2度目の景色
太陽が真上を過ぎ去り、日差しは徐々に弱くなっていく。夏が終わったとはいえまだまだ暑さは残っている。
草原には山より吹き降ろす風が頂の爽やかな空気を運んでくる
比較的高い標高と風により木陰にいれば秋のような過ごしやすさがある。
草原の中央にぽつんと映える一本の木、その木陰に二人の姿がある
「…ん?」
優希が閉じようとしている瞼を開くと広がる枝葉とリリーの顔を見る
「おはようございます」
優希の髪を撫でながらリリーは優しく声をかける
「リリー?じゃあ、ここは…」
意識を失う前の全力を出した戦い。自らのすべてを出し切った朧気な記憶から、なんとなくを理解する
「今はまだ、ゆっくりとされていてもいいんです」
起き上がろうとする優希の肩を優しく抑える
「あの後、どうなった?」
起き上がることをやめ、まぶたをおろした優希は気になったことを尋ねる
「ひとまずは封印されました。将来あの者を倒すことが出来るようになれば、封印を解くこととなるかと」
「つまり、倒す事はできなかったと?」
「彼を完全に倒すのであれば、精神体と肉体を同時に消しさる方法を作り上げなければなりません」
「そう、か…」
「これは未来の英雄が挑むことですから、優希様はこれ以上関わらなくてもいいんですよ」
「関わりたくても、関われないんじゃないの?」
優希は目を開きリリーを見つめる
「はい?」
リリーは首をかしげる
「え?」
「えっと、現状から説明しますと優希様は今、生きている状態です」
「えっ!?でも」
「死んだのは間違いないです。が、覚えてらっしゃいませんか?ダンジョンマスターとコアは対になっていて、片方が亡くなっても復活させられるという話を。」
たしか最初にそんな話をされた気がする
「予め器を作り情報を残しておいたのでスムーズに以降することが出来ました」
「つまり…ここは以前と同じ場所って事だよね?ヘイブンの近くの」
「はい。爽やかな目覚めを演出したかったので」
再び目を閉じた優希は腕で目元を覆う
「今どうなってる?」
「まず戦いの終わりは2日ほど前になります。その間にダンジョンはだいぶ認知されたようです。この世界での優希様のなすべき事は終わりましたし、ダンジョンの片手間に喫茶店でも経営するのはいかがですかね?かつての夢だったのでしょう?」
「確かにやりたいとは言ったけども」
「この世界にある迷宮を探索するのも面白いかも知れません。やりたいことを何でも出来るんです」
「結局ろくな休みもとって無かったしね?」
「大陸食べ歩きツアーでもしてみますか?」
「まずはまだ行ってない国に行くのもアリかもしれないね?」
「きっと楽しいですよ!」
二人の会話は地平線に太陽が沈むまで続いたそうな…