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罠に嵌まった騎士隊長

「そうだ、南の港町の往復、護衛を頼もうかな、指名依頼で。」

「いいんですか?少しでもお役に立てると思うと嬉しいです!」

 早速ギルドに向かった。


「依頼を装って、女性冒険者を襲う事件が後をたたないんです。貴方を疑ってる訳ではありませんが、規則で駄目なんです。」

受付嬢は申し訳無い表情で規則の解説をしてくれた。女性のソロ冒険者が男性だけの依頼者の護衛には付けないとの事。

 どうしても必要ではないので、昴は1人で旅立つ事にして、ギルドを出た。乗り合い馬車の停留所まで裕子が送ると、通りは衛兵が群がり、鎖に繋がれた魔物だろうか?何かを檻に入れようとしていた。

 時折聞こえてくる悲鳴は、人間の女性の様にも思えた。

「そんな辱めを受けるのなら、いっそ、この場で死なせてくれ!」

「面倒掛けやがって!これでどうだ!」

側にいた男が呪文を唱えると、暴れていた女性は、一瞬ギャっと叫び崩れ落ちた。一件落着で、檻の扉を開けると、ホッとした衛兵達の隙をついて、拘束具のまま、人垣を抜け出した。重りが付いた鎖は、彼女の体力に勝り、丁度昴の眼の前で力尽きた。

 走って来た衛兵に、

「何か、重罪人なんですか?」

「あ、いえ、アレは奴隷なんですが、娼館に売られるのを拒んで暴れているのです。奴隷の首輪でも失神しない人は初めて見ました。」

昴は、娼館の関係者らしい男に、

「お店に連れて行っても、あのままだと思いますよ。」

「ああ、色々問題があってな、捨て値で出ていたから買って見たんだが、あんな様子でな。奴隷商も返品受付けてくれないんだ、兄ちゃん買うか?小金貨5枚でいいぞ。」

「随分儲けるんですね、実は、この人が売れたすぐ後に、僕もあの奴隷商に行ったんです。3枚って言ってましたよ店主さん。」

小金貨3枚で商談成立、鎖を外させ、女性をおぶった。


 騒ぎを見てフリーズしていた裕子に、

「もしかすると、強力なパーティーメンバーになるかもしれないよ!取り敢えず、キミの部屋に寝かせてあげて。」


 宿に着いて、改めて部屋を取った。シングルとツインをひと部屋ずつ。ツインの部屋におぶった女性を運び、ベットに寝かせ、衛兵達と戦った傷をヒールしてみたが、相変わらず、擦り傷が少し減った程度だった。


 奴隷の首輪での体罰は、時に死に至る危険な物。相当なダメージだろう、3時間程昏睡が続いた。

「あの、凄いヒール掛けてあげないんですか?」

「うーん、出来れば、目を覚まして、色々説明して、納得してから掛けたいんだ。偶々2回成功してるけど、また巧く出来るのか解らないのにさ、魔力注入する所が、問題だからね。」

「あたしの時もそうでしたけど、買った奴隷に気を使うなんて不思議な方ですね。」

「僕の住んでいた所では奴隷制度は大昔のモノだったからかな?あと、また、敬語になってるよ。」

「あ、すみま・・ゴメン、昴。」

「うん、少しずつ慣れてくれたら良いよ、で、この人さ、元騎士隊の中隊長の圭織(かおり)さんだと思うんだ。

「両手と引き換えに王都を護った英勇ですよね!でもなんで、奴隷なんかに?」

「その事ならボクが自分で話そう。」

苦しそうな声は、運び込んだ女性で、昴の推測通り、圭織だった。

「ちょっと待って、先に僕の話し聞いてくれないか?」

「ああ、ボクを買ってくれた御主人様なんだろう?ちゃんと言うことを聞くよ。」

 昴は自己紹介と、膨大な魔力でもかすり傷しか治せなかったこと、松風と、裕子のヒールは偶々かも知れないが成功した事を話した。

「あたしも同じ奴隷商にいたんですよ。火傷だらけだったから、気づかなかったでしょ?私、目がかたっぽがちょっと見えてただけだったから他の檻にどんな人が居たのかわかんないのよね!」

「もしや、子爵殿に売られてきたあの娘なのか!あんな酷い火傷を治せるのか?」

「それで、キミにも試したいんだけどさ、魔力の注入にね・・・」

「ああ、先程の会話、少し聞こえていたから想像はつく。気にすることは無い、コチラからお願いしたい。それから、ボクは圭織、貴女の名前聞いてもいいか?」

「あたしは、裕子。よろしくね!」

「早速お願いしたいんだが・・・」

「どうしたの、何処か痛む?って言うか、全身痛いよね?」

「ああ、それで、ぱんつを脱ぐ力も残っていないようだ、手伝って貰えるか?」

「うん、任せて!」

「じゃあ僕は廊下に居るから、準備が出来たら呼んでね。」

痛みを堪える唸り声が廊下にも漏れ聞こえ、少ししてドアが開いた。


 昴は、掛け布団を少し捲ってそこに腰掛けた、長い詠唱を唱え、金色に輝く人差し指を捲った布団に滑り込ませた。金色の輝きは布団を通しても眩しい位で、昴が気を失うまで輝き続けた。


 2時間程で昴が目覚めると、

「怪我だけじゃ無く、失った腕がこんなに戻っるんだ!」

「あ、魔力不足だったのかな、裕子、さっき買った回復剤貰えるか?」

「あ、うん、でも魔力枯渇だったんだよね、少し休んだ方良くない?」

「大丈夫、きっと次は巧くいく気がする!」

回復剤を煽って再チャレンジ、今度は指先までしっかり回復していた。

「良かった、ご飯行く前に治せて。居酒屋くらいしか無いけど、いいだろ?」

昨夜の居酒屋に向かった。

 少し飲んで会話が弾んで来ると、

「あの、ボクの首輪どうしたんです?」

「え?捨てたけど?まさか、記念に持っていたいとか言わないよね?」

「え?それじゃあ!」

「うん、奴隷から解放済みだよ。」

「でも、今のボクじゃ、何の見返りもありません、どうやってお礼すれば・・・」

「それなら、裕子から提案が有るみたいだよ!」


 裕子は、冒険者登録して、2人でパーティーを組むことを提案した。圭織が快諾し、結成の前祝いで乾杯した。

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