スライムまみれ
その後は腰にさげるポーチを買い、門を出る時に仮の入門札を返却して森へと出てきたわけだが優希は今、とても困っていた
「試し斬りとは言っていたが切ると増えるとは聞いてないぞ!!」
「それはもちろん言ってませんから当たり前じゃないですか」
離れた場所から眺めているリリーが不満そうに答える
「言えよ!!そこは!!」
「人生には遊びが必要ですよ」
「楽しくねぇー!」
優希の悲鳴はスライムの群れに飲み込まれていく
「このあたりでいいでしょう」
森の中を黙々と歩いていたリリーが足を止めた。
「このあたりにいるのか?」
見たところ周囲に何かが居そうな気配は無い
「剣の試し斬りをしている姿を見られないためにダンジョンに入ろうと思うのです」
「スライムを狩るんじゃなくて?」
「見つけ次第ダンジョンに送れば良いだけの話ですから」
素人が刀を振り回した所で大したことは無いだろうし、どれだけ出来るか確かめておいた方がいいのか
目の前では一本の木が地面に飲み込まれている
「この木位なら切れると思いますよ」
木と一緒に自分もずぶずぶと影に飲み込まれていく
「前みたいに扉って選択肢はなかったんだろうかね?」
「この方が速いですから」
なら仕方ないね
以前のように一面壁の部屋の中に入った。違うのは地面が土で足元が森の地面と同じく土や草が生えていて、中央に木が一本立っている事だろう
「刀が欠けるようなことは無いのでまずは適当に切りつけてみてください」
ペチペチと木の肌を叩いてみる。いたって普通の木だ。
「じゃぁやりますか」
鞘から刀を抜き両手で持ち、水平に振ってみた。
まるで豆腐のようにスルリと刀は通り抜け、木がゆっくりと倒れる
「えっ」
あまりの切れ味に刀を見ると相も変わらずに先ほどと同じ刀身が輝いている
リリーさんやりすぎじゃない?!
振り返るとリリーは天井から伸びるブランコに乗って高い位置からこちらを見下ろしていた
「流石ですね、御主人様!」
あ、ありがとう。でもなんでそんなに高い位置に避難しているのかな?
「マスタ〜後ろ後ろ〜!」
このパターンはロクでもない事の気がするよ?
振り返った先にあったのは倒れた木が色を緑に変えながらもぞもぞと動き出している所だった
「リリーさん、これは何でしょう?」
「休眠中のグリーンスライムが擬態していたみたいですね〜」
「知ってたろ?」
「硬さや香りまで同じなんですよ?わかるわけないじゃないですか〜」
その割にはきっちり避難してたよね?!
「速く倒さないと食べられちゃいますよ〜」
背後にはもぞもぞとにじり寄ってくる半透明のスライム
「倒し方は!?」
「丸い核を切れば倒せますよ〜」ずいぶんと楽しそうだね!
仕方ない。倒してやればいいだけの話だ
などと考えていた過去の自分を殴ってやりたい
一見柔らかそうなスライムだが硬い部分と柔らかい部分が無造作に入り組んでおり刀の軌道をずらす上に、本体の比較的ゆっくりとした動きとは裏腹に素早く核がうごきまわり上手く核に当てることが出来ないでいた。
さらにはスライムは弾力のせいか半分以上切り込むことが難しく切り分ける事ができないのだ
元の木がすべて一つのスライムだったのだが、深い傷を受けた後、自ら分裂し今では10近いスライムが優希に迫っていた
「速くしないから新しいスライム見つけちゃったじゃないですか〜」
ふとリリーの方を見ると天井からボトボトとスライムが増量されている所だった
「そう思うなら探さなければ良いだけの話だろぉ!?」
「御主人様の事は忘れません」
目を閉じて敬礼をしたリリーの横では未だスライムが増量され続けるのであった




