看護師として、友として
「さっかいりさん!おっはようございます!」
「河野さん、おはようございます。」
「昨日会えなくて寂しかったでしょぉ?」
「あはは、河野さんの声が聞けないと、確かに寂しいかもしれないですね。」
「でしょうでしょう?私もね、坂入さんに会えなくて寂しかったですよ!何せ帰っても一人なんでね!」
河野さんは、ぱっと見三十歳位だけど、本人曰く二十七、との事で、俺とほとんど同世代だ。
高校卒業して、看護師学校に入学して、卒業してからずっとこの病院で務めてるって言ってるけど、結構若手らしい。
「看護師長さん、良い人ですよね。」
「唐突にどうしたんです?鬼の看護師長が?」
「いや、ちゃんと後輩の事を見てくれてる人なんだなって、話してると思うんですよ。確かに怖そうな見た目はしてるけど、優しいじゃないですか。」
「私らには厳しいですけどね、患者さんには優しいんでしょうよ?さて、行ってきますね。」
今日の朝ご飯はパンに苺ジャム、ポトフにヨーグルト。
思えば、入院前とは比べられない位、食べる量が減ったなと思う。
いっつも毎食ご飯一合は食べないと気が済まなかったのに、いつの間にか、病院の食事でお腹がいっぱいになってる。
ある意味、食欲が落ちてきたんだなって実感するけど、まだ大丈夫かな?とも感じる。
本能、じゃないけど、まだ大丈夫だって、心のどっかでわかってる、って感じだ。
「ふぅ……。」
甘いものなんて最近あんまり食べないから、ちょっと体力を使う。
美味しいんだけど、糖分を摂取する事が少なくなってきてるから、ちょっと疲れるというか、そんな感じだ。
「今日は……。」
今日会う予定の子をチェックして、その後任の先生にデータを送る。
余命告知されてから、六日が経った、今日は一月二十二日月曜日だ。
今の所痛みはない、何も変化はない、まだまだ平気だ。
予定が入ってるのは午後からだ、午前中はゆっくりしようかな、なんて思いながら、読みかけの小説に手を伸ばした。
「坂入さん、集中してますねー?」
「あ、河野さん。お昼ですか?」
「いえ、私の休憩なので、坂入さんの顔でも見ておこうと思って。」
時計を見ると午前十一時、まだ昼ご飯には早い。
河野さんは、ウィンクをしてベッド横の椅子に座ると、しげしげと俺を眺めてる。
「坂入さん、当然ですけどやつれましたね。前来た時は、もっと恰幅が良かった気がしますよ?」
「食べる量が減りましたからね、多分その影響じゃないかな。がりがりには程遠いですけど、確かにやつれたかな……。」
河野さんに言われて、二の腕なんかを見ると、皮膚が余っててだるんだるんだ。
それだけ俺が太ってたって話なんだけど、癌になってから多分数年で、急に痩せたから、皮膚の伸縮が追いついてないんだと思う。
体重も、百キロ超えてたのが、今では八十キロ位だし、ダイエットに成功したから、って言うのは無理筋じゃないかなって。
「本当なら、だいぶ弱っててもおかしくない時期なはずなんですよ、坂入さんは。でも、なんででしょうね?こんなにも元気でいらっしゃって、癌だなんて信じられないですよ。」
「なんででしょうかね?俺にもわかんないですよ。」
「私も看護師になってから七年、色んな人を見てきましたけどね。こんなに元気で、明るい余生を過ごされる方って言うのは、あんまり見ないんですよ。だから、ずっと元気でいて欲しいなって、そう思うんです。無理な話ではあるんですけれどもね、きっと、坂入さんも衰弱される日が来る、それはわかってます。でも……、でも、私は元気でいて欲しい。こういう事言うと、大概の方には怒られるんですがね。看護師長にも、注意されましたよ。」
それでもそれを話してくるって事は、それだけ俺に気持ちを傾けてくれてるって事なんだろう。
