ライブ配信?
人目を避けて、夕食を買って宿に戻り。装備屋の時間に合わせて宿を出た。
「もしかして、冒険者に絡まれました?」
「ええ、いつもの事なんですけど。」
「紫峰義には、冒険者って居なかったんですよ。王国で冒険者さんがする事って、皆んな軍がしていたんです。本国ならギルドが管理していると聞きますが、ココではギルドは余り機能していなくって、冒険者じゃ無く暴険者って呼んでるんですよ、音は同じですけどね。」
宿屋のお姉さんは、冒険者の横暴を愚痴っていた。元々紫峰義の戦力はテイマーと魔物がメインだったが、羅峰寺との戦いでティム部隊は崩壊、代わりに治安維持を受け持つのは北都と旧大熊領から来た騎士隊だったが、解凍地区の魔物だの盗賊の類等に戦力を割かれ、冒険者がその穴を埋めるカタチになっている。
その冒険者達は、チカラがあるものがエライと思う輩が大勢を占めている。魔物の育成施設を破壊されてしまい、大半はその時に命を落としたが、生き残りが野生化して、ふつうの野良魔物と同様に人や家畜、畑を襲うので、冒険者に頼らなければ生活が成り立たない。そんな状態なので、街は我が物と、ナンパは、セクハラの域を越えてほぼ性犯罪。若い女性は、自宅でひっそりと暮らす事を余儀なくされているとの事。
舞愛は、装備屋でもギルドの様子を探ったが、宿で聞いた事に間違いも誇張も無いようだった。
忘れ掛けていた本題の、人型対応の首輪は、いくつかデザインが用意されていて、本人達の希望でアッサリと決定。舞愛は人型の時の露出が多過ぎるので、犬の時も服を着るタイプを推したが、2人共即答で拒否されてしまった。決まったデザインでオーダー、4日で完成なので、しばらくここのギルドで依頼を請けて見ることにした。
「そうそう、コレ使えそうかな?」
如何にもワケありって感じの短剣が4振。人型の時に良さそうだが、なにか微妙な勧め方だった。
「両手に持って魔力を込めてみて!」
糸と蘭の両手で短剣が紫に鈍く光ると、
「良かった!やっと使い手に巡り会えた!コレね、伝説の三つ首魔犬の牙から打ち出したと言われている剣なの!魔力の強い人は普通、持つ事も出来ないのよ!」
舞愛が試しても、あきらかに拒まれている事が解り、魔力を込めても拡散するだけだが、糸と蘭はあっという間に使い熟した。舞愛が値段を尋ねると、
「あぁ、お代なんて要らないよ。今、商売出来てるのはプレアデスのお陰だからね!大体、ここに有っても宝の持ち腐れだし!」
ギルドを訪れると、転移して来た頃を彷彿とさせるアナーキーな雰囲気。声を描けるより先に手が出て、糸の肩に回そうとした男が、バチリと感電、気を失う程にはしていなかったので、
「この、雌餓鬼!ちょっと可愛いからって調子に乗ってんじゃねぇ!」
掴みかかるが、触れる直前で弾かれる。
「あら?失礼ね!いつもは凄く可愛いって言われるの。ちょっとなんて初めて言われたわ!」
何事も無かったように受付に向かう、流石にもう邪魔は入らず、3人の進む先には余裕で歩ける空間が出来ていた。
カウンターには受付嬢ならぬ受付爺(?)、退役軍人風の男性。
「おや、本国の冒険者だね、ココでは女の子は働き辛いよ、長居はお勧め出来んなぁ。」
「しばらく、ココでお世話になります、日帰りの依頼があれば見せて下さる?」
「生憎、Fランクの依頼は、若いモンが持って行っちゃいました、コチラなんて如何でしょう?」
Cランク以上の縛りが有り、Fランク3人の臨時メンバーでは、通常請けられない。
『届いてますか、昴さん。』
受付爺からの念話を舞愛が受け取った。
『ええ、でも僕が昴だって良く気が付きましたね!』
『魔力を上に詐称する人は大勢いますが、逆なんて滅多に見ませんからね、ココを仕切ってる冒険者がCランクなんですが、この依頼ずっと避けてるんです、貴方が片付けてくれると、ヤツの面目が丸潰れになると思うんですよ、是非お願いします!ギャフンと言わせる計画も有りますから。』
舞愛は、当然そのやり取りは無かった事にして、
「分かりました、コチラ請けさせて頂きます。」
「ありがとう、ついでにお願いなんですが、一緒に連れて行って欲しい娘が居るのです。」
ギャフンと言わせるネタだろうと快諾、早速ダンジョンに向った。
同行する事になった実花と言う女性は、映像を転送するスキルがあり、元の世界で言う所のライブ配信の様な事が出来る、
「都合が悪い事は流しませんから安心して下さい。」
「着替えとかは困りますけど、探索や戦闘の様子はなるべくそのまま流してください、受付のおじいちゃんもそのつもりだと思いますよ。」
「あ、ギルマスですね、そうなんです!実はギルドの正常化の為に北都から派遣されて来たんですけど、富美男ってCランクのヤツが実質仕切っていて、今のところ手詰まりだったんです、三将が解凍地区から戻る迄は我慢しか無いって殆ど諦めてたんですよ。」
ダンジョンに到着、早速攻略開始。
「もう3階層ですが、魔物は全く出て来ませんね?」
「私達が殺気を放っているので寄って来ないだけですよ、切ってみますね!」
「あ!ちょ、ちょっと待っ・・・」
実花の心の準備が出来ていないうちに、魔物達が飛び掛かって来た、糸と蘭は、新しく手に入れた短剣の具合を確かめながら、サクサクと斬り伏せていった。
「戦闘シーンの方が良かったらこのまま進むけど・・・」
「い、いえ、その、なるべく穏便にお願いします。」
「じゃあ、少し休憩しましょう、魔石を回収するので休んでいて下さい。」




