共倒れ
「そうね、バニラとチョコでどう?」
茶色い方に埋もれてモフモフを満喫しながら美貴。どちらも、コッチの世界ではお目にかからないが、
「可愛いね、何か意味があるの?」
裕子の問いに美貴が説明していると、すっかりアイスクリームの話しになり
「あいすくりいむ?ソレ食べてみたいな!」
圭織も乗り気、
「確か、アイスクリーマーのグルグル回るのって空気を混ぜてるんだよね?」
昴があまり得意じゃないスイーツの知識を絞り出すと、
「美貴、お料理はダメなのよね、でもアイスクリーマーなら作れるかも!帰ったらお兄ちゃん、手伝ってね!」
と、思い切り脱線したが、『バニラ』と『チョコ』に決定した。
「まぁ、狭いけどなんとか乗れるか。」
昴は御者台へ、5人と2頭で満員状態。
裕子は、バニラを撫でながら、
「お膝に乗る位だと便利なのにね、抱っこも出来るし・・・」
そう言っていると、バニラはヒョイと飛び上がり、トイプードル位になって膝に着地した。
「チョコも出来る?」
同じ様に飛び上がり、美貴の膝に。首輪を買いに街に出たい所だが、戦の後始末。
ギルドの協力者達は、テイマー部隊のテントで戦利品の回収。ただ、魔物達が暴れ捲ったので、ほぼ壊滅状態。軍資金の金庫が見つかったが、参加者で割ると小金貨1枚半相当。ギルドからの報酬もあるが、少しがっかりの額だったので、昴は差額を負担し、2枚ずつ配って黒金湖を引き揚げた。
黒金湖は大熊領。国境侵入して来た紫峰義軍のテイマー達は、既に確保。ガセネタを流させたスパイに、終戦調停をさせる。国境付近の紫峰義に取っては希少な農業地帯を賠償に取る。主力のテイマー部隊を失った紫峰義は、条件を飲むしか無い。無力化した紫峰義は、従来の大熊家に任せ、プレアデスは西の辺境伯領に向かった。
水路と王都・西都の街道で、西部に入り途中北上して西の辺境伯、射手領に向かう。ボンボン仕様の馬車は、しっかりと盗賊達を引き寄せ、予定通りに返り討ち。勿論、お約束の質問で西部の裏事情を把握した。
北の時の様には都合よく潜入出来ないので、西都の使者として、国境警備の確認、羅峰寺の動向調査と言う名目で、西都の部隊と合流して辺境伯の屋敷を訪れる。
射手家に居る獅子ケ谷のスパイには、クーデターの計画が漏れ、東国出身の役人を逮捕しに西都が動くと言う情報を流した。
羅峰寺には、紫峰義との戦を終え、羅峰寺が紫峰義と同盟で戦意があると見なし、開戦する意向で軍を動かしているように伝えた。
「ここは、紫峰義を叩いて、王国に戦意が無いことを示すしかありません、テイマー部隊が壊滅した今、我々が負ける事はありません。」
情報操作で、元々は冷戦状態だった紫峰義・羅峰寺間に油を注いだ。
ひとみの筋書き通り、羅峰寺の軍勢は紫峰義に攻め入り、主力を失った紫峰義を蹴散らした。紫峰義軍は敗走、城に立て籠もる。羅峰寺軍は、テイマー部隊を再生させない様に、魔物の飼育施設を育成中の魔物ごと焼き払う、ドンドン攻めて城を包囲した。
この時点で無条件降伏になりそうな圧勝だったが、
「城を落として、息の根を止めるぞ!」
主力の騎龍隊が城の石垣を越えた。
「ウワっ!どうしたんだ!」
乗っている飛竜が言う事を聞かない。急上昇したかと思うと、騎士を振り落とした。地面に叩きつけられた騎士達は絶命、飛竜は城を取り囲む羅峰寺軍を蹂躙、あっという間にほぼ全滅した。後続隊が飛竜を撃ち落とすが、刺し違える形で、ほぼ全滅。
「儂等もまだ捨てたもんじゃないな!」
軍の幹部で、テイマー出身の老人達が、飛竜をティムして起死回生。結局、双方壊滅状態で射手軍が介入して終戦を迎えた。
紫峰義・羅峰寺間戦争の間、射手家の屋敷ではスパイ狩り。反逆罪で取り潰されても可怪しくない状態だが、大熊家同様、獅子ケ谷の工作員を処分、幹部クラスは極刑、その他の男性はスキルを切り取って東国に強制送還、女性はパーフェクトヒールで痣を消してから自白魔法、やはりスキルを切り取ってそのまま雇うか強制送還。
被害無しで、開戦を目論む2国を潰し、寝返りしそうだった両辺境伯の計画を阻止、全国に散らばる、獅子ケ谷の工作員も明らかになった。そろそろミッションクリア?と思ったが、王都からの使者。
ボロボロの2国を再生、王国へ編入させる為、御目付役として現地に残って欲しいとの事。まぁ断れないし、リベンジマッチが起きないとも限らないので、取り敢えず軌道に乗るまでのサポートを引き受けた。
真っ先に取り組むのは、戦地になった紫峰義で盗賊の掃討。ボンボン仕様の馬車で襲われて返り討ちした時に、情報はしっかりと把握出来ているので、元締めの貴族から叩き、不正に貯め込んだ財産を復興資金に充てる。
それから盗賊と繋がる役人、盗賊の親玉から、順に下っ端へ。役人と親玉は、多少の蓄えがあったが、復興への貢献には微微たるもの、効果は治安の維持に留まった。仮設住宅等を、北都から応援に来ている人達に指示。
一段落つくと、瓦礫の中から魔物の装備を扱う店を発掘、職人さんを探し、バニラとチョコの首輪を作って貰った。
仔犬のフォルムで大型犬サイズでいるのがデフォルトらしく、蠱毒の呪で戦っていた時の大型バス並からトイプーサイズまで自由に変化出来るので、それに合わせてサイズが変わる首輪にしてもらった。
「普段は軍に納めるばっかりでな、いくらかなぁ?2つなら小銀貨5つかな?」
普通の犬用でも王国ならそれ位はするだろう。サイズ変化が大きいので相当な額を覚悟していた昴は拍子抜け。良く良く話を聞いた所、軍に買い叩かれていたのと、物価の違いらしく、大銀貨で払いお釣りは受け取らなかった。




