ひのきというお宿
道すがらひのきというものについて考えてみたがこの世界に檜という名前は存在するのだろうか?
探せばあるのだろうが同じ名前かはわからない。そんなどうでもいい話を考えながら宿へと向かう。
お肉って一晩寝かせると美味しいって聞くけど、どんな料理になって出てくるんだろうね?
現在リリーと手を繋いで歩いている訳だが、彼女は何かを話すでもなく俯いて黙々と歩いている
うーん、話しかけずらいんだよなぁ…
時折手を強く握ってくる事があって、そのときは軽く握り返したりして反応を返している
だが、そんな心配は無用だったらしい
「ふぅ、スッキリしました」
顔を上げたリリーはそんなことを言ったのだ
「えっと、何をされていたのかな?」
すごーく嫌な予感がするよ?
「ストレス解消ですっ」
どうやって、なんだろうね?ダンジョンの中でなにかをしていたんだろうけどさ…
「ギリギリ勝てるような死闘をさせ続けただけです。死んではいませんよ?」
痛めつけて楽しむタイプだ…
「そ、そうかい?」
「えぇ、時折熱が入り過ぎてしまいましたが、なかなか面白かったです」
ハハハ…そうですか…
優希は哀れな追い剥ぎ達に心の中で手を合わせるのであった
「にゃっほー」
「あっ!めーちゃんおかえりなさーい!」
宿へと着くと少年が元気よく出迎えてくれた
「めーちゃん?」
「メルティアだからそうよばれてるにゃ。名前教えてなかったかにゃ?」
「初めて聞きました」
「にゃらいま教えたにゃ」
ずいぶんと適当ですなぁ
「ここへは結構来てらっしゃる?」
「めーちゃんはここで住んでるんだよ!」ふふーんと得意顔で教えてくれる
「そういうことにゃ」
へーっそれで詳しかったんだな
「テっくん、タリノスさんにこのお肉を渡して欲しいのにゃ」
「うん!わかったよ!」元気よく返事をして二つ分の包を受け取るとパタパタと駆け出した
「ここの御主人は食材を持ち込むと相性のいい飲みとかサービスしてくれるにゃ」
「へぇ!それはいいことを聞いたね」
ちらっとリリーをのぞき込むとヨダレを滲ませていた。ヨダレ?!
「じゅる。早く食事にしましょう」
「いや、調理に時間かかるんじゃないか?」
「湯浴みできるくらいには時間あるにゃ。部屋に荷物置いてくるといいにゃ」
そう言うとメルティアさんは素早い動きで階段を登って行った。彼女も待ちきれない感じだね
「おや、帰ったかい。ほら、部屋の鍵だよ。場所は二階の突き当たりだよ」
カウンター越しに女将さんが鍵をくれた
「わかりました。」鍵には205と書かれている
外套を脱げないにしても一旦部屋に行って確認しよう