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キミは隣  作者: サン
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Story-1『上京』

「わぁ〜、すっご。高いビルばっかだょ」

 新幹線の窓の外には夕暮れに染まりつつある東京の大都市が広がっている。

「綺麗〜」

 徐々に景色の動きがゆっくりになり、暫くすると窓からはホームに立っている2、3の人が見えるだけとなった。次第に周りの人が立ち上がり、出入口に向かって列をつくり始めた。皆、両手に大きな荷物を提げて、とても邪魔そうだ。新幹線の出入口の開くプシュッという音と共に、一斉に人々が下車していく。後ろの人に若干背中を押されながらホームへと足をまたぎ、周囲を2、3回見回した。すると、こちらに気付いた一人の女性が早足で近づいて来る。

「梓ぁ、こっちこっち」

「あっ、奈美」

 彼女の名前は『美雪 梓』。美雪っていうのは名字で、よく下の名前と間違えられたものだ。茶色の髪は肩に少しかかっていて、外に向かって元気よくハネている。18歳で、高校時代に就職のため数多くの面接に挑んだが、見事に砕け散った。

 そして、あっちからやって来る女の子は『愛沢 奈美』。梓の高校の同級生で、就職ではあちこちの会社から引っ張りだことなり、今は東京でファッション関係の仕事に就いている。やはり、ファッションセンスは抜群で、髪は緩めのパーマがかかり、服装は今からファッションショーにでも出るんじゃないのかと思ってしまうほどだ。

「久しぶり〜。元気にしてたぁ!?」

 梓は奈美の元へ駆け寄った。

「元気元気。あんたは?……って、見りゃ分かるね」

「しっかし、奈美、なんかすっごくカッコよくなったよね〜。いかにも東京の女って感じ。」

「でもさぁ、わざわざ東京に来なくても地元で就職すりゃイイじゃん」

「それじゃダメなの。あたしは東京で派手〜な仕事に就いて、優雅〜な生活をして、奈美みたいに好き勝手に生きたいわけ。」

「ハァ、あたしだって苦労してるんだからね。別に好き勝手なんかしてないよ〜。それに地元でも就職出来ないあんたがこんな都会でやっていけるのかなぁ」

「あぁ〜。東京かぁ。遂にあたしの時代が来たって感じだなぁ。なんの仕事に就こっかなぁ。カワイイ仕事がイイなぁ。ん〜、悩むなぁ」

 梓は奈美の話を全く聞いてない。

「てか、あんたさぁ、家に泊めてあげるのはイイけど仕事が見つかるまでの間だけだからね」

「分かったるって。すぐに見つかるから大丈夫。心配御無用」

 奈美は呆れた様子でため息をついた。

 そして二人はゆっくりと歩き出した。尽きる事のない一年分の出来事をお互いに話しながら。辺りは随分暗くなり、さっきまで見えていた駅の姿もすっかり闇の中だ。梓はこれから始まる東京での生活に、期待で胸が弾んでいた。

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