シューラルの茶
「権兵衛さんにお茶があると聞いて」
村へと到着した後、村長に面会を求めて話を聞いた。
「あまり量は無いのですが…少しでしたら」
拳程の袋に入った茶葉を受け取り少しの気持ちを重ねて返す。木を見せてもらった後はすぐに村を出る予定ではあったのだが…
「予言、ですか?」
「はい。ここ、シューラルの村に勇者が産まれたと」
「で、その勇者様が国内を凱旋していると」
「はい!とても素晴らしいことなのですよ!これは!」
村長の語りは2時間ほど続いたのであった…
「宿、泊まる?」
長いお話が終わり現地を見終わった頃には太陽が山陰へと差し掛かる頃合だった
「久しぶりの外泊ですね!」
急ぎの予定もなく反応も悪くないので宿を教えてもらいそこへ泊まることとした。
「どうぞごゆっくり」
そそくさと立ち去ろうとする女将さんにリリーが話しかける
「なぜ、名乗り出なかったのですか?」
その一言で女将さんは固まり震え出す
「な、何のことでしょう?」
「貴方が名乗り出なかった事により人生が変わった人もいるということですよ」
「やはり、そうでしたか」
女将さんの表情はとても寂しそうな顔へと変わる。ちなみに話に入れないでいる優希はぽちのお腹をこれでもかとなで回している
「いつか運命に導かれる少年に、この箱を」
リリーが一つの小箱を取り出して女将さんへと差し出す
「告発はされないんですか?」
それは不安からくる言葉であろう
「私達には関係の無い話です。もし今のままでいるのであれば旅立つ時に渡してください」
「しばらく預かっておきます」
小箱を受け取った女将さんはお辞儀をしてそそくさと立ち去る
「あれには何が入ってるの?」
それは興味である
「何も。必要となる時までには入れる予定です」
「もし彼女が開いたら?」
「その時はその時ですよ。開いたかどうかはわかるようにしてありますから」
「そう。じゃ、ゆっくりと寛ぎますかね?」
後の事は後で考えればいいのだ。今はただゆっくりとしよう
「はいっ♪」
リリーは飛びつくように優希へと抱きついた
「だーかーらー!オーナーを出せっつってんの!」
妖精の花園。閉店後の店に現れた男は店長にあわせろと繰り返した
「そのような方はいないのですか…」
オーナーを名前だと考えている従業員にはまったく通じない
「どうかしましたか?」
見回りと清掃を終えたサンディがそこへ現れる
「アンタが責任者か?オーナーに会いたいんやけどどこにおる?」
「オーナー…経営者の事でしょうか?」
「そう、それ!ここの持ち主はおる?」
「失礼ですが、お名前や面会のご予約は?」
「無い!」
「今はセイファスの方へ旅に出ておりまして。本日中でなければならないご予定でしょうか?」
「帰ってくるのはいつや?何しに行ったん?」
「茶葉を貰いにとの事で、3日もすれば戻ってこられるかと」
「そうかぁ…おらんのはしゃーない。じゃあ帰ったら北のギルドへ来るように言うてくれるか?」
「ギルドへ、ですか?」
「そ!受付に呼び出された言えば大丈夫なように伝えとくから!」
「失礼ですが、お名前を伺っても?」
「ギルドのマスターと伝えとってや!」
そう言い残して出ていった男の背中をふたりはただぼうぜんと眺めることしかできなかった




