魔法陣
その頃、ダンジョンの出入り口が見える茂みには結界で身を隠した男達が、舞愛達の様子を覗っていた。
「上手く最下層の鬼を呼べたんだ、小娘が何が出来るって言うんだ?」
「念の為、もうしばらく観察しよう、朝まで待って出てこなければ、鬼が勝ったと言う事で、俺等のミッションはクリアとしよう。そこだったらダンジョンからは死角だテントを張っておけ。」
指示しているのは貴族のお坊ちゃま風、子分的なのは冒険者風だが、実力不足で引退した、若しくは引退しそうな2人だった。
舞愛達が出て来て、一旦結界に隠れ、もう一度見えた時には、テントが出来上がっていた。
「結構な上玉じゃねぇか、高く売れそうだな!」
「売る前に摘み食いだろ?なぁ若さん!」
「いや、逃げよう!あの結界は罠だ、最下層の緑鬼を倒したんだ!最低でも全員Bランク以上だろう、お前らじゃ敵いっこないぞ!」
2人は不服そうに、
「俺等、結界とか分かんねぇしな、まぁ、6階層まで行ったんだから、ノルマは達成だよな?後払い分の大銀5つ貰って街で買うかぁ。」
お坊ちゃま風の男は革袋から銀貨を取り出して、良く喋る方の男に手渡した。
「ほんじゃ!俺等はこれで!」
2人は街に向かって歩き出した。
茂みに残った男はそのままテントの監視を続けた。
「なぁ、あの坊っちゃん、怖がり過ぎだよな、あんな駆け出し、どうせFだって!こっそり戻って頂いちゃおうぜ!」
「あぁ、俺もそう思う!だいたい、アイツ偉そうなんだよな!カネ持ってるからって!」
2人は、舞愛達のテントに舵を切り直した。
「やっぱりアイツら、戻って来たか!」
茂みに残っていた男は、それを想定して荷物を纏めていた。2人の様子、と言うより、最下層の緑鬼を倒した(と、思われる)女子パーティーが、夜這いをどう撃退するのか興味があったが、明日は我が身。丁度あと数時間で明日なので、下手をすると、ブザマに返り討ちにあった2人の火の粉を被る事になりかねない。観戦は諦めて闇に紛れた。
さて、見張りの交代の時間。大きな欠伸と共に舞愛が目を覚ました。
「その様子じゃ3人でずっと起きてたでしょ?」
3人が頷くと、
「もう心配無いから、安心して休んで。」
3人が寝袋に入ったのを確認してテントを出た。焚き火に薪を追加して周囲を見渡した。
「あれ?2人ね?でも魔法陣の術師じゃ無いわね、うーん、2人ともEってとこね。」
ボソボソと呟きながら、外の結界を解いて、テントに隠れた。
焚き火を目指してやって来た2人は、コッソリと2張のテントを覗く。それぞれ2人寝ている様に見えているので、
「コレで2人ずつな、あとで交換しような。」
「おう、逃がすなよ。」
奴隷の首輪を両手に、テントに入り、女性の寝姿に見える藁の束に奴隷の首輪を掛けた。
『コラ人間、儂の嫁に何をするんだ!』
隣りに寝ていたのは、一番凶悪とされる黒鬼の雄、ムクムクと巨大化し夜這い男は胴体を鷲掴みにされ、そのままバキバキと聞いた事の無い音と、感じたことの無い痛みで気を失ってしまった。
朝になって、朝食前に2人を尋問。トラップで見せた鬼の悪夢が効き過ぎて、なかなか思うように会話が成り立たなかった。一応冒険者で、ダンジョン6階層迄の案内と言う依頼でここに来たとのこと。
「ここまで歩いて来た訳ないでしょ?」
「いや、大体ここってそんなに、街から離れてるのか?」
「馬車で1時間以上よ、歩けば4、5時間ね。」
「そんな筈ねぇ!俺ら速く走る魔法掛けられて、30分も掛かっとらん。」
取り敢えず嘘では無いらしく、馬車より速く走る魔法と、ダンジョンの最下層から魔物を呼び出す事が出来る男が主犯格、捕まえた2人は、ダンジョン内で作業する為の護衛で6階層迄潜り、地上に戻る迄がノルマで、目的や魔法陣の事などは全く知らされておらず、主犯格の男の事も、若くて偉そうな、貴族のお坊ちゃま風の男としか覚えていない。人相も体格も視覚偽装しているようで、有効な証言は一つも無かった。
ダンジョンの崩壊や、冒険者の命に関わる問題なので、ギルドに突き出すのだが、本人達の馬車が無いので、移送方法が思い浮かばない。拘束して魔動車に同乗する気にはならない。舞愛は記憶を辿って、ポーチに手を突っ込んだ。
「ああ!コレ!!」
携帯ガレージを取り出し、展開してガレージのシャッターを上げ、中から荷馬車?魔物を生け捕りにした時に使う鉄格子付きの荷馬車を取り出した。雷土魔法で改めておとなしくしてから荷馬車・・・その前に浄化。冒険者ならギルドの風呂に入れるのである程度は清潔な生活をしているが、殆ど稼いでいなかった様で、いつ入浴したか解ら無い位に臭っていた。
魔動車に荷馬車を連結。キャンピングカーの出で立ちで街に戻る。長くなって、小回りが効かなくなるが、道路交通法のような物が存在しないなので、街道も問題無い。
街に戻ってギルドで手続き。捕まえた2人は、夜這い未遂で罰金大銀貨3枚ずつ、ランクがEからFに降格。ダンジョン内の魔法陣に関しては、主犯格が捕まるまで拘留との事。依頼の緑鬼のツノは金額ベースでノルマの40倍程あり当然クリア。魔石はギルドでは売らずに魔石商に持ち込む事にした。




