奴隷商人の手口
「このように、なるわけですね。」
ふたりは牢屋に収められ、ぽちは首輪で繋がれている
「うん、捕まる必要ってあったの?」
道中、二日目の夜に盗賊が襲いかかり、ふたりは抵抗らしい抵抗もせずに8名程度の者達により捕縛されたのである
「こういった経験はなかなかできないですよね?」
まるでアトラクションのようにリリーは語る
隣の檻には付き人の二人が入れられている。肉まんじゅうはどこか別の場所に連れていかれていた
「ちなみにあの商人と盗賊はセットなので今頃酒盛りでもしてるんじゃないですかね?」
さらりと暴露される事実
「えっあいつそういうやつなの?」
「名前を変えては冒険者を罠にはめるタイプの屑、いや、豚ですね」
「でもそれってうまくいかないんじゃない?」
「魔物に襲われて行方不明、そういうことにされる人の中にはこういった理由でいなくなる方がいるんです」
「で、どうして捕まる必要があったのか教えてくれるんだよね?」
「脅して追いかけるよりも連れていってもらった方が楽だったんです」
「うるせぇぞ!」
洞窟の一室である牢屋では小声でもだいぶ響くらしい。離れたところにいる見張りの男が怒鳴る
「で、これからはどうすんの?」
「もう少しでマッピングが終わるのでその後で組織まるごとを無くしてしまいましょう」
「そう、これも世直しだよね?」
そんなこととはつゆ知らず、見張りの男はぶつぶつと文句を漏らしながら少ない余生をなにもせずに過ごしていくのであった
「ガッハッハ!今回も上玉じゃねぇか!やっぱお前はいいもんを持ってんじゃねぇか!」
「ひっほっほ!お子様の相手は楽でしたからなぁ!」
顔に傷のある筋肉質の男と雪だるまのように丸いお腹をした男が酒を飲み交わしている
「あすの朝には大金が手に入るわけですからなぁ!」
「充分稼いだし、これを最後にしても良さそうなもんだよなぁ!」
上機嫌で笑い合う男達は自分たちの立場すら理解していない
「うまく行けば、でしたがね」
そこに割り込むのは優希だ
「な!どうやって!!」
「どう?力でこじ開けましたけど?」
優希の手元にはねじ切られた檻の破片がある
「な!そんな簡単に壊せるもんじゃねえんだぞ!?」
実際は魔法で豆腐並みの強度に変えただけなのではあるが、男達にそんなことを知る由はない
「さて、お仕置きの時間ですね」
唯一の出入口にはリリーが立ちふさがる。
「な、なめんじゃねぇぞクソがァ!」
勝ち目のありそうなリリーの方へと向かった男はその先にある落とし穴へと吸い込まれるように落ちていく
「さて?ゆっくりとお話を伺いましょうかね?」
取り残された男は脂汗を滲ませながらゆっくりと地面をはう。
「た、助けて…」
「その言葉、何度も聞いてらっしゃいますよね?どうなるかは想像出来てますよね?」
にっこりと笑う2人に男は泡を吹きながら意識を飛ばすのであった…