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水瓶宮

 食後のお茶を楽しんでいると、隊長らしい人が来て、

「ご協力感謝します。申し分ないのですが、民間の方には報奨金が出ないので・・・」

舞愛はギルドのカードを見せて、

「こちらにお願いしますね!」

刑が確定したら報奨金が振込まれるように手続きして隊長を見送った。


 部屋に戻ると、犯罪者たちは撤去済み、一件落着したので魔力減衰のネックレスを選ぶ。鑑定偽装はまだ試していないので、実際に減衰する方を選択。最新の物でFランクになるか、その前に使っていた3連でDランクが良いか、また面倒が起きても対応出来る様に、もう少し弱くBランクになるチョーカーにするか迷っていると、ノックの音。

「この度は大変ご迷惑お掛け致しました、ささやかではございますが、お昼にお召し上がり下さい。」

お弁当の差し入れだった。大きな包みに4人分、小さい方はバニラとチョコの分、有り難く頂戴して、

「あっ!駄目!」

ちょっと遅かった。


 ほんの少し前。

「細いのに凄い輝きよね!」

「3連が豪華ね!」

「コレ見たことないわ!」

チョーカーを付けた結花は意識朦朧で何とか立ってはいるが、2人はバタリと倒れてしまった。舞愛は美奈と澪のネックレスを外し、両手の人差し指を光らせパーフェクトヒール、意識が戻らないので念の為オーバーヒール。実年齢から1、2歳なので、目立った変化ではないが少し幼くなった所で魔力注入を終了した。

「・・・舞愛、こ、これ、外れ、ないの・・・」

「待ってて、すぐに外すわ!」

チョーカーを外してベッドに運び、オーバーヒール。魔力減衰効果で症状が違う様で、結花はほぼ回復。3連を付けた美奈は10分程で目覚め、澪は2時間近く経ってようやく目を覚ました。


「ゴメン、舞愛のアクセ勝手に付けて・・・」

「いや、舞愛も説明して無くって。コレね魔力減衰の効果があるの。魔法の実習とか魔力が強過ぎて、コントロールが難しいからコレで抑えてるの。」

フワフワ系の御令嬢達が、ネックレスや髪飾り等を貸し借りして楽しんでいるのを見ていたのに、こんな事故を予測出来なかった事を猛反省。取り敢えず復活、身体の不調も無さそうなので、出掛ける事にした。


 魔動車を走らせていると、

「ねえ舞愛、結花ね、なんだか、滅茶苦茶眠いの、ちょっと眠っても・・・」

助手席の結花が寝落ち。後部座席の2人は既に寝息を立てていた。

 旅疲れかと思ったが、翌日も似たような状態で、効果の高いネックレスをした澪が症状が重いので、オーバーヒールを試してみる。


 宿に着いて早速ヒール。重だるい表情は改善したようだが、そのまま眠ってしまった。3人の眠りの深さなら、1人で楽しむチャンスの筈だったが、舞愛はその事を思い浮かべる事無く朝を迎えてしまった。


 さて、往路の最終日。午後には水瓶領に入り、屋敷には遅くとも夕方には到着の予定。

 3人の様子はあきらかに改善。いつものお喋りが復活していた。

「美奈ね、小さい頃の事、ちょっと思い出したかも!」

「結花も!」「澪も!」

記憶を封じているのが呪術なら、オーバーヒールで解呪されたのだろう。まだ断片的なようだが、思い出して来ているようだった。


 屋敷に着くと、自動ドアの様に扉が開いて、領主の臣吾の妻、陽菜(ひな)が現れた。娘の友人として歓迎するが、陽菜は何か解らないが既視感を抱いてた。


「ねえ舞愛、『舞愛』って紹介していいの?」

美奈が小声で尋ねる。舞愛が頷くと、

「昴じゃなきゃ、記憶の事相談出来ないんじゃ?」

「後で気付いて貰うよ。(みつる)殿はお元気ですか?」

「満爺?ええ、あっ来ました。」

執事の満が早足で登場した。

「おかえりなさいませ、お嬢様。お友達もご一緒でしたか。」

「こんばんは、ミツさん(・・・・)先代伯爵ご自慢の酒蔵は今でも?」

「あ、え、ええ、今でもぎっしり詰まってますよ、ところで・・・」

「拝見させて貰えますか?」

舞愛は返事も待たずに、地下への階段に向かった。

「敦也殿もお元気なようですね?」

「ええ、お嬢様達のお帰りは、まだ先と思ってらっしゃいますから、たいそうお喜びになられるかと。」

「では、記念にこのワインなんてどうでしょうか?」

舞愛は、一番奥の棚から一本取り出した。

「もしや、昴殿?」

「ええ、今は魔法の副反応でこんな姿ですけど。」

「それは、それは!大旦那様はもう18年もお待ちですから!」


 ディナータイム、舞愛は少しおめかしして三姉妹とテーブルに着いた。大旦那、敦也は隠居して爵位を息子の臣吾に譲っているが、まだまだ若々しく、三姉妹の祖父には見えない。ご機嫌で料理とワインを勧める。

「大旦那様、今宵はこのワインでよろしいでしょうか?」

ラベルを見た敦也は、食卓を見渡し、

「まさか、お嬢さん?」

舞愛に視線を合わせる。

「ご無沙汰しております、訳あって、こんな姿ですけど。」

「そうか、そうか、昴殿が一緒であれば、2、3日早く着いたのも納得じゃ、知っていれば、臣吾も仕事なんぞ放って来たんだろうがなぁ。」

と、言いつつ昴を独占出来ることをほくそ笑んでいた。

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