その気持ちが嬉しくて笑ってると、河野さんは照れくさそうにはにかんだ。
「ありがとうございます、河野さん。俺、そう言う看護師さんがいるってのは驚きですけど、その気持ちは忘れちゃいけないと思いますよ。聞いててわかる、河野さんはホントに優しい方なんだって。」
「おっと、褒められてもお昼ご飯は増やせないですからね?」
「素直な気持ちですよ、河野さん。貴方みたいな人がいてくれるから、俺は笑っていられるんです。」
それは嬉しい、と照れくさそうな河野さん。
こうして、休憩時間中にまで話に来てくれる事が、俺は嬉しい。
看護師としては間違ってるのかもしれない、私情を挟んでいる、と怒られるかもしれないけど、それでも嬉しんだ。
「誰に怒られたとしても、誰に否定されたとしても、河野さんの気持ちをわかってくれる人が、必ずいる。だから、その気持ちを忘れないで、ずっと持ち続けてください。」
「坂入さん……。貴方は本当に、良い人ですよ。私みたいな変人に、そんな言葉をかけてくれるなんて。……。私実は、看護師やめようと思ってるんです。色んな人に合わないって言われて、患者さんの気に障る事を言っちゃって、無神経で。だから、辞めた方がいいんだ、って。」
「……。それでも続けたい、患者さんを励まし続けたい、そうでしょう?俺はそれでいいと思います、その気持ちに励まされる人も、必ずいるから。だから、そんな寂しい事言わないで下さいよ。河野さんが辞めちゃったら、誰が俺の話相手になってくれるんです?」
河野さんは、本当に辛そうな顔をしながら、少しだけ泣いてる。
こんな事、患者に言うべきじゃない、って看護師長さん辺りに言われそうだけど、我慢が出来なかった、って感じだ。
「私は……。私は、このままやって行っても、良いんですかね……?奇人変人と言われて、患者さんに怒られて、それでも……。私は、患者さんに、最期まで笑顔でいて欲しい、そう思ってるんです……。」
「立派な事ですよ、河野さん。俺、河野さんみたいな人に出会えて、良かったと思ってますから。俺も奇人変人の類だからなかなかいないかもしれないけど、少なくとも俺は、河野さんの良さに救われてるんです。」
「坂入さん……、ありがとう、ございます……。……、坂入さんには、ずっと生きてて欲しいですよ……。私、坂入さんと相性が良いですから、楽しいです。」
「俺もですよ。出会ったのがここじゃなかったら、長い付き合いになってたんじゃないか、って思います。今でも、大切な友達だと思ってますけどね。迷惑ですか?」
河野さんは、ぎゅっと目を瞑って涙を止めて、笑う。
「光栄ですよ、坂入さんと友達だなんて。じゃあ、悠介さん、ってお呼びしてもよろしいですか?」
「はい、ぜひ。河野さんは、お名前は何て言うんですか?俺だけ名前呼びなんて、ずるいですからね?」
「陽太と言います、陽太ですよ、悠介さん。」
「よろしくお願いしますね、陽太さん。」
河野さ……、陽太さんは、そろそろ休憩が終わるから、と席を立つ。
病室を出ていくその背中は、なんだか少し嬉しそうで、満足そうで、寂しそうで。
そんな風に見えたのは、きっと間違いじゃないんだなって、そう思った。
「悠介さん!ダイジョブっすか!?」
「こんにちは、大吉君。ごめんね、学校終わりに呼び出したりして。」
「俺はダイジョブっすけど……。悠介さん、体良くないって……。」
「ごめんな。……、余命半年、なんだって。一週間くらい前に、癌が転移してるって告知を受けたんだ。だから、お別れの前にちゃんと話がしたくてさ。」
「半年……!?半年って……、俺……、高校生にもなってないじゃないっすか……!国体出るとこ、楽しみに待ってるって、言ってくれたじゃないっすか……!」
