異世界らしさとは
まず最初に気付いたのは暗闇であるにもかかわらず壁がどこにあるかを感じ取れた事だ。
「せめてもう少し明るければなぁ」
目で見て確認出来るならばまだわかる。見えないものを見るなど普通では考えられないが現に感じ取れているのだから、身体に何らかの変化があったのだろう。
そう考えていると部屋がぼんやりと明るくなり壁を見られるほどになった
やはりここはドーム型の空洞のようだ。幅は20メートルほどだろうか?壁は岩肌のようだがヒビ等はなく壁と床の境目すらないなだらかな構造をしている
が、明るくなった理由はわからない。光源がないのにもかかわらず明るいとしか言いようがないのである
どうしたものか?
異世界に来たと思ったら石の中で死んでしまった、なんて冗談でも勘弁してほしいものだ。現にそうなりかけている時点で頭が痛い話ではあるが
ぼんやりとした記憶の最後にあの性格の悪そうな女神が何かを言ったはずだがなんと言ったか…
「説明書を求めろと言ったか?」そうだ、たしか説明書と叫べばいいと言っていたはずだ
ドサリ、と音がして振り返るとそこには広辞苑サイズの本がありその表紙には説明書と書かれていた
「まさか、これを読めと…?」
読む以外に選択肢は無いのだが、思った以上の情報量に頭が痛くなりそうだった
「これがタブレットだとどれだけ楽なことか」現代っ子には重たくて分厚い紙媒体を熟読するのはとてもつらい。
などと考えていると目の前の説明書がみるみる薄くなり某林檎のマークの会社が出しているような見慣れたタブレット端末へと変わったのである
持ち上げて確認するとやはり見たことのある形をしていた。裏面のロゴがブリュッセルやリエージュで有名な焼き菓子となっている以外はほぼ同じだと言っても過言ではないはずだ
「椅子でも欲しいところだな」先程から声に出して求めると反映されているようで、もしやと思い喋ってみれば案の定、ほどよくくつろげそうなリクライニングチェアが現れたので迷うことなく腰かける
さて、まずは電源を入れてみよう
電源をいれると画面にはいくつかのアイコンがありその中の始めにと書かれた物を選択すると今自分がどういう状況でなにができるかの説明が流れた。動画で。時折入る派手なエフェクトや小ネタが露骨にうけをねらっているようでみていて微妙な気持ちになるとともに、まわりくどい言い方も多く、何よりとばせないことが苦痛だった
とどめには最後のスタッフロールの端に小さく書かれた「分かりやすく書いたものをホームにメモとしてご用意してあります」というもので無駄な時間を使ってしまったのだとやるせない気持ちになってしまったのだった