俺達の戦いはこれからだ
ふと、打ち切り作品にありがちなセリフが脳裏をよぎった
「と言っても伝わらないよね?」
「急なことですし、何を伝えたいのかがわかりませんね」
「まぁ思い出しただけだからなんの意味もないんだけどね」
「そうですか…これから自殺でもするのかと」
「しないよ!?まだやってないこと多いからね!?」
二人は今、開店を迎える事となった屋敷の前でその風貌を眺めていた
「思ったより夢がかなうのって簡単なんだね」
「この世界が何でもできるだけですよ」
「それはそうだけどさ、夢は夢なのだからやっぱり嬉しいよ」
お店の名前は妖精の花園。これは実際に妖精達が飛び回っている事に由来している
「でも、普通は見る事ができないんだよなぁ…」
「魔道具を使えばいいだけなんですけどね…」
「そうか、会員証を魔道具にすればいいんだよね?」
「身につけるタイプですか?」
「たとえば…イヤリングみたいな」
「来店回数も管理したいですよね」
「時間はあるんだし、しっかりと煮詰めていけばいいよ」
「そうですね。これから忙しくなりますね?」
「それは…まぁ、ご愛嬌ってことで」
ふたりは歩き出し、屋敷の中に消えていく
「よし、完成!」
優希が作っているのは立て看板だ。黒板にチョークでオススメや営業時間などが書かれている
「じゃ、これを立てたら開店だよね?」
「はい。接客の確認も終わりました」
「告知らしい告知もしてないしいつ人が来るかはわからないけど、これからよろしくね!」
この時の優希はこの店が多くの客が訪れる事を知らない。いつしか魔法で料理を量産するなどとは考えてすらいなかったのである。
「その、宣伝は既に手配済なんですが…」
リリーはフード商会へと訪れた際に喫茶店を開く事を話していたのだ
「…じゃあ、今朝から前を通る人が多かった気がするのは?」
「こちらを見てらっしゃいましたね」
「開店します!」
優希は慌てて看板を置きに行く。
「ゆっくりやるのではなかったんですか?」
まるで保護者のような呟きをするリリーはふぅとため息をついてから設備の最終確認をするのであった
昼過ぎ、優希はあまりの客の多さに客席を増設するなどの対応に追われていた。
「まさか、宣伝の効果がこれ程とは」
「つい、熱が入ってしまいまして。これ、開店祝いです」
客足が落ち着き始めた頃、キールさんが花を持ってきてくれた
「どうも。で、どうやったら二、三日でこんなに人が来るんです?」
「元々得意様宛にこまめな手紙を書いていましてね?そこへ一言添えただけですよ」
「その一言は何通くらいに書いたんです?」
恐る恐る訪ねてみる
「ざっと2千通程ですね。半分以上は配達待ちですから、これから忙しくなりますよ?」
にっこりと笑うキールさん
「し、知らなきゃ良かった…」
今ですら相席をお願いするかという段階なのだから、このままでは部屋を広げるか増やさないと開店二日目から入場整理をする必要がありそうだ
「知らなくていいんですか?今ならまだ対応できるのでしょう?」
それは魔法でなんとかできるでしょ?といったニュアンスだ
「えぇ、そうですね。情報感謝します」
顔には疲れが滲み出ている
「さて、私も体験させていただいても?」
「VIPルームにご招待です」
リリーが奥の部屋から出てくる
「それでは、ごゆっくりどうぞ。」
キールさんのことをリリーに任せ、優希は次のお客を受け入れるために玄関の扉を開くのであった