大吉君、この子は今中学二年生で、空手をやってる子だ。
関わり始めは二年前、小学六年生の頃で、父親からずっと虐待を受けてきて、離婚して母親が親権を取ったのは良かったけど、男性教師相手に怖がっちゃって、それで俺の所に来て。
最初は警戒されてて、女性カウンセラーの方が良いんじゃないかって紹介しようと思ったんだけど、そのうち懐かれて、中学一年の頃には男性教師に対しても怯えなくなって、空手を習い始めて、だいぶん体つきががっちりしてきて。
成長を見守ってた子なんだけど、それももう出来ないんだなって、改めて考える。
「ごめんよ、約束守れなくて。でも、ずっと応援してるからね。」
「やっすよ……!見てくれなきゃ、俺、頑張れないっすよ……!」
わんわん泣き出しちゃって、大吉君は俺に抱き着いてくる。
大きくなったと思ったけど、まだまだ子供なんだな、こんな子を置いて行かなきゃならないんだなって思うと、少し胸にちくりと来るものがある。
でもやっぱり、ちび達の時も思ったけど、何も言わずにさよならするよりも、ちゃんと話して向き合って、別れを告げた方が良いんだな、って思うから。
「大吉君、君は強くなった。まだまだって自分では思うかもしれないけど、自分で思ってる以上に、君は強くなった。だから、俺がいなくても大丈夫だ。」
「そんな……、無理っすよ……!俺……、悠介さんがいてくれたから……!」
「そうかもしれないね。でも、これからはそうは出来ないんだ。だから……、強くなるんだ、大吉君。自分の力で立ち上がって、歩ける様に。すぐにとは言わない、でもいつかは。そうして生きて行かないと、何も出来なくなっちゃうから。」
非情な現実かもしれない、でも現実は一つしかない。
けれど、伝えなきゃいけない、これだけは教えなきゃいけない。
それが、俺の最後の役目だから。
「これから先、辛い事は沢山あると思う。でも、君は独りっきりじゃない。お母さんが、妹ちゃんが、友達が、そばに居てくれる。だから、皆で一緒に生きて行くんだ。それだけわかってれば、怖いものなんて吹き飛ばせるよ。」
「そんな事……、言われたって……。俺、わかんない……、っすよぉ……!」
「大吉君はきっとわかる、俺はそう信じてるよ。俺が必要だって言ってくれるのは嬉しいけど、もう俺はそばには居てあげられないから。だから、大吉君ならきっと、前を向けるって、信じてる。」
大声で泣きじゃくりながら、大吉君はわかんないと言う。
今はわからないかもしれない、それは理解出来ない事なのかもしれない。
でもきっと、いつかは理解出来る日が来るって、俺は信じてた。
信じてるし、信じる他ない、後の事は、後任のカウンセラーと周りの人達に任せるしか出来ない。
最後の最後、無力感を味わう事になるかもしれないけど、俺はきっと出来るって信じる事にしたんだ。
「悠介さん……。死んじゃったら、嫌っすからね……。」
「まだすぐに死ぬわけじゃないよ、また会える。」
「約束、っすからね……?」
暫く時間が経って、大吉君も少し落ち着いて。
俺は、紗也乃ちゃんにしたのと、同じお願いをしなきゃな、って思い出す。
「そうだ、大吉君。一つ、お願いがあるんだけど、良いかな?」
「なんっすか……?」
「浩介達と、交流を続けて欲しいんだ。俺が死んだ後も、あの子達と関わり続けて欲しいんだよ。」
「なんで……、っすか……?」
理由を問われると、色々とある。
「大吉君の心のバランスに、あの子達はいい方向に作用してくれるし、あの子達にとっても、大吉君がいてくれたら気持ちが助かると思うんだ。だから、お願いだ。」
「でも……、俺、何も……。」
「何も出来ない、なんてどうでもいいんだよ。ただ、そばに居てくれるだけで、助かる事もあるんだ。それは、大吉君は良く知ってるだろう?」
