第四話【煩悩】
太陽が顔を出し上昇した気温は植物に朝露をもたらし煌びやかに光を反射させる。
本当に異世界に来たんだ、そんな実感を感じながらめいっぱい新鮮な空気を肺に取り込む。
一行は慣れた手つきで出発の支度を済ませるとアルラハマに向けて歩き出した。セオが一人で放浪していた間も方角的には合っていたようでそれなりに近くまで来ていた。
二時間程度歩いたところでアルラハマが見えてきた。
アルラハマは約一キロにも及ぶ六角形の城壁に囲まれた城塞都市であり、その内部は城館と城下町の二つのエリアに別れている。
領土の約八割りを占める城下町は城館を中心に蜘蛛の巣状に広がり、大通りには出店などが多く出店され人で賑わっている。
行き交う人々は商人や農夫、治安を守る騎士といった人々が大半だ。装いや顔立ちこそ違えど同じ人間である、しかしひと際目を引く者たちがいる。
獣人の存在だ。
彼らは魔族といい魔獣の血が混じった人々らしい。この世界では当たり前の存在らしく質問しただけで田舎者扱いされてしまった。実際異世界から来ているのだから田舎どころの話ではないのだけれど。
偏に獣人といっても人に獣の耳や尻尾がついたものや、人型の獣とも言えるものなど種類や獣の割合まで多種多様だ。
本物のケモミミたちを前に目を輝かせているとアルフレッドが少し引いた様子で話しかけてきた。
「お前この後どうするんだ、あの様子じゃ文無しだろう?この街にはちょうど俺が世話になってた人がいてな、ちょうど人手を欲してるらしいんだがどうだ?」
確かに現状所持金もなかれば仕事もない、この街に知り合いがいるかもわからない。
ここで断れば一人に逆戻りだ、しかしアルフレッドの知り合いというのが気がかりだ。
彼が勇者と何らかの敵対関係にあるのは間違いない、だとすればその知り合いも同様に敵対している可能性が高い。
リスクは避けて通るべきだ。
「アイツも行くからちょうどいいんじゃないか?」
アルフレッドが指さす先には軍服白髪の少女がいた。
「行きます。是非行かせてください」