貧しい男たち2
「ゼク!」
「あいよっ!」ゼクと呼ばれた小柄な男が壁を足場にアースボアの攻撃をかわす
彼らはアースボアの突進をかわしながら確実にダメージを与えていく。時に引きつけ、離れ、誘い込み、叩く。
そう簡単に倒せる相手でないからこそ確実に剣を当てていくのだ。
夢を追えなくなったとはいえ、彼らは町の中で出来ることをしていたのだ。走りなれた道を駆けながら、永らく使っていない頭を働かせ必死に倒し方を模索していた。
地道に攻撃を続けたとしても全力が何時間も続くわけがなく、次第にかわしきることがむつかしくなっていた。
そんな中、アースボアが一際大きな叫び声をあげた。たまったストレスを吐き出すように、力任せに地面をふみならす。
「なんだ?」
アースボアが地面をふみならす度に周囲の建物が音を立て崩れ始める。
「不味いな、こりゃぁ」
長く壁や屋根を使い立体的に戦っていたからこそ突進をかわしたりが出来ていたのに、その機動力が封じられていくのをただ見ていることしかできなかった
「チッ…ここまでかよ…」
「喋っちゃダメっす!今手当するっすから!」
アースボアの突進を受けて吹き飛ばされた男は、お腹に刺さった木を見ながら終わりを感じていた
「オメェは逃げな。アイツがゆっくりと歩くのは俺を倒したと油断してるからだ。食われる前にせめて一太刀浴びせてやるよ」
「それは…」無理だと言いかけて辞める
「早くしねぇとまた突っ込んで来るぞ。はやく行きな、ゼク」
「兄貴…いや、クラウスさん。ご武運を」
手を胸の前に掲げるとゼクと呼ばれた男は姿勢を低くしながらアースボアとは反対の方向へ走り出す
「その呼び方は辞めろって言っただろうがよ…」
既に見えなくなった男に、話しかけるように呟く
「ようやくきたか」
匂いを嗅ぎながらのしのしと歩くアースボアが見える範囲に現れる。今のクラウスに出来るのは既に力が入らなくなった腕で、なんとか剣を持ち上げることだけだ
「娘に遺言、頼みゃぁ良かったかな」
クラウスは既に遠くへ離れているであろう仲間や、王都に残してきた家族を思い出しながら、アースボアの迫る牙をこれ以上見ないようにゆっくりと目を閉じたのだった




