謎のご褒美
降りて来た階段が現れ、同時に更に降りる階段も現れた。東の空に、細い月が昇ってきたのでそろそろ朝だろう。どこでどう撮影しているのかは解ら無いが、呼び掛けてみる、
「実花さん、この階層はクリアしました!もう降りてきて大丈夫ですよ!」
しばらくして、2人が降りて来た。
「多分次が、最下層でお宝が待ってるかもしれません、一緒に行きますか?」
「はい、是非とも!」
ノリノリの実花と、しぶしぶの恒夫。
「クリア報酬を私も貰うなんて恐れ多いです、ここで・・・」
「折角ですから、ご一緒しましょ!」
舞愛が手を引いて階段を降りた。
次の階層は、予想通り最下層で、前回同様、巻き物が有り、紐解いた瞬間は何か書いてあったが、読む間を与えず消えてしまう。実花と恒夫は、身体の中に何かのエネルギーを感じたと言うが、舞愛達にはさっぱり解らなかった。
巻き物自体も消えると転送の魔法陣が現れ鑑定すると、ダンジョン外の小屋に転移出来る様だ全員で陣内に入り、魔力を込めると一瞬で地上の小屋に戻った。
「あれ?」
恒夫が辺りを見回して首を、傾げた。納得した様子ではないが、
「僕等の後で誰かここに入った様に思ったんですが、きっと気のせいです、結界とロックで厳重に管理していますからね・・・ん?」
「何か有りました?」
舞愛は、探し物が何かも分からずに、何となく探してみた。
「えっと、誰かが入ったのは、気のせいだと思ったんですが、転移の魔法陣が無くなっているんです、今月はもう一度使える筈なんですよ。誰かが勝手に入って、転移したって考えると辻褄が合います。」
恒夫は苦虫を噛み潰したような顔で考え込む様子だった。
「あのぅ、多分、まだ下層の映像出せますよ、いつまで出来るか分からないですけど。」
実花は水晶珠を出して、54階層の魔法陣を映し出した。
「下層に降りたみたいですね、扉が開けっ放しです。次に切り替えます。」
場面が変わると、草むらで大勢の冒険者達が、剣士の魔物と戦っていた。転がっているのは防具は二組、冒険者は十数人、剣士の魔物は舞愛達の時と同じ様に、ドンドン湧き出ている。攻めはゆっくりだが、確実に押している。様子を確かめながら恒夫は、
「顔がハッキリ見えないので、確実では有りませんが、富美男の一派でしょうね、ただ富美男本人が居ませんね、あと、魔法系の人も!」
「次に進んだんじゃありません?森を映しますね!」
結界の迷路に挑んでいたのは、富美男と取巻きの魔法系冒険者達。魔法で、迷路の壁は認識出来るが、その迷路を解かなければならない。
なんとか迷路をクリアしたが、魔法系冒険者7人中、4人が魔力枯渇で倒れ、残ったのは富美男とポーターを含め5人。
「ヒールします、あと、回復剤を飲めば歩ける様にはなりますんで、少しお待ち下さい。」
「いや、この次は岩山を登るんだ、そんなの足手まといだろ?捨てておけ。」
「こんな暑さでは、死んでしまいますよ!」
「じゃあ、コイツらと心中すりゃいいさ、俺は先に行くぜ!」
結局、倒れた4人を見捨てて岩山に挑む。寒暖差を魔法でなんとか防いで岩山を越えるが、残りの魔法系も魔力枯渇。富美男はポーターと2人で先に進んだ。
「次は、ラスボスだがな、すぐには戻んねぇんだ、今なら苦労無しで、お宝の間に降りれるってコトだぜ!」
富美男は勇んで石畳の道を進んだが、
「なんだ?デカいのが突っ込んで来るぞ!」
大型トラック程のイノシシが2人を目掛けで突進。ポーターを囮に、富美男はヒラリと身を躱す。ポーターは弾き飛ばされ、視界から外れてしまった。その隙に階段を降りようと猛ダッシュしたが、視界が広がった石畳のエリアには降りる階段も降りて来た階段も無かった。隠れる物が無い状態で戦うしか選択肢は無い。
ここまで、手下を踏み台に生き残った富美男ではあるが、流石は実力者、真っ直ぐだけの猪突猛進を避けて、カウンターを狙う。何度と繰り返し、タイミングを掴んだので、ギリギリまで引き寄せ、躱しながら斬・・・ろうとしたが、寸前に猛烈な鼻息で吹き飛ばされた。
着地したのは石畳の小路、なんとか起き上がるが、手足の数カ所、アバラの2、3本目は折れているだろう。取り敢えず、イノシシとは逆に進んでみる。数分で痛みに耐えきれず進めなくなり、蹲ったまま眠ってしまった。
イノシシに飛ばされたポーターは岩山に着地、あちこち打撲していたが、回復剤でなんとか普通に歩ける迄に回復した。辺りを見渡すと、さっき見捨てた仲間が1人、近付くと3人分の衣類や杖が並ぶようにして落ちていた。回復剤を口に流し込むと気が付いて、
「ここで死んだら、塵みたいになって服とかだけがさ、こうなるんだ。」
並んだ衣類は、亡くなった時のままらしい。衣類や持ち物を纏めて埋め杖を立てて墓にして、来た方に向かった。険しかった筈の山道ではなく、平坦な道を数分歩くと森になり、同じ様に仲間を1人見つけ、回復と弔い。迷路の森も、真っ直ぐに数分で草むらに出た。ここには生存者は居らず、防具を纏めて埋め剣を立てて墓にした。1人分足りないが、探せなかった。
「もしかすると、帰り道はスルーなんじゃ無いかな?山道や迷路は偶々かもしれないけど、防具のバケモノって無限にいたでしょ?その気になりゃ俺達なんて一捻りじゃん。」
「そう言われて見るとさ、ラスボスのイノシシも、追い出した感じ?その気になりゃ瞬殺だと思うんだよね。」
とにかく帰る事だけ考える事にして、携行食で残りの食料と回復剤は各自のポケットに、入らない分は供物として墓に供え石畳を目指した。
小路が石畳になると、粗末な防具の、仲間が倒れていた。慌てて回復剤を飲ませると、
「戦闘が始まって直ぐに吹き飛ばされちまって、気を失っていたみたいなんだ、足をやられて、ここにいたらさ、腹が減って、また気を失ってたみたいなんだ・・・」
強烈な腹の虫が鳴り、3人のポケットは空になった。




