指名依頼
無事に茶葉を分けてもらったふたりと1匹。王都へ戻るとその足で北のギルドへと向かった
「はじめまして、ギルマスの北野藤四郎言います。呼び名ははトーシで通ってます」
優希とリリーがギルドの最上階で出会ったのは20歳にすらなっていなさそうな青年である
「どうして私達が呼ばれたんです?」
それは当然の疑問だ
「君たちが優秀だから。できる者が出来ることをするのは普通でしょ?」
椅子にふんぞり返ってふふんと喉を鳴らす
「もちろん、指名依頼としてだから報酬もしっかり出すよ?」
「依頼であるならば内容を確認してからでなければ答えられません」
リリーは慎重な言葉を投げかける
「それもそうやね。一言で言えば勧誘だよ。とある人物に協力の依頼…一応手紙は書いたけどさ、読んでくれるかわからないから僕の名前を出して協力を頼んで欲しいんだ」
「どこの誰に?」
「北にそびえる山の頂上、そこに赤い髪の男がいるんだ。彼には名前がなくてね…本人は好きに呼ぶといいって言ってた。彼がそろそろ目を覚ます頃合だから会いに行って欲しいんだ」
「手紙の配達、ですか。どんな人物なんです?」
「そうだなぁ…実際会ってもらったほうが早いんだけど…しいていうなら…理不尽の塊かな?」
「おしえるきは無いと?」
「そうともいうね!大丈夫さ、彼は強い人には優しいから」
こうして、ふたりは新たな旅の目的を手にいれたのだ!
「さて、依頼の話はこれくらいでいいかな?」
身を乗り出しながらトーシが話題を変える
「君が転生でそっちはお付きだよね?」
その一言にリリーの威圧が凄みを増す
「あぁ違う違う同郷の者として話がしたいだけなんだってば」
「今すぐに取り消してください。私はお付きではなく妻です」
リリーの言葉にに優希は膝から崩れ落ちるような錯覚を覚える
「はははっ!そうだねごめんごめん、希望を繋ぐ者とそのお嫁さんだったね!」
これによりリリーの威圧は収まり背後に花束がうかんでいるようにも見える
「何から話そうかな…とりあえず漫画とかは読む?続きが気になってるやつがあってさ!」
その話は5時間は続いたという
「助かった〜二度と読めないと思ってたからさ。おかげで謎が解けたよ」
トーシの手元には山積みになったコミックがある。優希の記憶から再現されたもの達だ
「これのお礼もしなきゃだね。依頼の報酬に何か付け足してもいいんだけどどうする?」
「貸一つとしておいてください。いつか必要になるかもしれませんから」
「おーけー。じゃあこの手紙に目を通してから山の頂上を目指してよ」
トーシは2通の手紙を取り出す
「こっちは君たちに。んでこっちを山の上の男に渡してね」
「わかりました。お受けします」
「じゃ、よろしくね!そう、この本はここに置かせてもらうよ?まだ繰り返し見たいからさ!」
優希達は部屋を後にする。そして1人になったトーシのそばにはいつの間にやら人の影が現れるのだが、それは優希たちの知るところでは無い