山頂の景色
山を登り始めておよそ3日。かなりの速度で駆け上がったのでだいぶ早くついたのだが慎重に進めば数週間にもなる道のりである
そこは東京の野球場がまるごと入りそうなほど広い平らな土地であった。
その中央では一組の男女が言い合いをしている
「ですから、まず殴るのではなく穏便に…」
「何度も言わせるな!戦った方がわかりやすいのだ!」
「あなたとまともに戦える者などめったにいませんよ」
「そんなもの!やって見なければわかるまい!」
「ですから、最初から倒してしまっては困るんですよ!」
あぐらをかいて座っているのはオールバックに赤い髪の男。戦わずに済ませようとしているのがスーツのような服を着た女性だ。
「ん?」
「え?」
先に男の方がこちらに気付き、続いて女の方がこちらを向いた
「え、嘘なんで?なんでもう付いちゃってるの?!」
あたふたとしだした女性を男性がなだめる
「それだけの実力があるということじゃろうが。今更慌てたところでどうにもならんぞ」
「二番隊、ここから先は邪魔になります。離れておくように」
リリーが二番隊のメンバーを下がらせる
「手紙を届けるだけだと思ってたんだけどね…」
中央へと歩きながらに優希は呟く。先程のやり取りからして戦うことになるのは間違いがなさそうだからだ
「よくここまで来れたな」
赤髪の男が優希に問いかける
「1人じゃ無かったので」
優希は後方の者達を振り返りながら答える
「…ふむ。お前があ奴らの飼い主か?」
「雇い主…みたいなものですね。一応は」
「そうか」
短く呟いた男から燃え上がるほどの熱気が吹き出され付近の温度を上げていく
「ちょっと!いきなりそれはないでしょう!?」
女性が距離を取りながら男に声をかける
「止めるなよ?これはワシの仕事だ」
ざわざわと髪が逆立ち吹き出す熱気は焔となり男を包み込む
「悪いが青年。貴様を野放しにはできぬ」
姿を焔の中に消した男の声が反響し響き渡る
焔は轟々とその大きさをまし火柱となりさらに勢いを増す。
その中から現れたのは赤いドラゴン。炎のように真っ赤な鱗は鮮やかに輝いている
『世の理を弄りし者。己の罪を味わうがよい』
すっと息を吸いその腹を膨れさせたドラゴンは優希達に向けて白い色のブレスを吐き出したのであった