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御令嬢

 その頃中庭では、パーティーでの所作を確認、多少の不安はあるが、作戦に支障を来すことは無さそうと、作戦会議に移行。男性陣と同じ様な内容を確かめ合った。

「あたしは、ご令嬢よりもメイドで参加した方が動き易いし、サマになると思うんですけど。」

「普通に護衛は付かないのでしょうか?ボクはこんな髪だし、ご令嬢って感じじゃないから。」

それを聞いて王姉は、

「実は、そういった設定も考えていたのですが、役に不公平感があると思って今のパターンが良いと判断したのですが。」

「架空のご令嬢を何人も設定するのは無理がありませんか?」

真理の言葉がトドメとなり、

「実は・・・」

王姉は少し間を置いて、メイドに何かを告げると、

「最初のプランをお話しましょう。」

そう言っているうちに、小さなプリンセスが登場した。ドレスを摘まんで可愛らしく会釈、

「王弟宮、長女の莉乃と申します。」

「妾の娘です、10歳ですが、背が高いので少し歳上に見えるでしょ?美貴さんが娘に化け、その周りを皆様で護ると言う設定で考えていたのですが・・・」

「ソレ、最高です!」

一番嫌がると思っていた美貴が、先頭で飛び付くと、

「ボクの護衛と裕子のメイドは確定でいいね?真理は家庭教師だな、ひとみは、えっと・・・」

「私は、御学友役が良いわ、一番無理なさそうよ。」

 御学友とは、王族や高位の貴族の子女を教育する際、手本となる兄姉程度の少し歳上の子供を一緒に習わせる習慣で、少し幼く見えるひとみがかなり幼く見える美貴のお姉さんで丁度良く見える。

「キャストが決まった所で、詳細な設定を考えましょ!」

「美貴さん、ひとみさん、真理さんは、これから歴史の先生がお見えですから、莉乃と一緒にお勉強して下さい。裕子さん、圭織さんは実際のメイドと護衛に会って頂けますか?」

王姉がサクッと指示、それぞれの持ち場(?)に向かうと、

「臣吾さん、昴さんをお願いしますね。」

執事のオジサマに指示した。


 子供とは言え、王族に成りすます美貴と、そのお手本になる淑女を演じるひとみはハードルが上がったが、他は適正配置となり、成りすましに気を使わない分、護衛の任務に注力出来る。


 2泊3日でトレーニングを終えた。辺境伯でのお披露目会は2日後に出発する。

「お披露目会から帰る迄、継続で警護をお願いしてもいい?」

「ハイ、では明後日ですね?出発の日には、早朝伺います。」

「あら?継続でお願いしたじゃない、出発迄はのんびりして、貴族の暮らしに慣れて下さい。ギルドには、こちらから完了の報告と、次の依頼をしておきますね。」


 出発迄、護衛の依頼を請けた体で城暮らし。客人として迎えるつもりでいたようだが、折角なので、お披露目会の設定でリハーサル。特に莉乃嬢に成りすます美貴は日替わりで訪れる、先生方にも10歳の侯爵令嬢と紹介して一緒に授業を受け、よりホンモノっぽくなるよう準備に余念は無かった。裕子、圭織、真理は昔取った杵柄って感じで問題無し、ひとみは苦労しつつも、いつもの様にしっかり準備を整えた。

 執事見習いと思っていた昴だが、オジサマ執事の臣吾に連れられて来たのは、医務室の様な所だった。

 優しいおばあちゃんって感じの治癒師が待っていて、

「うーん、成る程、こりゃ酷いねぇ。」

城勤めと言うことは、かなりの凄腕治癒師だろう。昴が超強力な魔力なのに、かすり傷しか治せない理由を看破していた。イメージで解説すると、通常魔法は一度袋の様なモノに溜めて、使い道を指定して放出するが、昴の袋がメッシュになっていて、全く溜まらないので殆ど効果が無く、パーフェクトヒール、オーバーヒールの場合、子宮がその袋の役割を果たし、本来の魔力に見合った効果が得られたらしい。

「治す方法は有りますか?」

「ちょっとムリじゃ無いかな?私が若い頃のチカラが有ればねぇ。」

「それなら、オーバーヒールで若返るのは如何でしょう?」

「え?そ、そうね、治療の為には仕方が無い事?と言うことにしましょう!」

治癒師のおばあちゃんは、薬棚から回復剤を在庫全部の6本出して机に置くと、長いスカートを捲り上げ、その中を下ろし診察台に寝そべった。

「20代半ば辺りが一番強かったね、27の時ムリして、魔力が落ちちゃったのよ。」

かなりのオーバーヒールが必要と思われるので、その為の回復剤だろう。昴は早速人差し指を光らせた。

 魔力枯渇を感じ、回復剤を飲んで引き続きヒール。4本目で昴の主観で20代に見える様になった。

「ありがとう、最盛期の魔力が漲った感覚が甦ったわ。」

瞼が下垂して、細いタレ目になっていたが、少しツリ気味の大きな目になり、弛んだ頬で四角だった、輪郭もシュッとした小顔に、ボリュームが淋しい白に近いグレーヘアも、しっかりした毛量の艷やかな黒髪になっていた。

「では、交代しましょう。」

昴は指示に従い、シャツを脱いで、診察台に寝そべる。

「少しお待ち下さいね、集中したいので、ちょっと・・・」

ゴソゴソ落ち着かない様子、

「いっそ、脱いじゃいましょう。」

変化は顔だけでは無く、体型も変わっている様子で、ヒールのあと戻したぱんつは、ゴムの役目を果たさず、上もアンダーがグッと縮んだので、勝手にホックが外れてしまったそうだ。一度部屋を出て、数分で戻ると、自分の左手の甲をナイフで切って、その血で昴の胸に何かの記号を描く。手の傷にフッと息を吹きかけると跡形も無く治り、

「では、リラックスして深呼吸してください。」

胸に手を翳して呪文を唱えると、血の記号が金色に光り、昴は意識を失った。

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