わかってくれるだろう、と俺は思う。
だって、最初大吉君と接してた時、俺は何も言わずにそばに居たから。
言葉を発すると怖がる大吉君を怖がらせない為に、ずっと黙って隣にいたから。
「わかったっす……。俺、出来る事あるっすかね……?」
「大吉君にしか出来ない事が、きっとある。俺は信じてる、皆で前を向いて、歩いて行けるって。」
「悠介さん……。」
さぁ、もうお帰り。
そう仕草で伝えると、大吉君は何度も何度もこっちを振り返りながら、帰って行った。
「悠介さん、今日のお客さんは随分若かったですね?」
「まだ中学生ですからね。酷な事、言っちゃった気がします。」
「でも、それが正しいと信じているのでしょう?なら、悠介さんの思う通りにやるのが良いんじゃないですかね?」
「そう、ですかね……。」
夜ご飯を陽太さんが持ってきてくれたんだけど、俺は珍しく悩んでるんだと思う。
陽太さんは珍しいものを見てる様な顔をしてるし、俺自身悩んでる自覚はある。
最近は、というか入院してから自分の命以外の事で悩む事も少なかったんだけど、これで良かったのかな、って思うんだ。
「患者によって対応を変える、それは看護師の基本だって看護師長に言われた事がありますよ。でも、悠介さんの言いたい事って言うのは、一貫してるでしょう?だから、私は悠介さんは間違ってないと思うんですよ。」
「そう、かな……。」
今日の大吉君の反応だったり、浩介達の反応だったり、俺の独りよがりになってないかな、って不安になる。
でも、それが正しいんだと思う。
独りよがりだったとしても、独善だったとしても、それでも、何もしないよりは。
「悠介さん、貴方は間違ってない、と私は思いますよ。それが正しいとも言い切れないけれど、少なくとも間違いじゃないって。」
「そう言ってくれると、なんだかホッとします。いっつも不安なんですよ、間違いじゃないか、間違ってないか、おかしい事じゃないかって。」
「似合わない言葉ですねぇ、悠介さんは自信に満ちて堂々としてるタイプだと思いましたよ。さ、それじゃ行ってきます!」
「行ってらっしゃい。」
夜ご飯は豚の生姜焼きにみそ汁、漬物とご飯。
最近肉を食べる機会が減ってきてたから、薄味だったとしても嬉しい。
間違って無いかな、大丈夫かな、なんて思いながら、俺はゆっくりと夜ご飯を食べた。
「悠介、お待たせ。」
「今日は遅かったな、残業か?」
「うん、ちょっとプロジェクトの方がね。」
面会時間ギリギリになって、浩介が来てくれた。
浩介は何か言いたそうない顔をしてて、俺は何を言いたいのか、って黙って待つ。
「紗也乃ちゃんと大吉君に、お願いしたんだって?僕達と関わり続けて欲しいって。大吉君、泣きながら電話してきたって言ってたよ?」
「その話か。そうだな、そう言ったよ。あの子達の為にも、浩介達の為にも、その方が良いのかなって。」
「僕達の為?」
なんだか浩介は、少し怒ってるみたいだ。
理由はなんとなくわかる、浩介の事だから、大吉君と紗也乃ちゃんを泣かせた事を怒ってるんだろう。
「皆が一緒に、前を向いて歩いて欲しいから。だから、関わり続けて欲しいってお願いしたんだ。浩介達にとっても、他人じゃないだろう?確かに俺が結んだ縁だけど、それでもさ。」
「でも、泣いてたよ?二人とも、辛そうだったよ?」
「それは、皆と関わる事が辛い訳じゃないよ。ただ、俺がいなくなっちゃうって言うのが、少し辛いだけだ。それはそれで嬉しい気持ちではあるけど、でもさ。でも、それじゃ辛いばっかりじゃんか?だから、皆お互いの為に、っ関わり続けて欲しいって、お願いしたんだ。」
「そっか……。じゃあ、あの子達にも?」
「明後日会うから、話すつもりだよ。あの子達が、どう返してくるかはわかんないけどね。」
