも駆け出しの」
「そう、か。流石に悪い奴って訳じゃないしな」
「すこし、休ませてもらいますね」
「あぁ、おかげで片付けが早くなりそうだ。助かったよ」
「いぇいえ。出来ることをしただけですから」
そう言って優希はリリーを抱き上げて移動し、部屋の隅で丸くなったのだった




