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あと少しだけ、傍に居たい。  作者: 悠介


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13/14

末路は

「夢……?」

 気が付いたら寝ていた浩介は、朝日の日差しと共に目を覚ます。

 朧気に、昨日の夜の事を思い出す。

 悠介が、何か言っていた。

「あと、すこしだけ……。」

 二週間前にも言っていた。

 あと少しだけ、そばにいたい。

 きっと、そう言いたかったのだろう、きっと、そう伝えたかったのだろう。

 悠介の最後の願い、それは。

「わかってるよ、悠介……。僕達は、ずっと一緒だ。」

 悠介の手を握り、誓う。

 ずっと一緒にいると、死んでしまったとしても、心はずっと一緒だと。


     *


 一週間が経った。

 子供達は毎日の様に顔を出しては悠介に声をかけ、大吉や紗也乃、祥太や哲太達も顔を出しに来る。

 浩介は、丁寧に来た人達に対応をしながら、出来る限りの手伝いをしていた。

 悠介はあれからずっと、目を覚ましていない。

 言葉を発する事が無ければ、体を動かす事も無い。

 点滴はしているが、みるみるうちに痩せていってしまっている。


「浩介さん、少し休まれた方が良いのではないでしょうか?お疲れの様子が伺えますが。」

「陽太さん……。僕は大丈夫ですよ。陽太さんこそ、いっつもお仕事されて、大丈夫ですか?一週間、お休み取ってないでしょう?」

「私は慣れていますからね、それに、他の看護師に任せるのはちょっと嫌でしてね。看護師長は信頼していますけれどね。」

 浩介も気づいていた、悠介に対して良い感情を抱いていない看護師がいる事に。

 陽太や看護師長以外の誰かが来る時、浩介に話しかけもせずに、ただやらなければならないからと仕事をしている様子が、簡単にわかったのだから。

「陽太さんが頑張るなら、僕も頑張らなきゃです。悠介が言ってたんですよ、あと少しだけ、そばにいたいって。だから、僕はずっと傍にいてあげたいんです。」

「そうでしたか。なら、お互い体調には気を付けつつ、頑張りましょう。」

 徐々にゆっくりになっていく心電図の音が、悠介の死期が近い事を告げていた。

 だから、後少しだけ、無茶でも頑張りたいと、二人は思っていた。

「浩にいちゃ!」

「浩ちゃん、悠ちゃん、いらっしゃい。」

「僕達もいるよ。」

「悠治、綾ちゃん。二人とも、時間大丈夫だったの?」

 気が付けば午後四時、悠治は今日は仕事を休みで、子供達は学校や幼稚園が終わってから来たのだろう。

 皆で悠介の様子を眺めている、と。

「……。あり、が、と……、う……。」

「父ちゃ……?」

「悠にぃ?」

「……。」

 悠介が、小さく、とても小さい声で呟いた。

 一瞬だけ意識が戻ったのだろう、目を開いていたわけではないが、確かにそう言った。

 そして。


 ピー……。


「……。悠介さん……。私は先生を呼んできますので、お別れの言葉をかけてあげてください。」

 心電図の音が、鳴り響く。

 波形も動かなくなってしまった、それは悠介の心臓が鼓動を止めた証。

「父ちゃ、だいすきだよ……。」

「ぼくも、父ちゃのこと、わすれないよ……。」

「悠にぃ……。お疲れさまでした。」

「私達、頑張るからね……。」

 一人一人、最期の言葉をかける。

 不思議と、誰も泣いてはいなかった。

 ただ、悠介が死んでしまった、その事実に悲しみながら、しかし。

 最期は笑顔で見送ろう、と決めていたのだからと、呼吸の止まった悠介の頭を撫でながら、一人ずつ声をかける。

「悠介……。悠介、ずっとありがとう。僕達を守ってくれて。でも、もう大丈夫だよ。皆で、一緒に歩いていくから。だから……。ゆっくり、休んでね。」

 別れとは、かくもあっけない。

 悠介は、幸せそうな笑顔を浮かべながら、逝った。


     *


「陽太さん、来てくれたんですね。」

「はい、もちろんです。」

 三日が経った。

 葬儀場には、これまで悠介が関わってきた子供達、浩希達、悠治達、そして浩介、悠介の親戚が一堂に集まっていた。

 僧がお経を唱え、静かに見送る時間が過ぎていく。


「それでは、お焼香を故人に。」

 僧がお経を唱え終え、最期の別れの時間がやってきた。

「悠介さん、あたし、頑張るからね。」

 まずは紗也乃が、焼香を上げる。

「悠介さん、俺、絶対国体出るっすから……。」

 次に、大吉が。

「今まで、ありがとうございました。」

 祥太が。

「悠介さん、貴方に教えてもらった事、ずっと。」

 哲太が。

「皆で、前を向いていきますから。」

 敬太が。

「私に任せなさい、悠介君。きっと、皆を導いて見せるよ。」

 敬太の父が。

「悠介さん、俺、頑張っからな。」

 雅也が。

「悠介さん……。今日だけは、涙を流す事を、お許しください。」

 陽太が、いつもの笑顔はどこに行ってしまったのか、涙をこぼしながら。

「父ちゃ、だいすきだよ。」

 浩希が。

「父ちゃ……。」

 悠介が。

「悠にぃ、ありがとう。」

 綾が。

「悠にぃ、ずっと幸せにね。」

 悠治が。

「悠介、悠介は幸せだった?僕は……。僕はずっと幸せだったよ。」 

 最後に、浩介が。

 焼香を上げ、別れの言葉を告げる。

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