墓参り
「儂の部屋で飲み直そう。」
二人になると、エロジジイと娼婦の様で、絵面的にどうかとも思うが、三姉妹の記憶の事を聞く絶好のチャンス。
「グラスは3つ頼む。」
満にそう告げて部屋に移動した。
「よく僕だと気付きましたね。」
「ああ、あのワイン棚、貴殿にしか開けられないよう封印してあったからな。臣吾が帰ったら悔しがるだろうな、ハッハッハ!」
直ぐに満がワインを運んで来た。
「よし、一緒に飲もう!ミツさんも仕事終わりだ。」
「では、お言葉に甘えて。」
満も席に着いて乾杯した。
舞愛は三姉妹の希望を切り出すチャンスを窺い、体内のアルコールを浄化して、キャリアハイの3杯目を飲んでいた。
「所で、孫達はちゃんと勉強しているのかな?」
「はい、でも気になる事がある様で・・・」
敦也の喰い付きを確認し、
「消えた記憶の事を知りたがっています。」
敦也の表情が硬くなった。
「あの娘達の事を思っての事ですよね?思い出さない方が良いかもとは伝えてあります、そういう事なら僕も詳しくは聞きません。」
「・・・」
「それから、ちょっとした事故があり、ヒールで回復はしたのですが、記憶の操作が呪いなら解呪してしまったかも知れません。」
ネックレスの一件を伝えると、
「・・・先に伝えた方が良いだろう。」
養女になった経緯を話した。
時は遡り12年前。まだ敦也が現役だった頃、屋敷近くで花見がてら散歩を楽しんでいると、
「水瓶領主の伯爵様とお見受け致します。恐れ入りますがお命、頂戴致します。」
黒尽くめの鎧、十数人に囲まれてしまった。
昴やトーラスの活躍で治安維持が飛躍的に良くなり、市街地であれば、ほぼほぼ安全地帯、護衛は1人しか連れて居ない。万事休すと思ったが、鎧の賊達がバタバタと倒れていった。居合わせた冒険者達が背後から賊を斬り、あっという間に半減、更に数人が倒れると、
「コレでやっと頭数揃ったな、落ち着いて戦えるぜ。」
冒険者の1人が、賊のボスっぽい奴に挑んだ。それぞれマンツーマンで戦い、冒険者がかなり押していた、
「畜生、これまでか!よし、コレでどうだ!」
賊のボスは煙幕弾を地面に撃った。
「ただの目眩ましじゃなさそうです、煙を吸わない様に!」
女性冒険者は賊の剣を躱しながら浄化魔法で煙を消していく。何とかボスを捕らえ、他を屠った。
敦也は護衛の結界で守られ、被害無し。捕らえたボスを尋問しようとしたが、服毒自殺でバックにどんな者が蠢いているのかの調査ルートが断たれた。
「冒険者殿、ありがとう。命拾いをした。お礼がしたい、屋敷まで同行頂けるか?」
「それでしたら、冒険者ギルドに指名依頼をお願いします。私達、こう言う者です。」
ギルドのカードを見せた。結界で死体を隠し、
「回収は業者に依頼しますから、ココはもう心配ありません、護衛を増やした方が良いと思いますよ。では、私達はこれで。」
別の女性が道端の結界を解くと、3歳位だろうか、小さな女の子が3人、
「ちゃんと目、瞑ってたよ!怖くないよ!」
少し大きな子が2人の手を握って涙を浮かべていた。子供達は、それぞれの母親に向かって駆け寄ったが、
「「「「「「うっ!」」」」」」
6人の冒険者は、目、耳、鼻、口から血を噴き出して、バタリと倒れた。魔力を失い、結界が解けると、賊の死体からも血が噴き出ていた。
目の前で母親が、直ぐ側で父親が血を噴き出して倒れ、その周りにおびただしい死体が転がる血の海は、間違いなくトラウマになるだろうと、子供達の記憶を操作させて、子供が居なかった息子夫婦の養女として迎える事になった。
「そ、その冒険者って名前とか、パーティー名とか何か解りますか?」
「勿論、覚えているとも、アルデバランと言・・・」
「みなみ、結依、美音それから、貴浩、大輔、聡の6人?!」
「そ、そうだが、知り合いだったのか?」
転移から一緒のパーティーで活動していた事を話し、
「今回は、三姉妹の記憶の件が目的の一つだったのですが、彼等に会う事も楽しみにしてたんです。ずっと忙しくて、連絡していなかったからなぁ。」
「そういう事なら、何かの縁じゃ。父母達が昴殿に託したのであろう、明日は墓参りをしよう。孫達には儂から話そう。」
客間に戻った舞愛は、気を使わない個室だったが、ずっとお預けだった夜のお楽しみを思い浮かぶ事もなくじっと天井を見つめているうちに、カーテンの隙間から陽が差してきた。
「舞愛、朝よ!」
「おはよ、澪。ネックレスの後遺症は大丈夫?」
「うん、体調は平気よ。何か思い出しそうな気もするけど、モヤモヤしてね、そっちはあんまりかしら?」
食堂で美奈と結花の様子を聞いても、同じ様な感じだった。
「あんね、実は皆んなのご両親はもう亡くなっていてね、お祖父様がこれからお墓参りに連れて行ってくれるの。それから養女になった事や記憶の事、お話ししてくれるそうよ。」
「そうなの?じゃあ、黒のワンピかしら?」
「髪飾りも黒が良いわね!」
「舞愛、持ってる?」
意外と落ち込んだ様子は無かった。
玄関を出ると車寄せには、立派な馬車が停まっていた。
「敦也殿、これで共同墓地はちょっと!」
「ああ、大丈夫だ。」
少しだけ馬車に揺られて、到着したのは、貴族の御先祖様が眠る墓地。その中でも、伯爵家の血縁か、元の世界で言う国民栄誉賞的な人が眠るエリアに6人の墓があった。




