ボア肉の希少部位
一旦部屋へと向かうとリリーに聞いてみた
「その外套って形変えたりできるの?」
室内でいつまでも着ているのはおかしいからね
「変装にはもってこいですよ」
そういうとシンプルな外套はあっという間に形を変え、メイド服のようなひらひらとしたスカートの一部に混ざってしまったのである
便利だねー
「さて、食堂へ降りて御主人と話をしましょう」
わかった、わかったから引っ張るのをやめてっ!
食堂へ降りて厨房を覗くと作業台でお肉を仕込んでいるおっさんがいた
「こんにちわー」
作業をしながらこちらを見る。たぶんこの人がタリノスさんだろうね
「おう?あんたらが今日からの客かい?」
お肉揉んでるのは塩もみかな?
「しばらくお世話になります」
「お肉どれくらいで食べられますか?」
リリー、それは直球過ぎやしないかい?
「おう、嬢ちゃんたちの持込みだったか」
「楽しみにしてるみたいでしてね」
「ハハハ!そりゃ急がなきゃだな。なに、もうすぐ出せるようになるから待っててくれな」
香草の香りが漂ってきた。早く食べたいね
席で纏うと振り返ると先程は空いていたテーブルにメルティアさんが座ってフォークを構えている
「いつの間に来たんです?」
「お世話になりますあたりからにゃ」
結構すぐ来たんだね
「向かいに座っても?」
「もちろんにゃ。」
聞くよりもリリーが座る方が速かった気がする
「はーい!前菜ですどうぞー」
てっくんがいくつかの皿を持ってきた
お手伝いかぁ〜
「じゃ、食べますかね?」
聞くまでもなく食べ始めてるのは見なかったことにしよう
スープやパンといったものを摘みながら待っているとタリノスさんが大きめなお皿を持ってきた
「ほれ、ボア肉だ。足りんかったらいってくれ。一応明日用に別のしこみをしてあるからな」
明日は明日で違う料理にが食べられるのか。
皿の上には表面を焼いたタタキのようなものと蒸し焼きにしたもの、香草で炒めたものが乗っていた
じゃ、いただきます。優希がお肉をとる時には既に二人とも口をもぐもぐと動かしながら幸せそうな顔をしている。行動が速すぎて食べる瞬間が見えなかったほどだ
「美味しい。」
ローストビーフ的なものはさっぱりと、蒸し焼きはあっさりと、炒め焼はタレでこってりと。それぞれが違った美味しさで同じ肉とは思えないほどに違った表情をみせる
「久々にいい肉をさわったから心配だったんだが、大丈夫みたいだな」
「ボア肉ってそんなに珍しいんです?」
「ボア肉のいいやつは殆ど王都に上がるから冒険者が食えることは滅多にねぇんだ」
へーっ。こんだけ美味しければ納得だね
「はにゃぁぁ…幸せだにゃぉぁ…」
メルティアさんは美味しそうに食べるね
リリーは速度重視か。って、無くなる前にもう少し確保しとかないと!
「いい食いっぷりだな!腕を奮ったかいがあるぜ」
「泊まってる間何度か持ち込むとは思いますからそのときはよろしくお願いしますね」
「おう、任されたぜ」タリノスさんはにこやかに厨房へと戻って行った