20話 ストームグリフォン
「これがボスエリアか……」
10階層に入ると見晴らしのいい草原が広がっており、強風が吹いていて草原の草達が同じ方向に寝そべっていた。
3人は警戒しながら歩みを進める。
草が、ざわりと揺れた。
風向きが変わったわけでもない。ただ、頭上を何か大きなものが横切った――それだけで、空気の流れが乱れたのだと分かる。
突如、ミナト達の頭上に気配を感じた。
見上げると何かが頭上を旋回している。
それが一体何なのかなんて答えは一つしかない。
「ストームグリフォン……!」
ミナトが無意識に呟く。
鷲の頭に、獅子の胴。見間違えようのないグリフォンだった。
翼が一度、強く打ち下ろされる。
どん、と空気が押され、草が一斉に伏せた。
その拍子に、羽の縁で火花が散る。
ほんの一瞬の光だったが、乾いた音が耳に残った。
グリフォンは高度を落とし、地面すれすれを滑るように飛ぶ。こちらの様子をうかがうように、円を描いている。
やがて、その動きが止まった。
そして、ゆっくりと降りてくる。
土がわずかに沈み、遅れて空気がぴりっと震えた。
「グギャャーーーッ!」
ストームグリフォンが咆哮を上げると周りに小規模な雷が落ちた。
「まったく、派手な登場だな」
「派手な方がボス戦って感じがするじゃない」
軽口を言いつつもライアンとリアはストームグリフォンの挙動にいつでも反応できるように視線を外さない。
「初手は、一旦様子見でリア頼んでいい?」
「当然よ!一撃で終わせっちゃっても文句言わないでよ?光矢!」
リアが杖の先端をストームグリフォンに向けて呪文を唱えると、先端から光の矢が高速で放たれた。
パシュンッ
光の矢はストームグリフォンの顔面に炸裂したが、ダメージとしては顔面の毛を少し焦がした程度でダメージは無さそうだ。
「まあ、そうだろうな。いくぞ!」
ライアンは予想していたと言わんばかりに、リアの攻撃の後、紅煌刀を肩に抱えてストームグリフォンに詰め寄る。
「ちょっと!それどう言う意味よ!武威昂揚ッ」
リアも文句を言いつつライアンにバフをかける。
続けてミナトに敏捷系のバフ魔法である加速輪かけた。
ミナトは突撃するライアンの影に隠れるように背後を追走する。
ストームグリフォンは向かってくるライアンに対抗するように右前足を大きく振り上げる。
鋭い爪が剥き出しになった攻撃喰らえばひとたまりもないだろう。
「おらぁあ!!」
ガキィインッ!
ライアンの振り下ろしとストームグリフォンの前足が交差した。ライアンの腕に紅煌刀から衝撃が伝わってくる。
「っと!まさか弾かれるとはな!」
その反動でライアンが2〜3歩後退した。
紅煌刀にその衝撃の一部がチャージされた為か、紅煌刀の脈動が活発になる。
ストームグリフォンも前足を弾かれ少し体勢をくずした。
「もらった!」
ライアンと入れ替わる様にミナトがライアンの影から現れ、ストームグリフォンに切りかかる。
ミナトの霞刀が首筋の部分に浅く切り傷を刻む。
「羽毛に邪魔されて刃が深く入らなかった」
ミナトがバックステップでライアンのところまで下がる。
「流石に、そう簡単にはいかねえか」
その時、ストームグリフォンの嘴が青白く光を纏いはじめる。
「なんだ?」
ライアンが注意深く観察する。
その突如、ライアンとミナトの足元がストームグリフォンの嘴と同じ様に青白く光る。
「ライアン!飛べ!」
ミナトがいち早く異変に気づき、飛び退きながらライアンに叫ぶ。
「ぐぁぁああ!」
その瞬間、ライアンの足元とミナトが元いた場所に雷が落ち、その内1つがライアンに直撃する。
「リア、頼む!」
ミナトがそう叫ぶ前にすでにリアは詠唱に入っていた。
「大いなる光の源よ、命を司る慈しみの力よ。傷つき焼けこげし肉体に安らぎを、失われし活力に再生を与えたまえ――ヒール」
リアの杖から温かい光がライアンへと飛んでいき、ライアンの傷を癒していく。
ストームグリフォンはミナトに向き直ると、その大きな翼に魔力を込め、一度大きく羽ばたいた。
すると、そこから風の刃がいくつも生まれ、その不可視の攻撃が一気にミナトに襲いかかる。
「くっ……」
ミナトは霞刀で致命傷を避けるように構えるが、腕や脚など庇いきれなかった部分に浅くない傷を負った。
「待ってて!今すぐ回復させるわ!」
「大丈夫!ポーションがあるから!」
ミナトはポーチからポーションを素早く取り出すと一気に飲み干した。
ライアンはまだ回復が終わってないようだ。
ミナトはそれを確認すると、ヘイトを買うためにストームグリフォンに距離を詰める。
ストームグリフォンは再度ミナトに風の刃を放つが、モーションを読んで左に大きく飛ぶことで被弾を回避した。
そして、距離が近づくと、ミナトは先ほど傷をつけた首筋を狙って霞刀を振り抜く。
たが、それはグリフォンの強靭な前足で塞がれて失敗に終わる。
「グギャーーッ!」
そして反撃とばかりにミナトに向かって連続で雷を落とすが、ミナトはそれを全てバックステップを踏みながら回避する。
だが、距離を取ったところでまた不可視の風の刃が放たれる。
数ヶ所また傷を負うが致命傷には至らないと判断し、
ここでは回復を行わなかった。
「遠近ともに隙がないね……」
「さすがと言ったところかしら」
リアの声にいつのまにかリアの位置まで戻っていたことに内心驚くミナト。
「すまねえ、反応が遅れちまった」
そこに回復が終わったライアンも合流することで、立ち位置が振り出しに戻った。
「まあこれで、相手の手札も大体分かってきたということでここから第二幕としましょう!」
リアがニヤッと笑いながら言った。
「なにか考えがあるの?」
「考え?そんなのないわ。いつも通りやれば勝てるでしょ?」
リアのいつも通りの強気な言い分にライアンとミナトは自分たちがちょっと弱気になっていたことに気づき、苦笑いする。
「それもそうだ」
ライアンが紅煌刀を担ぎ直す。その刀身にはチャージが溜まっていることをアピールするように赤い脈動が存在感を放っていた。
「『いつも通り』、ライアンが受けて僕が隙をつく。そしてリアがサポート。これで行こう!」
リーダー(ミナト)の言葉にライアンとリアが頷く。
ボス戦はまだ始まったばかりだ。




