優希の居場所
「ようこそ妖精の花園へ」
丁寧なお辞儀をして客人をもてなすのはこの喫茶店の店長である黒髪の青年。彼の作るお菓子は他所で食べられないこともあり、時折出される新メニューを心待ちにしているリピーターも少なくない。
喫茶店妖精の花園、その中庭には年中様々な花が咲き乱れている。常連からは妖精の手解きと言われるほどだ。
口コミを中心として人気の広まるこのお店には必ず囁かれる噂が存在する。妖精の花園には本物がいる、というものなのだがいつ、誰が見たという話はほぼ無い。皆一様にいそう、いた気がするといった表現で口にするのだ。真偽は訪れた者にしかわからない
「お久しぶりですリチャード様。そちらの方はご紹介ですね?」
王都で有名な喫茶店、その裏手には会員制のお店がある
「ようこそ闘愛倶楽部へ。我社のご紹介をさせていただきますね、支配人の優希です」
黒い外套を見に纏う男。彼の提供する娯楽は着実に顧客を増やしている
「たしかに受取りました。どうぞごゆっくり」
執事の案内で奥の部屋へと向かう客人を優希は見送る。顧客の数はじわじわと増えている
「ようこそ迷宮闘技場へ。はじめましてだね、世界を救う英雄くん?僕がこの迷宮の主さ」
人類の最前線と言われる開拓都市ヘイブン。その町から遠くない場所に何度でも挑めるダンジョンがある
「あぁ、ここは攻撃禁止エリアだから敵意を持って相手にダメージを与えることができない。わかったらその物騒なものをしまうんだ」
丁寧なようでどこか緊張した雰囲気で優希は語る
「君は何を目的にして何を求める?何のために何を成す?」
それは祭り上げられた英雄に、その肩書きの意味を自覚させるための行動である。
「もし君の目標が見えたのならまた来るといい。その時は君に必要なものを準備しておこう」
余計なお節介かもしれないが、その行動が未来の希望へと繋がるとは微塵も考えていないし、気付く事も無い。
「行ってらっしゃいませ」
執事に見送られながら優希は今日も旅に出る。一人の恋人と一匹のペットを連れて。
「行ってきます。まぁ何かあれば連絡してね」
いつでもどこにでも行ける魔法があっても、優希は冒険者として活動しながら旅をする。忙しい毎日から抜け出してのんびりとした時間を過ごすのだ。
「じゃ、行こうか?」
寄添う女性の手を取りながら優希は告げる
「はい♪」
その笑顔は優希を魅了してやまない。
旅に目標は無く、したい事をやりたいように行動するだけだ。
いつか平穏が破られるとしても、藤堂優希は目の前にある幸せを満喫していくのであった…
というわけで藤堂優希のお話はひとまずの完結とさせていただきます。
細かい説明もせずに勢いで駆け抜けながら、書きたいものをひたすら詰め込んだ作品ではありますが、正直ここまで長くなるとは思っていませんでした。
正確には勢いで書いたために細かい所まで煮詰まっていない、だから説明ができないだけなのですが、少しづつ筋が通るように調節していこうと考えています。
気になるところがある等、一言でも良いので感想がいただけると今後の参考になります。
ここまでご覧いただきありがとうございました。