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人犬兼用

 その頃、受付のホールではカウンターの近くから数メートルの床が倒れた冒険者で覆われていた。その外側には膝をついて震える物、直立不動で虚ろな目をしている者。誰も一言も発せず、ホールはしんと静まっていた。

 舞愛と受付嬢が戻ると、

「申請書はコレで良いですか?」

蘭が書類を差し出した。

「あ、ハイ・・・では、コチラで魔力測定します。」

2人ともFランクに抑え、直ぐにバッヂを貰って直接出発した。


「ホールの人達どうしてノビてたの?」

「「あれね?」」


ちょっと前のギルド。

「なぁ、お嬢ちゃん、冒険者より楽しく稼いだ方がいいぜ!お互い気持ち良くなって、お嬢ちゃんはお金儲け出来るんだ、ひと晩大銀1つでどうだ?」

「ケチは引っ込んでろ、ソレじゃ休憩だよな、俺は2つ出すぜ!」

「俺は3つ!」

「5つでどうだ?」

ちょっと高ランクらしい男が

「俺のパーティーに入れてやる、冒険者になりたいんだろ?月に小金貨3枚だ。」

そう言いながら、2人を抱き寄せようと背中に手を回すと、

「グヘッ!」

バタリと倒れると、そこを中心に半径数メートルの冒険者達が失神、床を埋め尽くしてしまった。


「ふーん、まぁ、自業自得ね、それなら直ぐに目を覚ますわね。次からは少しは面倒が減る筈よ!」

舞愛は、想定内だったので、そのまま魔動車を走らせていた。

 魔動車は相変わらず、盗賊やナンパの類から敬遠され、糸と蘭が、ギルドで放った殺気を軽く拡散しているので、魔物も寄って来ない。快適なドライブで順調に北上した。


 魔動車を降りると、ナンパが面倒なので、なるべく人気の無いキャンプスペースに泊まり、弁当も用意して、ランチは車中、無事に旧紫峰義に到着、お目当ての魔物装備屋に直行した。

「おや?お嬢様方、ここは魔物向けの装備屋ですよ。」

「はい、その件でご相談を。」

店員のオバさ・・・いや、お姉さんが首を傾げた。舞愛が2人に

「小さいワンちゃんになって!」

2人がスルリと2匹になって、タンクトップからヒョッコリ顔を出すと、

「あぁ、あの時の!可愛いワンちゃんは人間の女の子になっても可愛いのね!」

ちょっと首を傾げながら、

「そうね、そこで人型になったら、まっぱなのでお困りと言う事ですね?」

服や下着を拾いながら、

「人型になった時の採寸が必要ね、奥に来てね!変身はアッチでね!」

しばらくすると、糸と蘭になって戻って来た。

「人型でも子供になったり大人になったり出来るの話した?」

2人が頷くと、

「かなり難しいオーダーね、うちの人に相談してみるわ、明日の午後また来て頂けます?」

「はい、お願いします!」

 どんな服が出来るのは分からないとの事で、職人の旦那さんと相談してくれるそうだ、


 宿に泊まって久しぶりの入浴。焼け野原からの復興なので、新しい建物。最初から各部屋に風呂があるので、人目を気にせずに入れる。大浴場と比べ、覗きのリスクはかなり小さいだろう。

 2人が脱いでも舞愛は無駄に罪悪感を抱いたり、幼女モードの時には必要無かった下着を外しても興奮したりはせずにリラックスしたまま入浴を堪能した。2人はいつの間にか、幼女モード。

「もしかして、気持ち良くなって戻っちゃった?」

楽は首を振って、

「ううん、お風呂で洗って貰う時だったら丁度良いかと思って!」

糸はにっこり笑い、

「上がったら大人になろうか?」

「いや、舞愛のベッドで寝るんでしょ?小さい方が狭くないでしょ?そのままが良いわ。そうそう、舞愛も変身しなきゃ!このままじゃ、ナンパとか煩わし過ぎるから!」

「駄目よ、長生き出来ないと困るんだから!」

長命種の魔物も取り込んでいるので、寿命は人間よりも長いかもしれない、舞愛が早死にして、取り残されるのを憂いてお強請り目線で舞愛の変身を阻止した。

 水切りの魔法も覚え、ベッドに移動。幼女モードの2人なので、その後のお楽しみはお預けで、おとなしく眠りについた。


 朝は、早い時間に食事を済ませ、食堂の騒ぎを回避。復興の様子を見学しながら、時間を潰した。昼も早めに、屋台で美味しそうなものを漁って、公園で遠足気分で味わった。まだ、装備屋に行くには早過ぎるので、北の涼しい夏を楽しもうと、結界を緩めて、陽射しや風を感じていると、

「なんだ?結界が解けたと思ったら、お嬢様達じゃねぇか?」

緩んだ結界を破って、冒険者らしい5人組の男達が寄って来た。バッヂを見ると1人がCであとはEランク。

「見ない顔だな。」

「ええ、北都の登録です。」

「どうした、北都で食いっぱぐれたか?Fランクじゃしゃあねぇか、仕事無いんだろ、俺等とダンジョン潜ろうぜ、旨いもん喰わせてやるし、夜も楽しませっからよぅ!」

「「却下!」」

糸と蘭が揃って親指を下に向けた。

「あんね、オジサン、私達はお金が無くて食堂で食べなかったんじゃなくてね、あんた達みたいなのに会わない様にココで食べてたの。」

蘭がキッパリと断ると、

「なにぃ!調子に乗りやがって!」

糸に掴みかかろうとしたが、アッサリ躱され、ゴロゴロ転がって坂の下にある池にボチャッ!

「ココならお店に迷惑掛からないでしょ?」

「ち、畜生!」

残った4人が剣を抜くと、2人はササッと動いたと思ったら、4振の剣は根元から折れ、柄だけになっていた。

「あと、御用がなければ、私達はこれで。」

車道迄歩いて、ポーチから携帯車庫を出し、シャッターを上げて魔動車を出すと、池から戻ったCランクが追いかけようとしていたが、途中で膝をついて断念、軽快に去っていく魔動車を、悔しそうに見送っていた。

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