旅に出たい
「どうしてこうも空は青いのだろうか」
まるで哲学者のような呟きをしている優希は現実から逃れたいと考えている
彼が喫茶店で働いた時に手に入れたレシピや珈琲のいれかた。飲食店のメニューやサービスなど。培った技術を惜しげもなく注ぎ込んだ結果、2週間たった今でも新旧問わずたくさんの客が訪れている。
むしろ、客足は増加傾向にあると言ってもいい
窓から見える空にはゆっくりと雲が流れ、時折鳥が横切っていく
「追加入りましたー」
優希は時折時間の流れを変えることによりすべてのメニューを1人で作っているのだから、営業時間内での休みはほとんどない
「ほーい。Bホール8卓と13卓上がってるから持って行って」
外の景色を眺めながらひたすらに手を動かしていく。優希の苦労はまだ始まったばかりである
「人を入れよう」
それは営業の終わった店内での試作を食べながらの事である
「毎日お疲れ様です。どこに配置しましょう?」
答えたのはリリーだ。
「厨房とホール。今のメンバーがいなくても回る事を目標にメンバーを増やしたい」
それは休みが欲しいという純粋な気持ちだ
「条件はどうされます?」
「まずは長期的に見て頑張ってくれる人かな?住み込み可で昇給ありって感じで」
「明日にでも商業組合の方へ話をしておききますね」
その後、雇うことになる者達は少年少女だけだったという
ひと月もあればまたのんびりできるよね?などど優希は考えているがのんびりできるようになるまでには半年近い日数を要した
「ついに、ついに新たな勇者が!」
東の国にある祭壇で1人の老人が声を荒らげる
「おぉ、ついにこの時が…」
周囲にいる者達がざわざわと騒ぎ出す
「他には!」
老人の役割は予言である。その言葉にはとてつもない意味がある
「シューラル…そこに産まれたようじゃ…」
それは国内で勇者が誕生したという事であり、早急に保護し育成する命令が下るまでにあまり時間を要さなかった。
彼らの誤算は勇者の母親が子の生まれを隠し通したことと、同じくして生まれた子供がいたことである。
そして、幸か不幸かその子供は勇者ではないにも関わらず勇者と間違われる程に優秀な、いわば天才であったということだろう
「今代の勇者を、我々の手で」
それは怨念にも似た願いであり、欲望でもある。
かくしてこの世に勇者が産まれ落ち、別の大陸では魔王が誕生の時を迎えたのである。
優希の物語はひとまずの完結へと向かいます。予定では。