次に会う子達は、高校生とその兄の社会人、一緒に暮らしてる高校生とそのお父さん。
奇妙な縁があって、一緒に暮らす事になった四人で、最初はお父さんから息子の事で、って話が入ってきたんだ。
「お父さん、僕達の事まで面倒見ようとしてくれたよね。あれ、嬉しかったなぁ。」
「あの人は優しいからな。あの人がいなかったら、あの子達は今頃施設に行ってたと思うよ。そしたら、兄弟離れ離れになってたかもしれない。ホントに、感謝してもしきれないよ。」
先にカウンセリングに来ていた親子に、少しこういう子達がいる、と話をしたら、なら私が引き受けましょう、なんて言ってくれた、肝っ玉なお父さん。
その頃はまだカウンセラーとしては新米で、右も左もわからない状態だったから、ありがたかった。
「何か食べる?夜ご飯、ちゃんと食べられた?お腹空かない?」
「だいじょぶだよ、最近胃が縮んだかな、あんまりお腹が空かないんだ。」
「そっか、じゃあ、また明日来るからね。」
だから、明日も元気でいてね。
浩介がそう言いたげな顔をしてたけど、それは出来るかはわかんない。
ただ、元気で居られたら良いな、と願う。
「ふぅ……。」
雪の降る中、浩介は帰路を歩いている。
幸いな事に病院は歩いて行ける距離で、浩介は元々野球をやっていたし、今は営業職だから足腰は強い方だ。
何の苦にもならないし、こうして一人で歩くのも苦ではないのだろう。
ただ、悠介と一緒に歩けたら、一緒にどこかに行けたら、と思っている。
「雪、積もるのかな。」
冷たい風が頬を撫でる、浩介はマフラーを巻きなおして、ちょっと考えたい、と缶コーヒーをホットで自販機で買う。
しんしんと降る雪を眺めながら、悠介はあとどれくらい生きられるのだろうか、と考える。
この一週間、ずっとその事ばかり考えている気がする、仕事もきちんと出来ていないし、プロジェクトからいったん離れてみてはどうか、という話を上司からされている。
悠介がそれを聞いたら、きっと自分達が生きる為にやって行って欲しい 、というのだろう。
しかし、浩介は自分にはそれは出来ない、と感じていた。
小学生の頃からずっと一緒で、これから先も一緒に、と約束していたのに。
それがもう出来ない、そう考えた時には、悠介以上に絶望に包まれた。
悠介もきっと、苦しいのだろう。
むしろ、悠介の方が、苦しいのだろう。
でも、それを表に出さず、自分達の為に何かをしたい、と言われると、浩介自身何も言えなくなってしまう。
悠介の様にカウンセラーでなくとも、心理学など専攻していなくとも、悠介が強がっているのはよくわかる。
「はぁ……。」
周りを見れば、高校生のカップルだろうか、制服を着た男女が仲睦まじく手を繋いで歩いている。
あんな日もあったな、そう言えば雪の降った日、学校に一緒に行ったな、と思い出し、泣きそうになってしまう。
「悠介……。」
あとどれくらい、生きていられるのだろう。
その問いの答えは誰も持っていないし、誰も教えてはくれないだろう。
きっと、悠介自身も。
「僕は……。」
遺されてしまう自分は、何が出来るのだろうか。
何も出来ないかもしれない、何か出来るかもしれない。
今の自分に思いつかないだけで、本当は出来る事が沢山あるのかもしれない。
けれど、今の浩介は、それを考えられずにいた。
「悠介……。」
あっという間に温くなったコーヒーを一口飲みながら、物思いに耽る。
途中にある公園のベンチに座り、雪を肩に積もらせながら、浩介は空を仰ぎぼーっとする。
これから先、どうやって生きて行けばいいのだろう。
これから先、悠介の居ない人生に耐えれらるのだろうか。
そんな事を考えながら、浩介は雪を眺め続けた。




