緑鬼
街に帰って、魔道具を見に商店街へ。複数の武器を持ち歩く収納魔具がお目当て。プレアデス正規メンバーの様にはいかないが、ウエストポーチでスーツケース程の容量なら、三姉妹の魔力でも問題ない物が結構出回っている。通常、価格が問題で手が出ないが、そこは伯爵令嬢。値札は気にせず、デザイン重視だった。
1個が大金貨1枚半、通常店頭で交渉して1、2割引き程度が相場なので、良くて1枚と小金貨2枚程度と予測して、
「3つ買うから、丁度になりませんか?」
と、切り出した。
「ああ、良いとも。他に入り用の物は無いかな?」
店主の反応が想定外で、
「ジャア、ソレデ、オネガイシマス!」
カタコトになって、商談成立。
店主は金の細いチェーンを見せると、
「最近、女性冒険者でコレが流行っているそうですよ、コレですと、普通のパンプスやスニーカーが防御機能が付いたブーツと同等の防具になるんですよ!足首に付けるんです。お試しになりませんか?」
舞愛の返事り待たずに、しゃがもうとする店主を、
「私が付けましょう。」
美奈が割って入り、結花と澪が店主から奪う様に取り上げ、舞愛の両足に装着した。
「素敵ね!お幾らかしら?」
「小金貨1枚でございます。」
「では、9組頂きましょう。」
美奈がグイグイ話しを進めるが、
「生憎、一点物なのです。現在品薄状態でして・・・」
「では、コチラ頂くわ。そのまま付けて行っても?」
「ええ、勿論!有り難うございます。」
美奈が支払いを済ませ、店を出た。
「ねぇ舞愛、ガード甘過ぎよ!」
珍しく強い口調の澪、
「・・・?」
舞愛はどう反応して良いのか解ら無い。
「こうやったらね・・・」
しゃがんで、アンクレット摘んで、視線を上げ、
「今日はブルーなのね!」
「あっ!ああ。」
慌ててスカートを抑えた。
「あのオジサン、店にいる間ずうっと、舞愛の脚ばっか見てたんだよ!」
「あ、ありがと、気を付けるね。」
更に結花も、
「昴さんの頃は、ミニに反応して姿勢を悪くしたり、階段で速度調整したりしなかったの?」
「ソレはない・・かな?つい二度見したりって位は自覚あったけど。」
「まあ、これからってコトね!忘れないように、アンクレットはしばらく外さないでね!」
美奈がトドメを刺した。
ギルドで、討伐系の依頼を物色、薬草よりは少し難易度を・・・と思うが、Dランク推奨の依頼しかなかった。実際にDだし、舞愛がサポートするので特に心配することも無いが、二の足を踏んだ。
「コレ如何かしら?」
心配しているのは舞愛だけだった。
「こりゃ女は駄目だ。」
普段は受付嬢が対応してくれるが、お休みなのか、如何にも冒険者上がりって感じの厳ついオジサンが、美奈が渡そうとした書類を突っ返した。
請けようとした依頼は、緑鬼の駆除。ファンタジーの定番・ゴブリンの様な魔物だ。人間よりやや小さく、肌はやや緑のグレー。ツノが2本、知能は犬にも届かないとされ、言葉は持たず、数種の鳴き声でコミュニケーションをとっているらしい。群れで生活している。数が増えると、人里を襲う事があるので、定期的に駆除する必要がある。
「おめぇら、緑鬼のガキを産む覚悟あんのか?あ?」
舞愛とオジサンが心配していたのは、戦闘経験の浅さもさることながら、緑鬼の習性を気にしていた。欲求は性欲に全振りした感じで、交尾相手が居れば、寝食を忘れ、餓死するまで腰を振り続けるそうだ。更には異種交配と言う性質があり、殆どの動物の雌を孕ませる事が出来、人間もその例に漏れないとの事。
「あら、舞愛ちゃん!」
いつもの受付嬢が戻り、
「プレアデスの新メンバーですよ、コレ位なら大丈夫ですよ!」
なんとか請ける事が出来た。
翌朝、と言うか深夜からもうすぐ朝と言うタイミングでダンジョンに向かう。早朝から潜り始めて午前のうちに目的の階層まで降り、緑鬼を狩る。
ほぼ緑鬼の巣の様なダンジョンで、現れるのは緑鬼ばかり。4階層までは数が少なく、7階層からは群れで行動するので、効率と安全から5階層が本日の舞台。途中、単独の緑鬼と3度遭遇、軽く蹴散らして5階層に降りた。
ここでもサクサクと片付け、30体駆除のミッションはクリアしてランチタイ厶。ポーチに食材や調理器具等、料理に必要な物は揃っているが、流石にダンジョンでは作る気にはならない。さっさと胃袋に詰め込んで、魔石を調べる。
魔石は魔物と強さに比例して大きくなり、緑鬼なら数ミリ程度、群れのリーダーや下層にいる階層のボスなどは2、3センチが期待できる。
「ねぇ、この色って・・・」
美奈が淡い紫の魔石を光に翳すと、
「お母様の瞳!」
伯爵夫人の瞳の色に良く似ていた。一つの群れの魔物達は、濃淡はあるがほぼ同じ色の魔石を持ち、今回の30個は4つだけ違う系統で、残りは、ほぼ同じ淡さだった、
「これ、沢山集めてネックレスに、しましょう!お母様のお土産に素敵だと思うの!」
売って儲ける気はサラサラないらしい。5階層を隈無く回って、80体程倒したが、ネックレスの素材としては、7割程度しか集まっていない。
「下の階層は如何かしら?」
舞愛は用心して、5階層で留める予定だったが、3人の戦いぶりを見て、
「じゃあ、6階層だけだよ!」
と、下層へのスロープを降りた。




