盗賊狩りの美少女パーティー
次の街で洋服と装備を調達。洋服は3人とユニフォームの様なスタイルで直ぐに決まったが、装備品は王都に比べかなり高かったのでチェックだけで古道具屋も覗いた。
「これが良いわ!お金貸して頂戴。」
「気にあったのがあれば言ってよ、必要経費でしょ?無限に払える訳じゃ無いけどね。」
色々物色したが最初の杖以外には興味を示さなかった。
「ガッハッハ!ソレはなぁ、かなりのベテランじゃないと使い熟せないぞ、お嬢ちゃんなら物干し竿にするしかないだろうな。」
年輩の店主はバカにしたように大笑い。
「あら?使い熟したら、タダで頂けます?」
「ああ!いいぞ、何か面白い魔法を頼む。」
「では、この杖の先に髪を生やしましょう。」
「おう、やってみろ。」
ひとみは、短い詠唱のあと、軽く床を突いて、杖の先を天井に向けた。
「ウワッ!」
店主は両手で頭を抑えていたが、地毛だと思っていたヅラが中に浮き、フワリと杖の先に覆い被さった。」
「じゃあ、これ、頂いて行きますね。買い取る時は、盗品かどうか確かめる事ね!」
奪われた杖を取り戻し、気に入らない店主に意地悪をして、満足そうな微笑みで店を後にした。
ひとみは自分の身の回りが落ち着くと、メンバー達を鑑定した。
「凄いパワーと防御ね、頼もしいわ。」
「あたし、ソレだけが取り柄なんです。攻撃となると、殴る位しか出来ないので、強い魔物とか相手にどうしたら良いのか解らないんですよ。」
「そうね、貴女、水系の素質持っているわ、カチカチに凍らせていたガチャンと砕くって如何かしら?」
「あたしにそんな事出来るかしら?」
「魔力が強いから少し練習すれば、そう難しくも無い筈よ!」
ひとみは裕子の手を握ると、魔力の流れがスムーズになるような魔法を掛け、練習の方法を説明した。
圭織は火と風。剣に纏わせ斬れ味を飛躍的に向上させる術を取得。熟練すれば魔力だけを刃にして飛ばす事も出来るそうだ。
真理は結界のバリエーションを増やす。単純に外から隠れたり、防御するだけに留まらず、敵を拘束したり、罠を張ったり出来るようにトレーニング。
通常、新しい系統の魔法の取得はムリと思われているが、裕子と圭織は、本人も気付いていなかったが、それぞれ適性を持っていたので、ひとみが少しきっかけを作るとアッサリと取得。真理も他の適性がありそうな感じだが、今のところ、ひとみが見ても判断出来ない。まぁそのうちと言う事で、得意系統の深堀り。
精度や安定性に欠けるので、途中、魔物の駆除で経験を積む、まぁ実用に支障の無い程度迄習得した。
街道を進むと、女性の御者は珍しく、ナンパが後を絶たない。昴は自分が代わろうと、馬の扱いを、習おうとしたが、
「昴は雇主なんだから、中で寛いでいてくれ。いつまでも世話になってばかりも心苦しいからな。」
少し走ると、馬車が2台猛スピードで追い抜いて?いや1台が追い抜くと、次の馬車はピッタリ並んで幅寄せ、真後ろには3台目。左は崖なので、前後左右詰まってしまった。
「思っていたより、喰い付き悪かったわね。」
ひとみが目配せすると、真理が馬車を降りた、
「落ち着いてイメージすると良いわ。」
真理が頷いて詠唱を始めた頃には、盗賊の類だろう、如何にもアウトローな連中が、3台の馬車から降り、昴達の馬車を囲んでいた。
詠唱が終わった時には、全員が身動き取れない。
「結界って、こんな使い方もあるのよ、次は裕子ね!」
ひとみは裕子に指示、大きな盾を大きなハンマーで叩いた。盾はグシャリとひしゃげたが、
「腕力だけじゃそんな感じでしょ?さっき説明したように凍らせてみて!」
習った魔法を試す。真冬の寒さをイメージし、盾に手を翳し、魔力を込めた。
「あ、出来た!それから、こうね!」
再びハンマーが炸裂、今度は粉々に砕けていた。
続いて圭織が剣に炎魔法を纏わせる実験で盾を溶断したり、真理は結界で拘束した賊を更に締め上げる練習、
「殿方は大抵嫌がりますわ。」
ひとみが手本で、髪を焼いたり、股間を冷凍したり、拷問のスキルを伝授。一通りの実験と練習を済ませると、恐怖のドン底で震えていたボスらしい男の拘束を、会話が出来るまで緩めた。これもひとみのアドバイスを受けながら、真理はあっさりとクリア。もっとあっさりだったのは、ボスへの尋問。一を聞くと十を答える勢いで、アジトや余罪、バックにいる貴族まで、洗い浚い喋った。騎士団で取り調べの経験が有る圭織が報告書に纏めて、次の街の騎士団に突き出した。
捕まえた盗賊の主要メンバーは、懸賞金が掛かっていて、全員で小金貨5枚、所持金は微々たるモノだが、盗難届けに該当しない所持品、武器や防具を処分、盗難届けが出ている馬車と馬は、礼金が出て、全て合わせると大金貨2枚を軽く超える位になった、
「元々こう言うルールなんだ。ボク達は、盗賊討伐の依頼を納品済みで成果にして貰うんで、コレは昴が貰う金だ。」
「いや、僕は、見てただけだし、働いていた本人が貰うべきだろ?」
「奴隷から解放してもらって、怪我も治して貰ったんだ、色々買って貰ってるし、まだ足りない位だろう。この先もまた襲われる筈だから、まぁある程度の御礼になる筈だ。」
4人に押し切られ、昴が受け取った。
南の港町まで、日に一度は襲われ、サクっと返り討ち、小規模だったので、大金貨になるかならないか程度だが、昴の革袋はパンパンで松風を売った時を超えていた。
戦い方というか、捕らえて尋問を済ます迄、とてもスムーズに熟していた。